プレゼント(恋愛)

 今日はわたしの誕生日だ。

 カレがプレゼントを持ってお祝いに来てくれることになってる。

 といってもいつもとそんなに変わらないはずなんだけどね。

 だってプレゼントって山盛りからあげセットなんだもん。

 この辺じゃちょっと有名な食道のテイクアウトのメニューでわたしの超大好物だけど、普段は一人暮らしだからそんなにたくさん買わない、ってか周りの目を気にしちゃって買えないのよね。

 前のデートの時にそんな話をした。

 きっかけはなんだったっけ。自分じゃ買わないもの、とか、人からそんなのもらわないよねーなものとか、そんな話だったと思う。

 で、一回でいいから三人前ぐらいたべてみたい、って言ったのよ。

 そうしたら昨日のメッセージでプレゼントは「前のデートで話題になってたものだよ」って教えてもらったんだ!

 食べたらなくなっちゃうし、実用的でないけれど、そんなの関係ない。

 わたしが一番ほしいものをくれるカレって最高!

 思わずテンション高い返事しちゃったよ。

 あ、チャイム鳴った。

 からあげっ、からあげっ。

 超ダッシュで玄関に走ってってドアを開けた。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 今日は彼女の誕生日だ。

 プレゼントには、大きなバラの花束。もちろん色は赤。愛してるの花言葉で有名だよね。

 普段はもっと実用的なものをあげているけれど、今年は二十歳の誕生日だし、ちょっといつもと違った感じのものをあげたいって思ったんだ。

 形が残るものの方がいいかな? とも思ったけど、例えば指輪なんかはもうちょっと先に、もしも結婚を考えるようになるまで付き合ってたらその時の方がいいんじゃないかって思い直した。

 ちょうど前のデートの時に、「両手いっぱいの花束なんてもらう機会ないよねー」なんて話もしてたからタイムリーだし。

 実は、昨日メッセージのやり取りをした時にプレゼントの話題になったから、ちょっとだけヒントをあげたんだ。

 前のデートで話題になってたものだよ、って。

 そうしたら彼女、少ししてから「めっちゃくちゃ楽しみ!」「そういうのって自分じゃ買わないし!」ってハイテンションな返事をくれた。

 通じたみたいだとほっとした。

 さぁ、彼女の家に着いたぞ。

 ベルを鳴らすと飛び出てきたっていわんばかりの勢いでドアが開いて期待をありありと現した顔の彼女が出てきた。

「誕生日おめでとう!」

 僕は後ろに隠し持っていたバラの花束を差し出した。

 ……あれ? すごい顔で固まった。

「からあげ……」

 小さくつぶやかれた彼女の声は、とても悲しそうだった。



(了)



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お題:からあげ……


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両手一杯の花束

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