第20話 一面的では分からない
「よし、準備完了!」
そう言って紺色のスカートをヒラヒラとさせていた
そして何事も無かったかのように
「
「お、おはよ」
莉斗もいつも通り制服に着替え、カバンを肩にかけて玄関で応対。背後で
「へぇ、お兄ちゃんって彼女いたんだ」
「そうそう、莉斗君の彼女でーす♪」
「嘘言わないでよ……」
「……あっそ」
興味無さげに冷たく呟いた彼女は、「じゃ、行ってきます」と2人の横を通って出ていく。
「あら、おはよう」
「ミクお姉ちゃん、おはよ!」
ちょうど迎えに来たミクにだけ満面の笑みを見せる様に、莉斗と彩音はそろってため息をついた。
思春期な妹は兄だけでなく、その友達にもあまりいい印象を抱いてくれなかったらしい。
「美月ちゃん、昔から変わらず可愛いわね」
「それはミクにだけだよ……」
「私なんて初対面であれだよ?」
「……?」
状況が分からず首を傾げているミクを連れ、朝からテンションの低い2人は学校へと向かうのであった。
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その日の昼休みは彩音もミクも用事があったようで、莉斗は一人で昼食を済ませてから図書室へと行ってみることにした。
彼は月に一度か二度ほど、この場所に足を運ぶことがある。それは本を借りるためでも、静かな場所を求めてのことでもない。
「……あっ」
こちらに気が付いてにっこりと微笑んでくれる彼女、図書委員の
夕美は仕事をサボる他の委員の代わりに、昼休みは貸し出し手続きをしている。前に莉斗が聞いたところ、週4でここにいるんだとか。
カウンターに座っていなければならないため、よほどの本好きでなければ3週間ほどで来なくなるらしい。
「今日は返却ですか? 貸し出しですか?」
「話を聞かせて欲しい」
「そうだと思いました♪」
夕美はにっこりと微笑むと、手元の本をパタリと閉じてからカウンターの入口を開けて手招きをした。
莉斗は彼女に会いに来たのではあるものの、目的は彼女自身ではない。
夕美は本の内容を説明するのがすごく上手いため、時々無性にその語りを聞きたくなるのだ。
「図書室に来る人なんてほとんど居ませんからね。莉斗さんが来てくれて助かります」
「今日はどんな話を聞かせてくれるの?」
「しっかり用意しておきましたよ。今日はこちらの本です!」
そう言って分厚い本を差し出す彼女の声に、莉斗は予鈴がなるまで耳を貸し続けるのであった。
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