闇鎌のミサ
第28話
「あんなトロそーなの連れてるのに、何でこんなに追いつけないのよっ?」
新島春香は駅前のロータリーで「ガォー」と大声で吠えた。
「これは、本当に謀られたのかもしれません」
憤慨する新島春香を横目に見つつ、ルーが口元に手を当てながら探るように呟いた。
「どーいうこと?」
「ケータお兄ちゃんたちはもしかすると、学校の何処かに身を潜めていただけなのかも…?」
「ええっ!?」
「それで私たちのことを見送ったあと、悠々と裏門を使って…」
「あの
ルーの推論に、新島春香の怒りが爆発した。髪が逆立ち、炎のようなオーラが立ち昇る。
「探すわよっ!」
新島春香は真剣な顔をルーに向けた。
「探すって言っても、ドコをですか?」
「片っ端からよっ!」
新島春香の瞳は完全に本気だ。炎がメラメラと揺らめいている。ルーは思わず尻込みした。
「せめて…電話をかけてみませんか?」
「出る訳ないでしょっっ!」
ルーも当然そー思うのだが、なんとかこの状況を回避したい一心であった。
そして、ルーの願いは最悪の形で叶えられる。
周囲の景色が一瞬で、灰色一色に染まったのだ。
「あーもー、何なのよーーぉお!」
新島春香は再び「ガォー」と大声で吠えた。
~~~
そのとき「グルルルッ」と獣の喉を鳴らす音が聞こえると、3メートルくらいありそうな黒い毛並みのネコ科の動物が駅舎の屋根の上に現れた。
「あれは、シャドーパンサーですっ!」
「シャドーパンサー?」
ルーの驚いた声に、新島春香が疑問を返す。
「シャドーパンサーは、大型魔核の魔物です。自分の影と別の影との空間を繋げる事が出来るので、ドコに現れるか分かりません。絶対に油断しないでください」
「え、ウソ…それじゃ…」
新島春香は自分の足下を見下ろした。自分の影がそこにある。
「はい、可能性はゼロじゃありません」
「そんなの絶対勝てないじゃないっ!」
ルーの慎重な声に、新島春香は顔を真っ青にして叫んだ。
「ただ、アイツの体積自体が変わる訳ではありませんので、大きな影の中にでも入らない限り、いきなり真下なんてことは殆どありません」
それを聞いて、新島春香は少しだけ安心する。
「だから下手に影の中に入らないよう、常に注意しておいてください」
そう言って、ルーはツインセイバーを呼び出した。
~~~
シャドーパンサーは本当に神出鬼没であった。
大きな建物の多い駅前というこの場所では、影も至る所に存在する。
唯一の救いは、まだ日中であるということだ。コレが夕刻であったならば…その恐怖は計り知れない。
ルーの剣術では、シャドーパンサーを捉えることが全く出来ないでいた。新島春香の結界で、ただ生き長らえているというだけだ。
それも時間の問題であった。
一方的にタコ殴りにされているだけでは、いつ結界が消滅してもおかしくない。モチロン再展開は可能だが、タイミングが悪ければ生命に関わるかもしれないのだ。
「ハルカさん、アイツを捕らえることが出来ますか?」
「え…捕らえる?」
突然のルーの申し出に、新島春香は困惑した。
「そーいう結界術があるんです。向こうでは普通にやってましたよ?」
「はんっ、
ルーのあざけるような視線を、新島春香は笑って吹き飛ばした。
「前の私に出来て、今の私に出来ないハズがないっ!」
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