第3話  時計屋へ

「行けば、分かるわ。全てを思い出しても、気持ちをしっかりね」


 ハチドリは、去っていった。


 何の事だろう、全てを思い出すとは?


 確かに、僕には何の記憶も無い。何故、突然風船になって、フワフワしているのだろう?


 飾り羽根は、僕を引っ張って行く。


「何処に行くんだい?」


 声をかけても、羽根は答えてくれない。

 どうしようもないので、僕はひかれるまま、景色を、見ていた。


 全て青かった。抜ける様な青い空だ。

とても綺麗だ。


 とても綺麗なのだが、空以外見えない。


 下を向いても、海も見えない。


(どうなっているんだか)


「着きましたよ。時計屋です」


 何だ、喋れるんじゃないか。


 飾り羽根は、それ以上喋らなかった。


 突然現れた、大きな雲のかたまりに、何故かドアがあり、勝手に開いた。

 吸い込まれる様に、僕は時計屋に入っていった。


 雲の中の時計屋には、ニスで、ツヤツヤと光る手すりがあり、僕の他に赤い風船にも赤い風船が、繋がれていた。


 僕は、飾り羽根に引っ張られてその手すりに繋がれると、白い髭と髪のおじいさんが、現れた。


 木靴のおじいさんは、赤い帽子とコートを着せるとサンタクロースではないかと間違う風貌をしていた。


 ブラウンのチェックのシャツとダブダブのオーバーオールのズボン。丸い黒縁の眼鏡が、鼻に引っ掛かっていた。

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