第6話 奇跡的な出会い

「……ここかな?」


 翌日、送られてきた地図を頼りに、莉斗りと彩音あやねの家までやってきた。

 女の子の家なんて初めて来るし、目的が目的なだけにドキドキも2倍だ。


 ピンポーン♪


 インターホンを鳴らして少し待つ。『はーい!』と言う返事からさらに一分ほど待って、ようやく玄関の扉が開かれた。


「いらっしゃい!」

「う、うん」

「ほら、上がって?」

「お邪魔します……」


 促されるままに中へ入ると、ぎこちない動きで靴を脱いでおそるおそる家へ上がる。

 正直に言えば、莉斗は女の子どころか友達の家にすら行くのは久しぶりだった。


「そんな固くならなくていいよ?」

「わ、分かってるけど……」

「ふふ、すぐに解れるからいっか♪」


 彩音は耳元でそう囁くと、彼の手を取って二階にある自室へと向かう。

 しかし、階段を上り終えたところで目の前に女性が立ちはだかった。


「お姉ちゃん、出てこないでって言ったよね?」

「いいじゃんいいじゃん! 妹の彼氏を視察するのも、お姉ちゃんの仕事っしょ?」

「だから彼氏じゃないってば!」


 にんまりと笑いながら「照れちゃって〜♪」と彩音の頬をつっつくお姉さん。

 身長は155cmくらいと小柄で、正直姉と言われなければ妹に見えてしまうが、ピンク色に染められたボブヘアーにはかなりインパクトがある。

 そして何より、下を履いているのか分からないほどダボダボなTシャツ姿が、莉斗の目を釘付けにした。


「ちょ、そんなに見ないで〜♪ これでも見られると恥ずかしいんだから」

「す、すみません……」

「そんな怯えなくていいじゃん? 取って食ったりしないかんね」


 そう言いながら莉斗に詰め寄り、顎をグイッとやってくるお姉さん。

 彼女は舌なめずりをすると、「まあ、別の意味で食べちゃうかもしれないけど♪」と意味深に目を細めた。


「ちょ、お姉ちゃん! 私の友達に手出さないで!」

「ふふふ、大丈夫大丈夫♪ この子はアヤちゃんのお気に入りみたいだから、手出したりしないよ〜」

「お気に入りって言わないでよ……」


 彩音は「ごめんね、お姉ちゃん変人だからさ」と謝ってくれるが、ようやく混乱していた脳みそを正常に活動させ始めた莉斗は、お姉さんをじっと見つめたまま何も言わない。


「莉斗君?」

「ねえ、彩音さん」

「ん?」

「お姉さんってもしかして―――――――――」


 そう言いながら彼は目の前のロリっ子大学生を指差すと、声を震わせながら彩音に聞いた。


「もしかして、ASMR動画を上げてる『しののん』じゃない……?」


 莉斗にその名を呼ばれたお姉さんは「あちゃ〜! バレちったか〜♪」とわざとらしく後ろ頭をかくと、チロっと舌を出しながら目元でピースサインを作る。


「そう! 私こそが、言葉責めと耳舐めの代名詞と言われるほどの天才……しののんだよ〜♪」


 初めて見る本物の配信者に、「さ、サインください!」と嬉しそうに頼む莉斗を見て、彩音は壁にもたれ掛かりながらため息をつくのであった。


「こうなるから出てこないでって言ったのに……」

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