第14話 さよならメモリーズ その5 (涼宮晴美編)
「晴美ちゃん!!」
「!!!!!!!」
俺が晴美ちゃんに追いついたのは、生徒会室を出てすぐだった。晴美ちゃんは突然呼び止められ、少し怯えているように見えた。
「その……さっきはゴメン……」
「……」
「急に、怒鳴ったりして……」
「……もう、大丈夫です……晴美も、少し、落ち着いてきたので……」
晴美ちゃんが頬を染めて、恥ずかしそうに言う。
「その、ゴメンね。最近、頭痛が酷くてあんまり寝てなくて……」
「頭痛、ですか……?」
俺の言葉を聞き、晴美ちゃんの表情が曇る。
「晴美ちゃん?」
「いえ、晴美は知りません! 何も……」
間違いない。晴美ちゃんは何かを隠している。
「晴美ちゃん、何か知ってるなら教えて欲しい……話してくれないかな?」
「!!! ……先輩は、本当に、覚えていないんですか?」
俺の背筋に突如として冷たい何かが走り、またあの強烈な頭痛が襲う。
何なんだ? この、痛みは……いつもより、激しくて、立っていられない……。
俺は何かを忘れている?
そしてそれは、この【痛み】にも関係している?
いや、違う! 俺は、忘れたふりをしているだけなんじゃないのか?
クソッ!! どうして、思い出せない!! だが、間違いない俺は【何かを忘れている】何だ? 何を、何を、忘れてーー。
「先輩!!」
そこからの記憶はない。ただ、廊下のタイルの冷たさと心配そうに駆け寄ってきた晴美ちゃんの姿だけが朧げに頭に残っている。
そういえば、前にもこれに似た経験をしたことがあるような気がする。倒れた俺を、女の子が、目を覚ますまで【介抱】してくれた。
待て、それはいつだ? いつのことだ?
いつ、俺はその【女の子に会って】いつ【介抱】された?
もしかして【夢】だったのか? いや、違う【現実】だ。それなら、その出来事が、もし【現実】だとしたら、いつだ?
いつ、俺は……。
……俺は、直と星奈さん、あの二人とは子供の時から一緒にいた……?
待て! じゃあ、清美と晴美ちゃんは……?
……高校から? 違う!! もっと前に俺はーー。
頭の中に次々と俺の知らない……いや、蓋をしていた記憶がなだれ込んでくる。
そうだ、俺はこんなこと、初めてじゃない、何度も何度も繰り返している。
その度に、俺はーー。
これが始まり、これが合図。
待たせたな、ここからが今回のスタート地点か。
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