初めての贈り物②




突然の訪問だったため、楓は部屋着姿のままだった。 眠そうな猫の柄が楓らしいと思った。


「え、杏!? 見違える程に変わったねー!」

「今、平気?」


退院は急遽決めたことで、楓には連絡していない。 それでも嫌そうな顔一つしないのが楓の好きなところだった。


「平気だよ! 杏はもう退院して大丈夫なの?」

「うん。 どうしてもやりたいことがあって」

「でもだからって、まだ流石に安静にしていた方が」

「贈り物を一緒に考えてほしいの」

「贈り物?」


少し考えてから楓は頷く。 どうやら何かを察したようだ。


「あー、なるほどね。 仕方ないなぁ、いいよ! 杏一人だと心配だし、一緒に何にするのか考えてあげる」

「ありがとう」

「ちょっと着替えてくるから待っててね」


数分後、私服に着替えた楓と街を歩いていた。


「贈り物、何にするのか一応考えてはあるの?」

「ううん。 色々と考えたけどいまいちピンとこなくて」

「まぁ焦って考える必要はないと思うけどね。 そうだなぁ・・・」


楓は街の店をキョロキョロと見渡しながら考える。


「あ、花とかってありだと思わない?」

「花?」

「そうそう。 百合とか菫とか!」

「あー、花ねぇ・・・」


口に出してみてもピンとこなかった。 それを贈るには少し可愛らし過ぎるよう思えた。


「小さい花でも可愛いだろうなぁ。 三つ葉や四つ葉でも可愛いから喜んでくれそう」

「んー・・・」

「あ、あとは向日葵とか?」

「向日葵は流石にスケールが大きいかな。 あとできれば、可愛いものよりカッコ良いものがいい」

「あー。 そっか、そうだった。 カッコ良いものの方がいいよね」


そうして楓はまた街を見始める。


「男ってやっぱり、光ものが好きじゃない? 光系!」

「ライトとか?」

「そうそう! あとはピッカチュウとか! 最近よく流行ってる!」

「それ、本当に流行ってるの?」

「流行ってるよ!」


あれこれと考えているうちに話は今の杏についてとなった。


「というかさぁ。 杏、本当に丸くなったよね。 穏やかな人に見えていいわぁ」

「そうかな? これからは幸せに生きていくつもり」

「うん、私もそう願ってる。 司とは別れたんだよね?」

「もちろん」

「あんな最低な元カレなんて忘れちまえ!」

「はは、ありがとう。 ・・・あ、そうだ! 今と言えば、服装に困っているんだよね。 家にはキラキラした服しかなくてさ」

「なら今から新しい服を買いに行く? 私が選んであげるよ」

「本当!? 助かる」

「あといらなくなった私の服も、何着かあげるね」


こうして数時間、贈り物を考えつつショッピングを楽しんだ。 もちろん、ただ見るだけでなく時には何かを買ってみたりした。 たこ焼きを二人でつついていると、燃えるような赤が瞳に差し掛かる。 

いつの間にか夕方になっていたようで、楓はこの後予定があるらしく今日はここで解散となる。


「どう? 贈り物、いいアイデアは出た?」

「うん。 楓の意見も踏まえて、また考えてみる」

「一番最初の贈り物だからね。 後悔しないようにちゃんと決めるんだよ」


楓は顔で手を振りながら、夕焼けの中へと消えていった。



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