第82話<ゴブリンVS兵士>
「たかがゴブリン一匹に、何時まで掛かってんだよ……」
観ていた一人の兵士が呆れた表情を浮かべ、馬から降り剣を抜く。
「……スミマセン、すぐ倒しますんで……」
ゴブリンと戦っていた三人の兵士は、声を揃え頭を下げる。
明らかに上官で実力者であろう男は、軽く手で払い。
「もういいよ、お前達下がってろ」
そう言って、男は軽やかにゴブリンに近付いていき剣を振る。
向かい合うゴブリンは、男が実力者だと理解し警戒を解いてはいない。
だが其の一瞬で、ゴブリンの持っていた剣は宙を舞い。
ゴブリン自体も、切り伏せられていたのだった。
「お前達、行くぞ」
自分の勝利を疑う様子も無く、男は振り返りもしない。
「…… ま゛、待て゛……」
倒れたまま、引き留めるゴブリンの声が空しく響く。
異変が起きたのは、其の時だった。
ゴブリンの頭に、聞いた事の無い機械的な声が響く。
魔王の配下として能力取得条件が整いました。
<粘糸><微毒>を取得しました。
異変に気付かない男が馬に乗ろうとした時、背後から悲鳴が聞こえる。
其の悲鳴は、さっき迄ゴブリンと戦っていた三人の兵士。
男が振り返ると三人の兵士は<粘糸>で縛られ、身動きが出来なくなっていて。
<微毒>の効果で、呻き声を上げている。
「オイ、アイツ達を馬に乗せろ」
男は冷静に指示を出し、ゴブリンを睨みつけ。
再び、ゴブリンと男は向かい合う。
其の間に運ばれ馬に乗せられた三人は、苦しそうに呻き声を上げ続けている。
「う゛……、ぐ……」
「これは毒だな……」
少しずつ青ざめていく三人の顔色が、症状の悪化を物語っていた。
余りにも予想外な出来事に、一人の兵士が驚きの声を漏らす。
「馬鹿な……、コイツ本当にゴブリンなのか…… 」
そんな中。
向かい合うゴブリンと男は、互いに警戒しあい。
簡単には、先手を打てなくなっている。
そのままの状態で1分が経とうとした頃、男が口を開く。
「お前、もしかして魔王の配下なのか? 」
ゴブリンは視線を逸らさず、小さく頷き返す。
「そうか……」
納得した様に、男は一言だけ呟き馬に乗る。
「お前達帰るぞ」
そう言って男が手を振ると、馬に乗って待っていた兵士達は走り去っていく。
こうして難局をクリアしたゴブリンは、安心した様子で一息吐き。
斬られた胸元を<粘糸>で縛り、応急的に止血する。
今にも倒れそうな、ゴブリンの気苦労も知らず。
未だに倒木で隠されたまま眠るガオンは、イビキを響かし続けるのだった。
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