第16話 さよならメモリーズ その7 (涼宮晴美編)

 生徒会室の扉を開けたと同時に俺の目に飛び込んで来た光景は昨日と同じ【魔女】のコスプレをした星奈さんの姿だった。



「帰ったわけじゃなかったんですね」

「えぇ」


 星奈さんは、俺にいつもの笑みを向ける。


「それは、趣味なんですか?」

「えぇ、昔から魔女っ子ものが好きだったのよ。○リーちゃんから○リキュアまで大体制覇したわ」

「良いですね、俺も○んぷちゃんが大好きでした」

「あら、そのシリーズなら、私は断然○女界の女王様が好きだったわ。それも、先々代の女王様が特にね」

「ハハハ、星奈さんらしいですね」

「ところで井上君、あなたは私と雑談をしにきたわけじゃないでしょ? 何か、私に聞きたいことがあるんじゃない? あーちなみに私の性感帯はーー」

「俺が何を、忘れているのか星奈さんは知っているんじゃないですか?」


 俺のその一言をきっかけに、星奈さんの表情がさっきまでのおふざけモードから一転真剣なものになる。


「………………」

「星奈さんと直、いや、他のみんなは知っているんじゃないですか?」

「井上君、その答えはあなた自身で気づくことよ。ただ、一つだけヒントをあげるなら……」


 そう言いながら、星奈さんが人差し指を口に当てる。


「あなたは、忘れているわけじゃない。意図的にあなた自身がその記憶を閉じ込めているのよ」

「それってどういうーー!!」

「ヒントはここまで、後は自分で考えなさい」

 

 そう言うと、俺の目の前から煙のように星奈さんは消えてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る