第2話 えん罪クラス裁判

教室の一番後ろの窓側の席

空を眺めながらボーっとしているのが橘少年だ


『楽しいことね~かなぁ~』



ボキッ‼️

『痛てぇー‼️😭』

教室の入口から聞こえてきた悲鳴に、全員の視線が集まった👀


1人のツッパリ少年が手を押さえてしゃがみこんでいる

『大げさだろ⁉️』


大げさではない、手の骨は折れているのだから💦

なぜこんなことになったのか⁉️

事故であろう…


事故ではない

橘は退屈しのぎに隣の教室に顔を出していた

『何だよクラスに友達居ねぇ~のかよ⁉️』と冷やかされた橘は

『ちょっと根性試ししよーぜ』

と言い出した


『な、何するんだよ💦』

『大丈夫だよ、心配するな』


教室のスライド式のドア

片一方にはストッパーが付いている

入口の縁に手を置き、ストッパーの付いているドアをおもいっきり閉めるから手を引っ込めるなよ!

と橘が説明する

『初めはゆっくり閉めてやるから』


すでに根性試しではなく、橘が主導権を握った、橘の遊びである。


ボーン

『おー、怖ぇ~』(笑)

キャッキャッ


くだらない遊びに盛り上がっている


『よーし、じゃあ次は少しおもいっきり行くぞ』

『マジで、怖ぇ~』


ドーン‼️

ボキッ‼️

『痛ぇ~‼️😭』


橘はストッパーの付いていない扉をおもいっきり閉めたのである。


誰かの骨を折る前科は小学5年生から、中学3年生まで毎年繰り返されるのである


元々友達作り等、得意ではない

勉強が得意なわけでもない

人と溶け込むのは野球の時位で、夜バイクで遊びに行く仲間は、転校生で学校にもあまり来ていない子

思春期だらけの中学校では、それぞれが自分の正義をアピールし、社会に出る準備をしている


私立学校でもない、普通の学校には生活レベルもさほど違わない子供達が通っているだろうが、その中にも様々な家庭、様々な教育、家庭環境がある。


良い大学に行って、良い会社に就職して

それこそが正義と教える家庭

手に職を付けて、無難に仕事をしなさいと教える家庭

公務員になりなさいと教える家庭

家業を継ぎなさいと教育する家庭

とにかく人に迷惑掛けることだけは止めなさいと言う家庭


橘の家は実家の家業はあるが、継ぎなさいとは言われなかった

勉強もしなさいとは言われなかった

ただ、1度始めた事を簡単に諦めるなとだけ教わったらしい。


毎度学校や、怪我をさせた相手の親に謝りに行くのは、橘の母親である

その度に『うちの子とは遊ばせないで下さい』と言われるが、母親は智也を叱らなかった。

『相手を傷付けたのなら、その理由があるのだろう⁉️自分が傷付いて、相手を傷付けたのなら仕方ない。自分が一方的に傷付けたのなら、それは貴方に必ず戻ってくる。人生はチャラだ』

そう教わった。


ある日の休み時間

教室で1人の生徒が、制服のブレザーが無くなったと騒いでいた

我関せずでいた橘に、意外な言葉が掛けられた

『橘くんじゃない⁉️いつも彼の事いじめてるから』

意外な言葉だった

橘はいじめている自覚もなければ、身に覚えの無いことに容疑を掛けられたからだ


民主制とは怖いものだ

クラスの誰かが発した言葉が拡散し、クラスの殆どが橘がやったに違いないと言い出した。

普段橘に偉そうにされてるうっぷんだろうか?

皆で攻めれば怖くないと思ったのだろうか?

ここぞとばかりに皆が橘を攻め始めた。


担任である女性の先生がクラスに入ってきて、事情を聞き橘に発した言葉は

『橘くん、早く隠した物を出しなさい』

だった。


やった記憶が無いものをどう謝るのか?

普段の行いのせいだとしても、少年の心は傷付いた。

唯一の救いは、3名だけの革命家だ

この空気の中で勇気を出した一言は、周りを黙らした

『橘は悪いこともするけど、そんな卑怯な事はしない‼️』

『そうだ、橘くんはしてない‼️』

『私もしてないと思います』

仲の良い男の子2人と、女の子1人

3/40の声だった


橘は涙を堪えるのに必死だった。

民主主義では到底勝てない、少数派ではあるが、橘に取って救われた言葉であった。


その後、その無くなったブレザーは中庭に忘れて来た事がわかり、事なきを得たが

あの3名の勇気ある言葉が無ければ、橘はヤクザにでもなっていたかも知れない。

と言うのは大げさな話ではない。

人生とはそんなものだ。

人に救われる、人に裏切られるなんてそんなものだ。

特に思春期の彼、彼女らに取ったら死活問題だ。


それだけ、純粋でピアであるんだろう✨

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