第29話
「ルー、アイツ速すぎるっ。捕まえてあげるから、アイツの動きを止めてよ!」
「それが出来ないから頼んでるんです!ハルカさんの役立たずっっ」
まるで一休さんのような問答をしながら、二人の少女がワーワーと騒ぐ。
「役立たずって、どっちがよーっ!」
新島春香が叫びながら、ルーに掴みかかった。
そのとき二人の結界が干渉し合い、ひとつの結界に融合する。お互い予期していなかったため、もつれ合うように二人で地面に倒れ込んだ。
「イタタタ…」
新島春香の下敷きになっていたルーが、頭を振りながら上半身を起こす。
その場所はロータリーにあるバスの停留所…日除けの屋根があるため、ちょう日陰になっていた。
一瞬で自分たちの現状を把握したルーが、みるみる内に蒼い顔になる。
「ハルカさん、ここは危険…」
ルーが声を張り上げた瞬間、二人の真下からシャドーパンサーが大口を開けて迫り上がり、そのまま結界ごと二人を咥え込んだ。
「やっぱり来たっ!」
新島春香は右手の手のひらを真下に向けると、結界術を発動する。すると、種類の異なる結界が反発し合い、二人の結界が弾き出された。
地面に投げ出された新島春香たちは、尻もちをついたままシャドーパンサーに目を向ける。
シャドーパンサーは透明に輝く結界の中で爪を立てて暴れていたが、完全に閉じ込められていた。
「ど…どんなもんよっ!」
新島春香は左手を右の二の腕に添えると、右腕で力こぶを作った。少しホッとした表情に見えるのはご愛敬である。
「あとは任せてください!シュートフォーム!」
ルーはツインセイバーを弓形態に変形させると、ギリリと弦を引き絞った。瞬時に光の矢が出現する。
同時に螺旋の風がルーの足下から吹き上がり、スカートの裾をはためかせた。
新島春香は焦ったように、あたふたとルーから距離をとる。そー何度も、パンチラの危機を晒す訳にはいかない。
ルーは前回よりも更に弦を強く引き絞った。
相手は大型魔核レベルである。普通なら簡単に勝てる相手ではない…ベルがくれた神器の性能に賭けるしかなかった。
「いっっけーーぇ!」
ルーは渾身の力を込めて、矢を撃ち放った。
~~~
「はいはーい!今日のところは、ここまでにしとこーか!」
ルーが矢を放った瞬間、シャドーパンサーとの間に突然人影が現れた。
それから持っていた大きな得物をクルリと回すと、光の矢をパキンと斬り裂く。
それは…2メートルはありそうな、黒く大きな鎌だった。
鎌に斬り裂かれた光の矢は、光の粒子を撒き散らせながら粉微塵に消失する。
ルーと新島春香は、ただ呆然と立ち尽くしているだけだった。
「あれれー、どーかしたー?」
少女は口元でパーを広げると、「クスクス」と可笑しそうに笑う。
そう、それは「少女」だった。
黒いレザー質のマイクロビキニのような、キワどい格好をしている。腕には同じくレザー質の、肘の上まである黒のオペラグローブ。更には太ももまで届くような、黒いレザーブーツを履いていた。
ゆるふわのピンクのショートボブに、大きくクリッとした紅い瞳。首元には黒い首輪がはめられており、そこから銀色のクサリが胸元まで垂れ下がっている。そして、両耳のちょうど上あたりから2本の黒いツノが生えていた。
「だ…誰?」
新島春香は、ようやく言葉を絞り出した。
誰かに似ている気がする…
とても良く知る、身近な誰かに…
「アタシー?アタシはミサ、
少女はニッコリ微笑んだ。
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