第9話
「ったく、アンタと私は一体いつから、そんな仲の良い友達になったのよ」
新島春香は自室で呆れ声をあげた。
「あれ、違いました?」
ルーは意外そうに驚くと、悪戯っぽく微笑んだ。
そんなルーの表情に、新島春香は「あーもう!」と自分の頭をガシガシと掻き回す。
「だったら私も『ルー』て呼ぶから!」
「全然いいですよ、ハルカさん」
ルーは嬉しそうに笑った。釣られて新島春香も仕方なしに笑う。
「ところで…」
そのときルーが、急に真面目な表情になった。
「そろそろ見つけましたか?」
「何を?」
新島春香が不思議そうな顔をする。
「あるハズなんですよ…眼鏡巨乳の委員長モノに、ツインテールのロリッ娘モノ」
「何の話をしてんのよ?」
「続けてますよね?ケータお兄ちゃんの部屋の掃除…」
「ちょ…バカッ!」
新島春香は慌てたようにルーの口元を押さえた。それから声をひそめてルーを睨む。
「アンタ何でそれを…」
「でも気をつけてください。ケータお兄ちゃんには気付かれてますから…」
「ウソ!?」
思わず大きな声が出てしまったので、新島春香は慌てて自分の口元を押さえた。
「そのせいでかなり巧妙に隠されていますが、必ず何処かにあるハズです。もし見つけたら私にも教えてください」
「ちょっとアンタ、ホントに何者?」
「だからエスパーですって」
「それを信じろと?」
新島春香はジト目でルーを睨みつける。
「ま、何でもいーじゃないですか」
ルーは「アハハ」と笑い飛ばした。
~~~
コンコンと新島春香の自室にノックの音が響く。
「はーい」
新島春香が返事をすると、部屋のドアが少し開いて新島咲子が顔を覗かせた。
「春香ー、もしよかったら、リースさんに夕飯も食べてもらったらどう?」
「え、いいんですか?」
新島春香が返答をする前に、ルーが新島咲子の提案に食いついた。
「ええ、勿論。だけどお家の人は大丈夫?」
「連絡を入れておけば大丈夫です」
「そう?だったら決まりね」
新島咲子は笑顔で頷いた。それからドアを閉めようとする。
「あ、待ってください!」
ルーに呼び止められ新島咲子は、再び顔を覗かせた。
「お礼に何かお手伝いさせてください」
「あら、そーお?助かるわー」
新島咲子は口元に手を当て「フフッ」と笑う。
「何処かの誰かさんも見習ってくれないかしら」
「一体誰のことですか?」
ルーと新島咲子は、楽しそうに会話しながら部屋から出て行く。
新島春香はパタンと閉じた部屋のドアに、手元のクッションを投げつけた。
~~~
「あれ?今日の肉じゃが美味しい!」
新島恵太は驚いたような声を上げると、料理をパクパクと口に運んだ。
「あら、いつもは美味しくなくてごめんなさい」
「え?」
母親の少し意地悪な言い方に、新島恵太は不思議そうな顔をした。
「それ、リースさんが作ってくれたの」
「なぬ!?」
母親のその返答に新島春香が反応した。それから向かい側に座るルーの方に顔を向ける。
4人掛けの食卓の母親の隣は、普段は父親である
ルーは新島春香の視線を涼しい顔で受け流すと、横に座る新島咲子の方に顔を向けた。
「お母さまの料理も、とっても美味しいです」
「あら、嬉しいこと言ってくれるわね。この子たちはそんな事言ってくれないから」
二人は目を合わせると、楽しそうにニッコリ笑った。
~~~
「もう夜も遅いし、恵太に送らせるわよ?」
新島咲子が心配そうにルーの顔を見た。
「大丈夫です。すぐそこまで家族が迎えに来てくれますから」
「そう?」
新島咲子はまだ納得いかないような顔をする。本当に優しい
「ハルカさん、また呼んでください」
「もー来んな」
プイッと横を向く新島春香の姿に、ルーは思わず苦笑いした。
「コラ、春香!」
新島咲子は娘を叱責すると、ルーに微笑みかけた。
「リースさん、またいらしてね」
「はい、是非!」
ルーは身を乗り出すように頷いた。
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