Episode-Sub1-12 愛の右ストレート
我が家に風呂はない。
なぜなら、この故郷には少し歩いた場所に天然ものの温泉があるからだ。
名物と呼べる物がない村にとって、唯一の自慢できる場所だった。
それゆえに大切に管理されており、入浴する時間は決まっている。
だが、今はなぜか俺たちの貸し切りだった。
というか、道中すれ違う度にすっごいニヤニヤした顔でみんなが見てきた。
「絶対に母さんたちが好き放題言ってる……」
ペラペラとあることないこと喋る母さんの姿が容易に想像できる。
浮かれる気持ちもわかる。
あんなに可愛く、美しい女性たちがお嫁さん候補だなんて言って、こんな田舎に来たら誰だって自慢したくなるさ。
その結果、みんなが乗り気で俺たちをくっつけようとしている……!
「ふぅ……」
気持ちを落ち着けようと顔をお湯で洗う。
すると、ガラガラと背後から戸が開いた音がする。
「お、お待たせ〜」
「い、いえ、こちらこそ」
「……ルーガくん? こっち……見てくれないの?」
「す、すみません。少しだけ心の余裕をください」
リオン団長はきっとタオル一枚だ。
布一枚の向こう側にあの団長のおっぱいが隠されている。
美しき流線、手が沈み込む柔らかさ。全てが記憶に深く刻まれていた。
あっ、ダメだ。こうして思い出したら、愛棒が登山モードに……。
「ふぅ~……」
「ひゃいっ!?」
情けない声が出てしまい、すぐに口元を手で抑える。
気が付けば吐息が感じられるほどに団長が密着していた。
押し付けられた双乳のシルエットがはっきりとわかる。
体温が上昇しているのは温泉だけのせいじゃない。
「ルーガくん、緊張してる? すごいカチコチだよ……?」
覆いかぶさるようにもたれかかってきた団長が俺の身体を指でなぞっていく。
脚、太もも、腹、胸板を伝って首へ。
普段の団長からは考えられない淫乱な雰囲気。
……あれ? これってもしかして
「ねぇ、ルーガくん。どうしてこっち見てくれないの? 私の身体には興味ない?」
「ありまぁす!!」
「うんうん、正直な子は好きだよ。なら……また管理を……」
「しませぇん!!」
俺は確信した。
団長はとても恥ずかしがり屋で、清楚な人で、自分からエッチな行為を誘ってくる人ではない。
そもそも団長と俺が温泉にやってきた理由は汗を流すためだ。
汗を流す運動をするためじゃない。
こうなってしまっては団長を正気に戻せるのは俺だけ。
……すみません、団長。少しだけ無礼をお許しください!
「はぁっ!」
「きゃっ!?」
グッと腰を後方へと突き出し、団長を引きはがす。
その隙を逃さず、即座に振り返った俺は団長の身体に巻かれた一枚の布をはぎ取った。
そこには妖しく光る淫紋が……あれ?
「ない……?」
「――うん。だって、性欲よりもずっと強い感情で頭がいっぱいだから」
「えっ……わっ!?」
あっけにとられた俺は対応できず、あっさりと押し倒される。
ここに来てから団長と初めて正面から向き合った。
焦点は定まっていて、碧い瞳は俺を捉えて離さない。
紅葉した頬が色っぽく映った。
「私ね、いっぱい考えたんだよ?」
俺はおっぱいしか考えられません。
押し倒した反動でたゆんと揺れる団長のおっぱい。
煽っていいのは煽られる覚悟のあるものだけ。
男の前でそんなに乳を揺らしていいのは乳を揉まれる覚悟のある人だけですよ、リオン団長。
まぁ、俺は聖騎士だから手を出さないが。
「今だって手を出してこない。私、こんなに無防備なのに……ルーガくんのヘタレ」
「喧嘩なら買いますよ、団長」
「……そうだね。喧嘩しようよ、ルーガくん」
「え?」
予想外の返しに次ぐ言葉が出てこない。
「ルーガくんは女の子を誑しすぎ。マドカちゃんに始まって、ちょっと目を離したすきに聖女様にシスターさんとも仲良くなって」
「い、いや、それは……」
「それで今度は幼馴染の女の子? もう嫌になっちゃうよね。でも……みんな、ルーガくんを好きになったのは君が優しいからってわかるから……私は何も言えない」
そう告げる団長の表情に影が差す。
「だって、私も他の子の気持ちがわかるから。胸が締め付けられて痛いくらい、理解できるから」
だけど、それも一瞬で。
見惚れるくらいに彼女の瞳には強い想いが込められていた。
「こんなチャンスはもう二度とない。今日を逃したら私はもうきっと追いつけなくなる。逃げるのはもう嫌だから……ちゃんと聞いてね?」
いつもの柔和な笑みを浮かべて、団長は言葉を続ける。
「私はルーガくんが好き」
「ルーガ・アルディカが大好きです」
そんな愛の
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