第9話属性付与&装備……
アネットのお母さんを待っている間、アキトはアネットのために何か食べられそうな果物を探してきたり、セツナに魔石を貢ぐために奇襲作戦で魔獣を仕留めたりもしていた。
セツナはというと……アネットを誰にも傷つけさせないよう気合いを入れて護衛している。そしていつでも寄り添い、守っていた。
それは前世で見た、犬が新生児を守っている姿とよく似ていた。
だからアキトは安心して外に行くことが出来た。倒し方は以前と同じ。素の力は非常に弱いのであらかじめセツナに魔法をもらっておいて、奇襲をかけて魔物を倒していく。
得た魔石はセツナに貢ぎ、セツナはどんどん強くなっていく。それはつまり、セツナの力を使う事が出来るアキトも強くなっていくことであった。
そんな日々を過ごしていく内にアネットのお母さんを待ち続けて大体1ヶ月が経過した。異世界での生活に慣れてきて、アネットと遊んだり、洞穴の改良をしたりなど意外にも充実した日々が過ぎていった。
しかしアネットのお母さんが帰ってくる兆しは全く見えない。度々外で探索もしているのだが、痕跡も見当たらない。
光明が全く差さないことに3人は不安を感じていた。
そしてさらに数ヶ月の時が流れていく。アネットのお母さんはまだ帰ってきていないが、結構頻繁に外に出ることも多くなり守護霊使役スキルも結構上がっていた。
ステータスだが
名前: 久道明人
称号: 異世界人 セツナの友人 アネットの守護者
種族: 人間
Aスキル: 〈言語理解〉
Cスキル: 〈守護霊使役lv6:左腕lv3 右腕lv3〉
称号は新たにアネットの守護者が増えていた。
(なんだか妹ができた様な感覚)
次に守護霊使役スキルだが、結果から言うとめちゃめちゃ強くなっていた。
守護霊使役lv6 左腕lv3(能力:魔力吸収 魔力共有 装備&属性付与)
右腕lv3(能力:魔力解放 魔力強化 装備&属性付与)
まず、左腕の2つ目の能力の魔力共有。これはいろいろ実験した結果、守護霊の左腕で触れた対象と魔力を共有することが出来る能力であった。
そしてアキトは魔力共有した対象が持つ、魔力に関わる全ての能力を守護霊を介して使うことが出来る。
例えばセツナに守護霊の左腕で触れて魔力共有を使う。するとセツナの持つ全ての魔力に関するスキルの行使が可能になった。
セツナが以前使用した風の刃の攻撃も吸収させてストックさせる必要はなく、セツナに守護霊の左腕で触れてさえいれば、いつでも使うことが出来る。魔力吸収は1つのものしか吸収して置くことが出来なかったが、魔力共有は触れていればいくつでも使う事が出来る。
魔力共有は右腕の魔力解放を用いないと使うことはできないが、その時に右腕の魔力強化も同時に使うことが出来る。
魔力を持ち、魔力に関するスキルを持っている仲間がいれば、そのスキルを使用できる。
さらにこのスキルの強いところは魔力共有で繋がった相手の魔力を使用して、スキルを使用することが出来るということである。
つまりアキトは自身の魔力の消費を考える必要がない。魔力共有を発動するだけで魔力関係なく強力なスキルの行使が可能になった。
さらにレベルの上がった両腕の射程範囲は約15メートル程。これにより離れたところからでも十分に魔法を使う事ができる。
新たに獲得した能力はそれだけではない。
両腕ともlv3で解放された新たな能力。装備&属性付与。
まず装備について。これは文字通り守護霊を装備できる能力であった。薄々気付いてはいたが、アキトの守護霊は生身の腕というよりも鎧の腕に近かった。
そしておそらく両腕の大きさが普通の人間の腕程の大きさになったため、この能力が解放されたんだと推測できる。
能力を発動させると召喚した守護霊は消え、自分の腕に装備している形で再度出現する。そして守護霊を装備することによって得られる効果は、主に身体強化であった。
爆発的な攻撃力の向上に、普通では耐えられない攻撃をも耐えられる守備力の向上。特筆すべきは前者の攻撃力に関してである。今まで魔物に対してセツナの力を借りないと手も足も出なかった。しかし守護霊を装備した状態であれば、ただの物理攻撃が魔物に対しての有効な攻撃手段となり得る。
この能力が解放された時、試験的に近くの2メートルほどの岩を殴ってみたら粉々に粉砕する事ができた。だから守護霊を装備すれば、ただのパンチでもとんでもない威力になっているのだろう。
もう1つ装備と同時に取得した能力:属性付与は、左腕で吸収した魔力の属性を守護霊の両腕に付与することが出来るというものであった。
例えば、セツナに雷の魔法をもらって吸収させ、属性を付与すれば雷をまとった守護霊の腕で攻撃することが出来る。この場合相手に直接守護霊が触れれば相手を麻痺させる事が出来るといった具合だ。
ただし装備&属性付与の能力を発動する場合注意する点がある。主に装備の能力を発動するときだが、今までも感じていた身体の力が抜けていく感覚、それが継続して続く。
守護霊を装備して属性を付与すると約1分間程度で気力に限界がくる。限界を迎えると守護霊は勝手に解除され、アキトは気絶してしまう。
全力は1分程しか続かないがスキルをうまく使えば、1人でも結構戦えるようになってきた。
順調過ぎるアキトの成長とは裏腹に、アネットのお母さんは帰ってこない。
そんなある日、アネットがしきりに身体中が熱いと訴えてきた。氷で冷やしても回復魔法をかけてみても何をしても症状は改善しない。
日を追うごとに症状は悪化していき痛みや吐き気も訴えるようになった。
2人は憔悴していってしまうアネットにどうしようもなく狼狽えてしまう。何をしたら良いのか、何をしたらアネットは良くなってくれるのか。必死に考え、直ぐに行動に移す。
必死に果物や魔獣を集めてきて食べさせようとしても何も受け付けてくれない。
(アネットの苦しみを少しでも和らげようとしていたのに……これじゃあ僕が来た意味がないじゃないか……)
自分に鞭打ち試行錯誤をくり返すが状況は悪くなっていくばかりである。
そしてそんな状況に追い打ちをかけるように、無数の蟻の魔物が洞穴の入り口を取り囲むように現れた。
ここ数ヶ月で周辺の魔物については詳しくなっていたため、蟻の魔物がこの洞穴に来た理由には察しがついた。
その魔物は大きく凶悪な鋏を備えた顎を持ち、身体は黒い光沢を輝かせている。地球の蟻に酷似している姿だが、その大きさは比較するまでもない。女王蟻は体長2メートル弱。対して働き蟻は体長3メートル程もある。
蟻と似ている部分はその姿だけではなく群れの構成の仕方も似ている。群れは1匹の女王蟻に対して無数の働き蟻で構成されている。
そしてこの魔物の最も厄介な習性は、女王蟻に対して脅威になる相手がいると、どんな相手でも敵と認識し排除するという点だ。
どれだけ仲間がやられようとも、どれだけ自分が傷つこうとも決して攻撃をやめることはない。それは単体では決して勝てるはずのない無謀な相手にも立ち向かっていき特攻を仕掛けていく。
つまるところ女王蟻命なのだ。
そしてアキトには女王蟻に敵対視される理由に心当たりがあった。魔力共有の能力を確認するために行った実験の際、女王蟻を含む3匹の群れに攻撃を仕掛けられ、それを返り討ちにしていたのだ。
もちろんその時は習性を知らなかったし、完全に殺したと思っていたため特に気にも留めていなかった。
しかしこの状況を見るに、女王蟻は生きていたようだ。
傷を受けたものの何とか一命を取り留め、そしてその傷を癒やしながら無数の働き蟻を使って捜査網を作りだし、アキト達を探していた。
そして今、大量に仲間を引き連れて押しかけてきたのだろう。
アキトは慌てて外に飛び出し決して洞穴の中に入れないように戦う覚悟を決める。中にはアネットがいる。連れて逃げる事が出来ない現状、戦う以外の選択肢は既に残っていなかった。
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