第4話 何が原因
校門から入ってきている血を流しながら動く人間。それから逃げて走る人々。そして恐怖からかその場に座り込んで、それに覆いかぶさられる人。
もがいて振り払おうとしているけれど、襲われた人の手足はほどなくして動かなくなった。
「あ、死んだ……」
小声でつぶやく……。
その景色を見ていた広志の脳内では、目に映る凄惨さとは裏腹に音楽が流れていた。好きなバンドのノリノリの曲が自然と頭の中で演奏される。曲に合わせて手は太ももでリズムを刻んでいた。
そんな気分でもないのに勝手に……。独特なリズムとオシャレな歌詞、聞きなれたボーカルの声がはっきりと聞こえた。
校門のところで血の海を作って倒れていた人が起き上がって、倒れていたにもかかわらず元気よく走り出す。それを見てからそんな場合じゃないと、広志は状況把握に努めた。
どうしてこんなことになったのか。何事もなく平和だった日が突如として変わり果ててしまったのか。まずはそれだ。何が原因だ……。
雰囲気を出すために脳内で声を発しながらそれについて考えた。そしてその答えは思いの外すぐに見つけられた。
見上げた街の上空、そこに未確認飛行物体があった。昨日まではそんなもの無かったのに、初めて見るような形の飛行物体が空にある。
遥か高い上空、飛行機よりも高い空で見下ろすように停滞している楕円形の飛行物体。
それを見た広志は仮の推測を立てた。推測と言うよりそうに違いない。これはきっと宇宙人による地球の侵略だ。
地球において人類が滅亡するなんてことはある訳がない。後にも先にも、そんなことは決して起こらない。
けど仮に……もし万が一あるとしたら、それは宇宙人による侵略だと広志は思っていた。長年妄想してきた世界崩壊パターンの最有力候補だ。
何しろ宇宙は謎めいている。広すぎて地球からの人間の目では決して全貌を把握できない。だから、人間以外の知的生命体がいても全くおかしくない。何の冗談でもなく地球が無事なまま人類の存続が脅かされるとすれば、それは宇宙人の仕業以外にない。広志は長年の崩壊世界妄想で、そう結論付けていた。
宇宙人のウイルスによるテロ攻撃。それがおそらく今回の事の発端だ。
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