第5話ぜひお礼を!
あれから俺は土鍋に作ってくれたお粥を吸引力の変わらない胃袋で全て平らげてしまった。
「ご馳走様でした…」
「はい、お粗末さまでした」
俺がそう言うと彼女はニッコリ笑顔でそう答えてくれた。
「じゃあ、片してきますからちょっと待っててくださいね?」
水瀬さんはそう言い部屋から出ていった。
そして俺は独りごちる。
「流石にお返ししないとな…」
うん、流石にヤバいよな。
見ると部屋は綺麗になってるし。ってことはだ…。
掃除、買い出し、料理。更には倒れた俺を部屋まで運んでくれているのだ。
ここまでされて『はい、ありがとうございました』だけで済まして良いのだろうか…いや、良くない。
俺が許しても神は許してくれないだろう。むしろ俺自身が許さない。
そう思っていると水瀬さんが戻ってきた。
「お待たせしました。体調はどうですか?痛んだり、苦しかったり…熱っぽくはありませんか?」
「貴方は天使ですか?女神ですか…?」
「え…?えっと、人間です…よ?」
「はっ…!すみません!だ、大丈夫です!元気いっぱいです!」
俺は慌ててそう答える。
やべぇ…あまりに天使過ぎて変な事を聞いてしまった。
「ふふっ…うん。見た感じ大丈夫そうですね。それと、すいません。色々勝手に使っちゃいまして…」
と、水瀬さんは申し訳なさそうにそう答える。
「大丈夫ですよ。見た感じ掃除までしてくださった見たいで…逆に申し訳ないです」
「良いんですよ。お隣さん同士助け合わないと!」
と、彼女は明るくそう言ってくれた。
「ははっ…まぁ、今の所一方的助けられてるのは俺だけですけどね」
「ふふっ…気にしないでください。ただのお節介ですから」
「そう言って貰えると助かります。でも、流石にここまでして貰って何もお返しをしないとなると俺は極悪人です。何か、お返しをさせて下さい」
俺はそういった。
「でも、流石に悪いですよ。それに体だって…」
と、水瀬さんは断ろうとするが彼女には痴漢騒動や掃除、介護、ご飯。本当にお世話になっているのだ。
流石にヤバい。
「いや、本当にお返しをさせて下さい。このままじゃ申し訳なさでまた倒れてしまいそうです」
と、俺はそう答えた。
そしてそれを聞いた水瀬さんは…
「あっはは!もう、和泉さんったらそんな真面目な顔で変な事を言わないでくださいよ!ふふっ…分かりました。それでは1つお願いがあるのですが良いですか?」
と、彼女は笑いながらお願いをしてきた。
「えぇ!パンでも何でも買ってきますしなんなら今からでも何でもしますよ!」
と、俺は意気込んでみせた。
「ふふっ…ありがとうございます。ちなみに明日はお暇ですか?」
ふっ…神よ。このために明日を休みにしてくれたのですね。感謝します!
「はい!明日はちょうど仕事が休みなので1日中空いてますよ!」
と、俺が答えると水瀬さんはニッコリと笑い手をぽんと胸の前で合わせた。
「良かったです!実は引っ越して来たばかりで冷蔵庫とテレビはあるのですが…その他の物がまだ足りないのです。流石に私1人ではどうしようも無かったのでそのお手伝いをお願いしたいのです」
と、言ってきた。
「そういうことならお任せ下さい!こう見えも力はありますから」
と、俺は力こぶのポーズをしながら答えた。
「はい!頼りにしてますね?」
と、可愛らしく首を傾げる水瀬さん。
うん。可愛い…。
俺はそんな彼女を見てほっこりとしていると…
「あ、そうだ。明日は何が食べたいですか?」
と、水瀬さんは聞いてきた。
「え…?食べたいもの?」
「はい!流石にタダ働きをさせる訳には行きませんからね。報酬…と言っては何ですがお昼ご飯を私作りますよ?」
と、言ってきた。
ふむ…なんだったら外食でも良いと思っていたが。彼女の料理は下手なお店で食べるよりも美味しくしかも本人も作りたそうにしている。ここは甘えるべきだろうか…。
うん。甘えよう。美味しいご飯=正義。
これは世界の真理なのだ。
俺はそれを一瞬で考えて答える。
「そうですねぇ…それでしたらお肉系が食べたいです」
「お肉系…ですか。う〜ん…じゃあ唐揚げなんてどうですか?」
「唐揚げ…最高ですね」
「ふふっ…じゃあ明日のお昼は唐揚げにしましょうか。とっておきのおばあちゃん直伝レシピがありますので楽しみにしていて下さいね?」
「はい!凄く楽しみです!」
そういい俺と水瀬さんは笑い会うのであった。
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