第5話このスキル強いかも……
「そういえばセツナは魔法とかスキルって使えるの?」
「キュイ」
自信ありげに返事をしたセツナは一度鳴くと、目の前に直径50cm程の水の塊が出現した。
「セツナ魔法使えたんだ……なら攻撃とかもできちゃう?」
「キュゥゥ」
攻撃は無理なようだ。しかし守護霊の実験に使える。
「セツナこれ吸収してもいい?」
「キュー?」
不思議そうに答えるセツナを尻目に水の塊に守護霊の左手を近づけていく。1m程に近づいたところで能力:魔力吸収を発動することが出来た。
少しだけ気力が抜ける感覚を覚えるが、特に気にならない程度である。
続けて、魔法解放も試してみる。
能力:魔力解放
すると再度、水の塊が現れた。
魔力を吸収して、相手の魔法をそのまま使えるだけでも結構使える。そしてさらにもう1つわかったことがあった。
(この水の塊操れる。しかも結構器用に。これは使いかたを考えてやれば……ふ、ふふふふ、この最弱のスキルでも以外と魔物にも勝てるのでは?)
アキトは不透明ながらも攻撃手段を手に入れた。
「セツナ、他にも何かできる?」
すると使える使える。火、水、土、風、光、雷、結構何でも使えた。どれも攻撃手段に用いることはできないようだが、どの属性の魔法でも扱うことはできるらしい。
「それじゃあセツナ、僕たちは弱すぎてここから動くの恐いけど、ここで生きていかないといけない。そのためには魔物やこの森について知る必要がある。だからこの森を探索しにいこう!」
「キュイ」
威勢のいい鳴き声を上げながらセツナはぴょんと飛び出た。
「よしそれじゃあこれから魔物や森の知識を食料調達も含めて、この辺りを集めていこう。大丈夫?」
「キュイー」
「探索は地道に2人でやっていくとして、魔物に出会った時の対策は、基本的に戦いながら逃げるハイド&ヒット&アウェイでやっていこうと思う。最初はちょっと試してみたいことがあるから変わるかもしれないけど……まぁ何かあったら逃げの一択だからね」
2人は木から降りて早速森の中を散策し始めた。何の情報もないから適当に方角を決める。神頼みの棒倒しで。
森の中だというのに獣の気配や鳴き声が聞こえないのは少し不気味に感じる。
しかしいちいち気にしていては、死んで行くだけである。
「そういえばセツナって飛べるの?」
不意に疑問に思ったアキト。空を飛べるのなら、何もこんな気味の悪い森の中を歩く必要もないはずだ。
するとセツナはもこもこの毛玉の中から、大きな羽を出して羽ばたいて見せた。
しかし羽ばたいただけで一ミリたりとも浮かんでいない。
「飛べないのね……」
「キュイィ」
申し訳なさそうにうなだれる毛玉はちょっと可愛い。
「まぁなんとかなる……よね? とっておきの秘策も考えているから。セツナ、もう一回水出してくれる? 今度は多めに。」
出してもらった水は、左手に吸収させておく。
2人は完全に運頼りで行き先を決めたが、幸運なことに食べられそうな実を発見した。見た目はりんごに似ているが味は全く違う。シャキシャキとした歯ごたえはなく桃のように柔らかくとろけるような食感をしている。さらに味は食べたことがない未知なる味であったが、間違いなく美味しかった。
2人はそれを採れるだけ採り口いっぱいに頬張りながら足を進めた。採れた実は毛玉の羽毛の中に埋め込んでおいた。
1時間ほど歩いただろうか少し休憩を取ろうとした時、どこからか獣の鳴き声が聞こえる。
その場で息を潜めて辺りを警戒する。すると50メートルほど先に一匹の狼と熊の魔物を見つけた。
2匹の魔物は普通に魔法を使いながら戦っている。狼は風を巧みに操りながら、熊は炎を操りながら。
2匹の魔物はお互いに気を取られて、アキト達に気付いていなかった。
(これは僕の秘策を試す絶好の機会)
浅ましくもそう考えたアキトは魔物に近づいていった。木に身を隠しながら近づき、そっと右手の能力を解放した。
アキトの少し横にお風呂1杯分ほどの水の塊が現れる。そして守護霊を介して、それの形を変えていく。
2つに分け、それぞれを細長く蛇のように整える。そして20メートル程にいる魔物達へと地面を這わせ、ばれることのように慎重に近づけていった。
魔物が咆哮を上げ、相手に襲いかかろうとしたその瞬間
2つの水の蛇は魔物の背後からずるりと姿を見せた。それは蛇の動きそのものであり、魔物の身体を俊敏に這って鼻、口から体内へと侵入していった。
「よし、今だ。爆散しろ!」
アキトは体内に入った水蛇を一瞬だけ、全力で縮小させる。そして直ぐにその圧力を解放した。
すると魔物達の体内で圧力から解放された水が爆散した。
ゴプッ
2匹の魔物は水を少し吐き、前へと倒れた。
様子を窺いながら近づいていくと、狼の魔物は口からだらりと舌を垂らし、血と水の混ざった液体を流して死んでいた。
一方で熊の魔物の方は体内から甚大な被害を受けながらも、なんとか生きていた。しかしもう虫の息であることは見てとれる。
「セツナ、こいつの上に思いっきり乗って、止めを刺してくれる?」
セツナは毛玉ではあるけれども3メートルほどもある生物。その重さは相当のものだろう。
思った通りセツナが上に乗ると苦しそうに呻き始めた。
しかし熊の魔物はさらに粘る。それどころか、なんと自身で回復魔法を使い始めたのだ。
しかしアキトは慌てない。左手を熊の方に掲げて、能力を発動させる。
もちろん発動さえた能力は魔力吸収
回復魔法は無慈悲にも守護霊の左腕に吸い込まれていく。最後の希望が潰えた魔物はそっと力尽きていった。
初めての戦闘で余裕の勝利をみせたアキトは確実に調子に乗っていた。
(チョロい、チョロすぎる。あっという間に2匹の魔物を倒してしまった……この僕が……)
魔物を倒したからステータスを見てみる。すると守護霊スキルが早々に上がっていた。
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