第49話
「それでは本題に戻りましょう」
ルーがパンと両手を叩いた。
「ケータお兄ちゃんは今ドコに?」
「たぶん
「ハルカさんは、普段はどのタイミングで忍び込んでるんですか?」
「うーん、お風呂のときかなー?」
「ちょっと待ちなさいっっ!」
真中聡子が再び声を張り上げた。
「アンタ…恵太くんの部屋に許可なく入って漁ってるの?」
「言葉が悪いなー、掃除よ掃除」
「掃除って…」
真中聡子が頭を押さえて溜め息をつく。
「こーいうトコは、身内の特権って羨ましいですよね、サトコさん?」
「私に同意を求めないでっ!」
真中聡子は顔を真っ赤にして叫んだ。
「ちょっとサトコ、声大きい」
新島春香に指摘をされて、真中聡子は焦ったように口元を押さえる。
「しかしお風呂ですか…困りましたね」
「ルーが
「私だって、ケータお兄ちゃんの部屋に入りたいんですっ!」
「だからダメだって!恵太くんに悪いし…」
真中聡子は二人の会話に待ったをかけた。
それを受けて、新島春香とルーが顔を見合わせてニヤリと笑う。
「それならちょーどいいです」
「聡子が時間を稼いできてよ」
「何でよっ、私だって興味あ……はっ!?」
新島春香とルーにジト目でジーっと見つめられ、真中聡子は口元を押さえて真っ赤になった。
「サトコさん、お主もワルよのー」
「う…」
真中聡子は言葉に詰まった。そして開き直る。
「えーそうよっ!私だって恵太くんの部屋に興味がありますっ!」
「何に興味があるって?」
そのとき部屋の扉がガチャリと開いて、新島恵太が姿を現した。
「恵太っ!?」
「恵太くんっ!?」
「ケータお兄ちゃん!?」
3人が一斉に焦った顔で振り向いた。
「ちょっと恵太、ノックぐらいしてよっっ!」
「何回もしたよ…」
新島恵太は「はー」と溜め息をついた。
「盛り上がってて聞こえてないみたいだったから、仕方ねーだろ?」
「け…恵太くん、まさか聞いてた?」
真中聡子の顔がみるみる蒼く変わっていく。
「ん…ああ、聡子の大きい声なんて珍しくて、ちょっと新鮮だった」
新島恵太は、少し頬を赤らめながら微笑んだ。
「それだけ…ですか?」
ルーが更に探りを入れる。
「どーいう意味だよ?何か好きな物の話でもしてたんだろ?」
「そ…そう、そーなのよっっ」
新島春香が冷や汗を撒き散らせながら、何度も相づちを打った。
「それで、恵太は何の用事?」
「ああ、母さんが夕飯の買い出しに行くから、リクエストがあるなら聞いてこいって」
「ケータお兄ちゃんは何がいいですか?」
「そうだなー…やっぱ『すき焼き』だな」
その答えに、ルーも満足そうに頷く。
「私も『すき焼き』がいいです」
「そーね、私もそれがいい」
「ちょっと、そんな贅沢、ホントにいいの?」
「どーだろ?ま、聞いてくるよ」
そう言って新島恵太は、トントンと階段を降りていった。
3人は「はー」と大きな息をついて、揃って後ろに倒れ込んだ。
「焦ったー」
「心臓が止まるかと思いました」
「私はたぶん、一瞬止まった…」
3人が寝そべったまま身動き出来ないでいると、1階から新島恵太の声が聞こえてきた。
「春香ー、許可は出たんだけど…買い出し手伝えって言われたから行ってくるー。お前らはどーするー?」
その瞬間、3人はガバッと飛び起きて、お互い顔を見合わせた。
それから新島春香は部屋を飛び出すと、階段から1階を覗き込む。
そこには新島恵太の姿があった。
「私たち、留守番しとくー」
「おー、分かった。じゃあ行ってくる」
「いってらっしゃーい」
新島春香は渾身の笑顔で手を振った。
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