第5話<Lv2>

魔物を食べると能力値が上がるという事なら、生き残ればチャンスは在るかもしれない。




其れにしても何でも煮込めば良いってもんじゃないだろ。


腹の底から沸き上がるオーク臭のせいで、込み上げる吐き気が止まらない。


其れを無理矢理押さえ込み、何とかステータスを確認する。




HP20・MP5。からHP21・MP6に変わっている。


確かに上がってはいたが、1って少なすぎだろ。




元が少ないMPは上がった感が有るが。


其れも、この異世界の平均値が解らないのだから安心は出来ない。


先ずは、現時点で解った事を整理しておく必要が有ると思えた。




体力面でのステータスは当分の間、期待出来ない。


より強い魔物を食べれば上がる能力値も高い可能性は有るが、選べる訳ではないので様子見だ。




問題はユニークスキル。


スキルにはランクが有ったので、期待出来るのはランクアップで何か変わるか。


例えば擬態のLvが上がり、監守の姿に擬態が出来るなら脱獄も可能だろう。


其れには解らない自分のスキルについて試し、より知る必要が有った。




取り敢えずは他の魔物に触れて、どうなるか検証だ。


襲われる可能性も考えると、ゴブリンから試すのが一番安全だろう。




そんな事を考えているとターゲットだった、ゴブリンが近付いて来て話し掛けてきた。




「危なかったね」




心配してくれていたのか、なんて良い奴だ。


どうやら魔物だからという偏見が、自分には在ったらしい。




「死ぬかと思ったけど助かっちゃったよ」




こんな良い奴を利用しようとしてるのは心苦しいが、そうも言ってはいられない。




「いつまで生きてられるか解らないけどヨロシク」




そう言って俺は右手を差し出し、握手を求める。


ゴブリンに触れた瞬間、再び頭に機械的な声が響く。




<ゴブリン擬態の条件が整いました>




大した特長も無いので不可能かと思ったが、問題無いらしい。


ゴブリンも擬態出来るようになった事から、やはり触れた相手を擬態出来るという事は解った。




何よりもグッドニュースなのは、擬態先を複数持てるというのが解った事だ。


何個迄がストック可能なのかは解らないが、一つではないなら応用出来るかもしれない。




取り敢えずは擬態のストックを増やす為に、他の魔物に触れるのを挑戦だ。


次のターゲットに選んだのはライオンの獣人。




かなり怖いが、さっき助けてくれた位だから襲ってはこないだろう。




「さっきは危ない所をありがとうございました」




そう言って俺は右手を差し出し、握手を求める。


これなら触れるのも不自然ではないだろう。




「ガハハハハ、構わん弱者よ」




特に警戒するでもなく獣人は握手に応じ、無事に擬態の条件は手に入れられた。


Lvの低い今は使いようも無い能力だが、上がれば何か変わるかもしれないのなら使って鍛えていくしかない。




ここらで何回か使えるかと、Lvが上がるか試してみるとしよう。


ステータスから、擬態Lv1オーク声真似の使用を選択。


身体が自然に、グフッグフッとオークの鼻息を出す。




声真似ってコレかよ。


自分の能力とはいえ弱ぇ-、思わず吹き出しそうになるのを抑える。




鼻息に気付いた同室の囚人達は冷たい視線を送るが、何事も無かったかの様に無視してステータスを確認する。


MPが1減っていた。




中々コストパフォーマンスが良いな。じゃねーよ。


当然だ、こんなスキルでMP減る事自体が異常だよ。


取り敢えずMP使いきって、Lv上がるか確認するしかない。




其の前に一応骸骨兵の背中をこっそり触れ、条件取得。




グフッグフッと鼻息擬態を連発して、MPが残り1になったタイミングで頭に機械的な声が響く。




<擬態Lv2動作真似を取得しました>




キタ-Lv2。ん?動作真似って。怪しい、もう怪しさしか感じないが其れでも試してみるしかない。




<擬態Lv2骸骨兵動作真似>を選択すると同時に、俺の顎が骸骨兵と同じようにカタカタと動く。




だろうね。もう解っていたよ。


そうしてMPは0になり、俺のLvに対する期待も0になった。


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