第69話
「ベルー、そろそろ降参しなよー」
「したら…アンタどーするのよ?」
「あの子たちを駒として連れてくー」
「だったら、する訳ないでしょっっ!」
闇鎌の攻撃は地面を容易く斬り裂き、学校周辺の建物すらも紙のように裁断していく。
ミサの猛攻にひたすら耐えていたベルが、そのときカッと目を見開いた。
「
ベルはミサの上段からの振り下ろしを一歩踏み込んで聖杖で受け止めると、全身のバネで闇鎌を上方に弾き返した。
「乗るなっっ!」
それから流れるように、聖杖の下部先端でミサの足元の地面を小突く。すると、魔法とも言えないような魔力の爆発が発生した。
「わぷっっ」
ボワンと舞い上がった土煙が、ミサの視界を遮ることに成功する。
「今だっ!」
ベルは瞬時に後方に距離をとると、聖杖先端の青水晶をミサの方に向けた。直後に円形の、光る魔法陣が形成される。
「あまいよっ」
その瞬間、バフッと土煙を突き抜けたミサが、発動直前の魔法陣を真っ二つに斬り裂いた。パンと弾けた魔法陣は、光の粒子となって消滅していく。
「この…っ」
ベルは咄嗟に聖杖を魔力で強化すると、下から斜め上に振り抜いた。
「遅ーいっ」
ミサは無邪気な笑顔を浮かべると、クルリと回転しながらその攻撃を余裕で躱す。そしてそのまま遠心力を利用して、後ろ回し蹴りを打ち放った。
「がっ…っ」
側頭部を蹴り飛ばされたベルは、2、3度地面を弾みながら派手に吹き飛んでいく。それから強引に左手を地面に叩きつけて跳ね上がると、後方宙返りを繰り返して着地した。しかしその直後、頭を押さえながらヨロけるように膝をついてしまった。
「あはっ、もしかして、コレで終わりー?」
ミサは闇鎌を右肩にかつぎながら、ベルに向かって悠然と歩いていく。次の瞬間、ミサの全身が透明な光る球体に包まれた。
「ん?」
思わず立ち止まって困惑した表情を見せるが、それも一瞬のことであった。
「ムダな足掻きーっ」
ミサはかついでいた闇鎌を構え直すと、新島春香の結界術をスパンと下から上に斬り裂いてしまう。それから校舎の屋上へと、愉しげに興味深そうな笑顔を向けた。
その瞬間、光り輝く一本の矢が、ミサの眼前に迫っていた。
「わわっっ」
ミサは咄嗟にえび反りになって、光の矢をギリギリ寸前で躱す。その体勢は…どこか余裕すら感じるような、綺麗なブリッジになっていた。
「…魔力っ!?」
ピキンと脳裏に電気信号が走ったミサは、上体を瞬時に跳ね起こすと、鋭い視線を上空に向ける。
視線の先にはいつのまにか、ベルが浮遊状態で聖杖をミサに向けて構えていた。
青水晶の先端から、徐々に直径が大きくなる3重の魔法陣が形成されている。
「やらせないよっ!」
ミサは一瞬屈んで反動をつけると、まるでロケットのように跳躍した。そのスピードは、ベルの予測を遥かに上回っている。
(間に合わないっ!)
ベルは自身の敗北を予感した。
しかし次の瞬間、ベルの身体が急激に巨大化する。三階建ての校舎より遥かにデカい。
「へ?」
「は?」
ベルとミサが、揃えたように間抜けな顔をした。
そのとき巨大化した青水晶に比例して拡大した魔法陣から、凄まじい光の閃光が迸る。
正に「波動砲」と呼ぶに相応しい光景であった。
「しまっ…」
一瞬でミサが、閃光の中に飲み込まれる。
そのまま魔法の発動は10秒ほど続き、地面に何処までも深い穴を刻み付けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます