第30話
「アタシー?アタシはミサ、
ミサは妖しい外見とは裏腹に、意外とチャーミングに笑った。それから持っている大鎌を、再びクルリと一回転させる。
するとミサの背後にあった結界が斬り裂かれ、中からシャドーパンサーが解放される。
「え…!?」
新島春香は絶句した。
オークジェネラルの攻撃にも、シャドーパンサーの攻撃にもひたすら耐えた結界が、いとも簡単に斬り裂かれたのだ。
無意識的に持っていた結界に対する安心感が、一瞬で崩れ去る。
新島春香は思わず後退りした。
「あー大丈夫ダイジョーブ。さっき、今日のところは終わりだって言ったでしょ?」
ミサは新島春香の気後れに気付くと、カラカラと愉しそーに笑う。
そしてその言葉を裏付けるように、シャドーパンサーがミサの背後で伏せるように座り込んだ。
ミサはシャドーパンサーの背中に横乗りで腰掛けると、右足を上に足を組んだ。
色々なトコロがキワどくて、コッチまで恥ずかしくなってくる。
「今日は終わりって、どーいうコトですか?」
ルーが白銀弓を構えたまま声を張り上げた。いつでも弦を引ける準備は出来ていた。
「だって、急いでるんでしょ?」
ミサは新島春香を見つめながらクスクスと笑う。
「
「……そこにいるのね?」
新島春香はミサの言葉にピンときた。何故だか分からないが、確信する。
「あそこのパンケーキ、超美味しーんだぁ。早く行かなきゃ食べ終わっちゃうよ」
それだけ言い残して、ミサを乗せたままシャドーパンサーがトプンと影の中に沈み込んだ。
気がつくと、辺りの景色に色が戻っていた。
~~~
「いらっしゃいませー」
新島春香とルーが店内に入ると、店員がすぐに駆けつけた。
「2名さまですか?」
「あ、友達が先に来てるんです」
新島春香はニッコリ笑うと、ズンズンと奥に入っていった。
ルーは焦ったように店員に頭を下げると、新島春香の後を追いかける。
「ハルカさん、店員さん困ってましたよ」
「…見つけたっ!」
ルーの言葉に耳も貸さずに、新島春香は目的の男女を発見した。そのまま真っ直ぐ突き進む。
そして、ひとつの席の横で立ち止まった。
~~~
新島恵太は自分たちの席の真横で立ち止まった人物に気付くと、何事かと顔を上げた。
そしてそのまま硬直する。
新島春香がそこにいた。
「は…春香、何でここに?」
「パンケーキ食べに来たの。ちょうど良かった、混んでるから相席いいよね?」
言いながら新島春香は、新島恵太の横に強引に座り込む。
後から現れたルーに気付いた真中聡子も、観念したかのように、自分の横のスペースを空けた。
「すみません、おじゃまします」
ルーはペコリとお辞儀すると、空いたスペースに腰掛けた。
二人の後をついてきていた店員が腰から携帯端末を取り出すと、ニッコリ笑って口を開いた。
「ご注文は前の方とご一緒で?」
「はい」
新島春香も笑って返す。
「お…おいっ」
「なに?」
一瞬反論しかけた新島恵太を、新島春香がギロリと睨む。
「い、いや…」
新島恵太は負けを悟った。おそらくは何を言っても聞いてはもらえない…
「それでは、ご注文をどーぞ」
新島春香はチラリと机の上を確認した。
スフレパンケーキのラージサイズにバニラソフトが乗っかっている。人気の商品だ。
どうやらそれを二人で取り分けていたようだ。
新島春香は「ちっ!」と舌打ちする。
「この同じのを2個と、私はホットコーヒー」
「私はアイスのカフェオレお願いします」
「同じ…というと、ラージサイズですか?ノーマルサイズもございますが?」
暗に「本当に食べ切れるのか?」と聞いてくる。
「大丈夫です。よろしくお願いします」
新島春香は余裕の笑顔で微笑んだ。
「かしこまりました」
そう言って店員は、笑顔で一礼した。
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