第50話敵に塩を送っちゃったかな

「ん〜!飲んだ飲んだぁ〜…!」


俺はフラフラと家に向かって帰っていた。

しかも今日はただ酒だったし、人のお金で飲む酒は最高だね!


そして家の鍵を開け中に入ると雫はまだ帰っていないのか電気は点いてはいなかった。


「ありゃ…雫は居ないのか」


俺は水を飲む為にキッチンに向かい、冷蔵庫を開けた。


「水、水…ん?なんだこれ?」


俺は冷蔵庫の中に鍋が入っているのを見つけた。そして蓋を開け中身を確認すると…


「これは…肉じゃが?」


まさか雫が作ったのか?


「…美味そうだな。ビールもストックがあったしもう少し飲もうかな〜」


そう思い振り返ると…


「お兄ぃ、おかえり」


いつの間にか帰っていた雫がそこにいた。


「うわぁっ!って雫か?た、ただいま…」


「うん。あ、それ食べるの?」


と、雫は俺が持っていた鍋を指さした。


「あぁ。美味しそうだったからな。そしてこれをつまみに俺は飲むのだ」


「ふ〜ん…じゃ、温めてあげるから座って待ってて」


「お!ありがとう雫。じゃ、お言葉に甘えて」


俺は雫に鍋を私その代わりビールを持ち椅子に座った。


そして待つこと5分程…雫が肉じゃがを持ってきてくれた。


「はい、美味しく出来たからいっぱい食べてね?」


「おうよ。じゃ、いただきます」


そう言い俺は1口食べた。


「美味ぁ…この少し甘めの味付けが良いよなぁ…そして、ごくごく…ぷはぁ。お酒にも合う!」


「えへへ…頑張って練習しましたから」


「そうか…それで、どうだった?女子会は」


「う〜ん…不完全燃焼気味かな」


「なんだそれ?」


「まぁ、なんと言いますか…混沌と化したというか、私のやる気が空回りしたと言いますか…」


「ふ〜ん…よく分かんないな〜」


そう言いながら肉じゃがを食べ進めていると…


「ねぇ…お兄ぃ」


「ん?」


「お兄ぃは…好きな人とか居るの?」


「ん〜…居ないな〜。急にどうしたんだ?」


「別に。少し気になってさ」


「そうか」


「うん。もしさ、例えばだけど…水瀬さんがお兄ぃの事好きって言ったら…どうする?」


「はぁ?水瀬さんが?無い無い。こんな社畜男の事好きになるわけ無いって」


「でも…」


「それに…それにさ、よく分から無いんだ。好きって、感情がさ」


「お兄ぃ…」


「それに好きって感情は脳のバグだとか、好きの賞味期限は3年とか言われてるしな。ま、親には悪いが…子供の顔は見せてやれないかもな…ははっ」


別に卑屈になった訳では無い。

ただ、そう思うことで楽になるのだ。


俺の心に深く刺さった元カノとの出来事。

それが釣り針のようにかえしが付いていて中々抜けてくれない。

もし、もし…そんな俺が変われるなら…。


「‘Love looks not with the eyes, but with the mind, And therefore is winged Cupid painted blind’」


と、雫は急に英語で何かを喋った。


「…え?今なんて言った?」


「『愛は目で見るのではなく、心で見るんだ。だからこそ羽の生えたキューピットは盲目に描かれているんだ』かの有名なシェイクスピアの名言だよ」


「は、はぁ…でもどうしてそれを今言うんだ?」


「馬鹿なお兄ぃにお似合いの言葉だからだよ!」


「むぅ…バカとはなんぞバカとは」


「…馬鹿だよ。私もお兄ぃも」


「まぁ…否定はしないがな」


「ふふっ…だね。そして、いつかお兄ぃにもこの言葉の意味が分かる時が来ると思う。その時は逃げちゃダメなんだよ?」


「…ははっ!ま、その時が来ればな!ま、今は目の前の美味しい料理とお酒と楽しい楽しい妹様との会話を楽しむことにするさ」


「…シスコン乙」


「はっ!言ってろブラコン」


「…ふふっ」


「…ははっ!」


そんなこんなで俺は妹といろいな話をした。


そしてそんな俺たちを見守るように外には真ん丸なお月様が輝いていたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る