名も無き男の人生
TEN
第1話 強さこそが正義
消防車のサイレンが、深夜の住宅街に鳴り響く
住宅街にある少人数制の塾に、消防車が集まってきた。
塾は煙幕に覆われていた。
中から塾の講師が現れ、消防隊員に事情を説明している。
講師『火災ではないと思うのですが、授業をしていたら外が煙幕で覆われて💦』
消防隊員『今調べましたが、これ花火ですね』
講師『花火…?』
消防隊員『心当たりありますか?』
講師『あいつらだ』
『なぁ、今日塾の気分じゃなくねぇ?』
『わかる、何か楽しいことねぇーなか?』
『花火で戦争ごっこしようぜ』
『面白そうじゃん♪』
『おい!戦争じゃ~』
『止めろ~、アブねぇ~』
辺りは薄暗くなった夕方
5人の中学1年生が、住宅街の中にある公園で
キャーキャーと騒ぎながら遊んでいる
ロケット花火や、手持ち連射の花火を相手に向けて発射させ、敵味方に別れて戦っている
少年達はさながら映画ランボーにでもなった積もりなのだろう
『よし、塾奪還ミッションだ』
授業をサボっている塾の外で、煙幕弾を外に設置してある電源ボックスに入れた
『この間に、訳のわからねぇ授業を受けさせられている仲間を救うんだ~♪』
みるみる内に塾が煙で覆われていく
『橘、あれヤバくねぇ?』
『ミッションは失敗だ、逃げろ💨』
消防車のサイレンが鳴り響く
塾に生徒達が呼ばれている
『お前ら、塾をサボるまではまだ100歩譲ってわかる、でも、塾を燃やそうとするか?💢』
『燃やそうとしたわけではない…』
『じゃあ、何だ💢言ってみろ💢』
『だ、奪還作戦…的な…💦』
『お前ら…💢』
放火は重罪である
少年院に入れられてもおかしくないが
彼らは全員塾をクビになると言うことで間逃れた。
主犯である橘は小学5年生の時にも、公園に放置された、窃盗バイクを乗り回していたのを近所のおばさんが目撃し、学校でこっぴどく怒られていた。
橘は不良ではない
次男坊で甘ったれ、家では泣き虫で学校には馴染めないどちらかと言えばいじめられっ子と言うのが、小学生低学年の橘智也(たちばなともや)のイメージだろうか
その橘が成長と共に変わり始めたのは、小学3年生の夏である
ゲームを買って貰いたい橘少年は、お父さんにテレビゲームが欲しいとお願いをすると、父親は『良いぞ』と簡単にOKをした。
橘少年はその時、『人生とは楽なものだ、赤ん坊の時は泣けば大人が機嫌を取ってくれる、小学生になっても、お願いすれば買って貰える♪』と一瞬でも思った自分を恥じた💦
父親『智也が1500mを30分以内に泳いだら買ってやるよ😁』
父親の笑みに恐怖を感じた💦
それでも智也は断る選択肢を与えられなかった
直ぐに実行する機会を与えられ、智也は1500mを29分12秒で泳ぎきった
小学3年生の智也は1500mを続けて泳いだことも、ましてや30分以内で泳ぐ事も始めての経験であった。
泳ぎきった智也に喜びは無かった。
両腕が自分の力では動かせない程の疲労感と、どんなに辛くてもギブアップをしない意地は、いじめられっ子にもあったのである。
それからの橘は、水泳ではオリンピックに出れると期待され、クラスでも自然と力自慢になり、同級生が中学生と揉めると橘が出ていって中学生を制圧していた。
中学生に上がり、あれだけ期待されている水泳を悩むことなく簡単に止めて、野球部に入った。
小さい頃から、人見知りで幼稚園にも馴染めなく兄にくっついていた橘少年は、水泳は個人の勝負、だけど少年野球をやることにより、友達ができ、みんなと遊ぶ【仲間】が出来た嬉しさに溢れていた。
橘の実家は自動車整備工で、子供の頃のおもちゃは車やバス、バイクだ🏍️
小学生から普通に原チャリに乗ってる橘少年は当たり前のように、中学に上がったらバイクにも乗り、学校に行き、部活をし、夜はバイクで遊んでいる
学校には思春期の団体さんが沢山いるが、それをどこの先輩、どこの親よりも力でねじ伏せる
ツッパリくんもトイレに連れていかれ、永遠に泣くまでビンタをされる
【力こそ全て】狭い世界の中で橘少年はそう信じていた。
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