第15話 さよならメモリーズ その6 (涼宮晴美編)

「先輩!!」



「ッハッ!!!!!!」


 次に俺が目覚めた先、そこはいつもの生徒会室だった。


「ちょっと! 大丈夫なの!! 薫」


 起き上がった俺を心配そうな表情で、清美と晴美ちゃんが覗き込んでいた。


「まったく、本当に人騒がせなやつだな。お前は……」


 平然と自分の席に座り、ラノベを読んでいる自分はいつも通り……っとまぁ……そんな風に見せたかったのだろうな……。


 開いているラノベを見ればわかる、多分、さっき読み始めた、いや、俺が目覚めて慌てて開いたのだろうな。上下が逆だ。


 星奈さんは……いないか。


 ふと、壁にかかった時計を見ると、もう六時を回っていた。


 ずいぶん寝ていたようだ、星奈さんは多分、もう帰ったんだろう。


「さて、薫も、目覚めたし私たちも帰るか」


 上下真逆なラノベを机に置き、直が鞄を持つ。


「そうね」


 清美もそれに続き、鞄を持つ。


「先輩……?」

「あぁ、大丈夫だ」


 晴美ちゃんが自分と俺の鞄を持って立ち上がり、俺もゆっくりと立ち上がる。


「あっ、それから薫。今日の雑務は私と清美がやっておいた、だから、今日は大人しく帰れ」


 直の信じられない言葉に、一瞬驚き、固まるが、そんな俺の手を清美と晴美ちゃん引き、生徒会室を後にする。


 玄関まで来た直後、俺は、誰かの【視線】を感じた。


 ……多分、生徒会室の辺りから。


「先輩?」

「薫?」


 不思議そうに二人が俺を覗き込む。


「……悪い、ちょっと忘れ物したから、先に帰っててーー」

「待っている」

「えっ!?」

「すぐに戻って来い薫、私が待っているんだ、急いで済ませてこい」


 いつもの【女王様オーラ】全開で、靴を履き終えた直が自信満々に言い放つ。


 まったくこいつはーー。


「YES、your princess」


 そんな直に対し、某アニメばりの忠誠を誓いみんなに背を向ける。


「先輩!!」

「薫!!」

「大丈夫だ、カオル、なら、な」


 直のその言葉を背中で聞き、俺は生徒会室へと走った。

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