第一章 守護騎士団・第六番団
Prologue 日記:聖騎士隊、入団前日~
〇月×日
明日から念願の聖騎士隊に所属することになった。
故郷の村を魔王軍の手から救ってくれたあの人たちのように、自分も誰かを守れる立派な聖騎士として活躍したいと思う。
いずれは剣聖として俺の太刀で魔王を切り伏せる。
この気持ちを忘れないためにも日記をつけることにした。
躓いたり、苦しい時でも原点に立ち返る。
尊敬する元冒険者の父のありがたい言葉だ。
深く刻まれた金言は養成学園時代も折れそうになった心を奮い立たせてくれた。
俺が配属されたのは聖騎士隊の内部組織の一つ、守護騎士団・第六番団の副団長。
いきなりの副団長は驚いたけど、それだけ期待されている証拠。
絶対に応えてみせる。
守護騎士団は主に王都を守る役目を持つ。
都市周辺の魔物を狩ったり、ときには遠征に繰り出したりもする。
俺にとっては願ってもいない好条件の職場だ。
ただ気がかりなのは第六番団についてあまりいい噂を聞かないこと。
曰く『新人がすぐにやめてしまう』『隊員による激しいいじめがある』など……。
どうやら人員がなかなか定着しないそうだ。
確かに新人の俺が副団長の席に就ける環境というのは相当にひどいのかもしれない。
だがしかし、俺は決して屈したりはしない。
どんな過酷な現場だったとしても耐え抜いてみせる。
長年の夢を叶えるために!
〇月▽日
ああ……なんというか、みんなが辞めていく理由が分かった気がする。
あんな環境にいたら男なら気が狂いそうになるわ。
俺もずっと気を張って仕方がなかった。
目線が下がらないように必死だった。
迎え入れてくれたのは弱冠20歳にして守護騎士団の団長になった実力者――リオン・マイリィ。
サラサラと流れる髪も吸い込まれそうになる瞳も特徴的な人だった。
……が、いちばんインパクトを与えられたのは間違いなく大きなおっぱいだと断言できる。
サイズが合うシャツがないのか北半球が丸見えで、大変風紀がよろしくない。
え? 明日からずっとあのリオン団長と同じ部屋で作業するの?
俺の精神は持つだろうか……。
でも、やるしかない。
こんなくだらない理由で聖騎士隊をやめるなんてありえない。
どれだけ周りが女性だらけだとしても生き抜くぞ……!
〇月%日
素振りでバルンバルン胸が揺れよる。
四方八方、どこ見ても俺は罪に問われる気がする。
どこにも居場所がないよ……。四面楚歌ってこんな気分なんだなぁ。
そんな俺を気遣ってか、ベテラン団員のカルラさんが鍛錬に誘ってくれた。
すごくありがたい。
カルラさんは口調も男っぽいし、性格も男勝りなので揺れる胸以外は本当にありがたい。
彼女も例に漏れず巨乳です……。強い人はみんな巨乳になる法則でもあるのだろうか。
だけど一晩中、剣を打ち合って少しは距離が縮まったように思える。
冗談も言い合える仲になれたし、これからもっともっと頑張ろう。
#月!日
剣聖に指名されるには清らかな心が必要とされる。
いついかなる時も弱きを助け、正義に奉仕する存在だからだ。
だが、今の俺は煩悩の海に溺れている。
そもそも故郷にさえ女の子と呼べる存在が幼馴染しかいなかったのに環境が180度変わってしまった。
慣れるのにも時間がかかる。
団員たちも気を許してくれているのか話しかけてくるようになったのは嬉しいけど。
問題は執務室でのリオン団長と二人きりの時間だ。
一時間が何十倍にも長く感じる。
リオン団長は胸元が大きく開けた服装を好む。
俺が男だと認識していないんじゃないか。
なんか資料のぞき込むときも普通に肩触れあってたりするもんな。
都会育ちの人間って全員こんな感じなのか?
田舎者の俺にはまだ厳しすぎる……。
それとふとした瞬間の吐息とかエッチだからやめてください。
あとマッサージとか俺に頼まないでください。
他の雑務ならなんでもしますから!
#月?日
第六番団にやってきて、一か月が経った。
男子団員としては初の記録だそうだ。
おかげで俺は男色家という噂が流れている。
やめろ。
こっちは毎日必死に精神をすり切らして耐えているだけで、普通に女の子が好きだ。
許可さえもらえるなら団長に抱き着きたい。
あの人は根からの善人で普段から防御が緩い。
俺がどれだけ目線をそらすのに苦労しているのかわかっているのだろうか。
歯を食いしばりすぎて奥歯がすり減ってる気がする。
仕方ないのは理解しているけど、剣を背負う度にパイスラッシュするの本当にやめてほしい。
カルラさんも距離が近すぎる。
信頼してくれるのは素直に嬉しい。でも、ちょっとボディタッチが激しいよ。
いきなり背中に飛びついたり、腕に抱き着かないで。
心臓にもアソコにも悪いから……。
だけど、他の団員も含めてみんないい人ばかりだ。
俺が耐えれば第六番団は平和に一日を過ごせる。
だから、今日も俺はオナ禁の日々を過ごす。
なぜかって? ははっ。
守護騎士団はそれぞれの団が割り当てられた寮で過ごすと義務付けられているからさ。
つまり、俺は第六番団のみんなと同じ屋根の下で暮らさなければならない。
耐久度で言えば愛剣よりも我が相棒の方が堅い自信がある。
#月$日
俺にも後輩ができた!
名前はマドカ・ルシャール。
相変わらず女の子だが、それでもかまわない。
なぜなら貧乳だから!
いや、けっして貧乳をけなしているわけではない。
俺にとっては最も望む存在と言っても過言ではないだろう。
副団長として彼女の教育係に任命されたが何も苦じゃない。
己の技を駆使して激しく剣をぶつけあう。
これだよ、これ!
俺が求めていた聖騎士隊の特訓は。毎度毎度、目を閉じて打ち合い稽古をしている状況が可笑しいんだ。
心の眼で見えるわけないだろ!
ずっと神経張り巡らせてるんだよ!
ポニーテールが良く似合う後輩、マドカとの時間は俺にとって数少ない癒し。
確かに不器用で技術もまだつたない。だが、熱意は誰にも負けていない。
彼女本人もやる気がすごいので、自然と指導の熱もこもってしまうというものだ。
これからもできる限りはマドカには優しく接するようにしよう。
願わくば彼女が団をやめませんように……。
#月&日
マドカが雛鳥みたくどこにでもついてくる。
微笑ましいと思っていたが大浴場にまで突撃してくるのは予想外だった。
そして、なんでリオン団長やカルラさんまでやってくるんですか!?
絶対にこれのせいで夢の中におっぱいが出てきた。
おっぱいで窒息死する俺。
悲鳴と共に目覚めたら股間あたりが生暖かい。
久々の一発は夢精とか……お前……嘘だろ……?
誰か助けてくれよ……。
Y月¥日
もう故郷に帰りたい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます