第20話
透子さんと二人きりで学校の事やらを話し合っていると、妹さんと神崎さんが戻ってきた。
神崎さんは少々お疲れモード、妹さんが元気一杯だった。
「まったく……ごめんね鷹崎君」
「仲、良いんだね」
「そりゃ妹だもん」
どこからか可愛らしい音が聞こえた。
「ママ、お腹すいた」
「そうね、翔太君もどう?」
「えっと……俺は良いです」
正直言ってそこまでお腹は空いていない、まかないとしてバイト先で少々食べてきたから。
でもそれを間近で見てる神崎さんは許すはずもなかった。
「ダメ、学校もそうだけどあんだけじゃ足りるわけないでしょ?男の子なんだからもっと食べないと!」
ぷくーっと頬を膨らませて怒る神崎さんの姿がとても印象の残るぐらい可愛らしくて思わず笑ってしまった。
「紗奈、まるで彼氏みたいね?」
「なっ……?!うぅ~ッ!」
膨れたまま顔を真っ赤にして、俺は睨まれた。
だけど心の何処かで、誰かと一緒に食べるという行為をしたいと思う自分がいる。
これ以上、神崎さんに迷惑を掛けたくない。
「お兄、一緒にたべよ?」
「……うん」
こんな可愛い子に言われて断ることなんて出来なかった。
☆
台所で料理をしている透子さんを遠目に見ながら、俺たち三人はゲーム等して楽しんでいた。
俺は二人が仲睦まじいのを眺めてるだけ。
「お兄も一緒にやろ?楽しいよ?」
「いいよ俺は、見てるだけで」
はっきり言うと何をしてるのかさっぱり分からない。
施設時代もずっと独りで本読んだりしてただけで、今遊んでるものがどういうものなのかも分からなかった。
「穂香が教えてあげる!だからやろ?」
参ったな……ここまで遊びたがってるなんて思っても見なかった。
これ以上、断り続けても良くないのは頭では分かってるんだけど……。
「三人とも、ご飯出来たわよー?」
「はーい!ごっはん!ごっはん!」
俺は小さく息を吐く、ありがとうございます透子さん。
穂香ちゃんがこの場を離れると、神崎さんの不機嫌さがますます拍車をかけていった。
「……穂香ばっかり」
「うっ……ごめん」
「しょうくんは……私の、なんだから」
小さな声で俺に呟いて、二人には見えない角度で服を摘み赤くなった顔を見られたくないのか俯いている。
俺の胸の鼓動が速まっていく、顔が近いのもあって俺も顔が熱くなってきた。
「紗奈ー?翔太君ー?何してるのー?」
「ひ、ひゃい!?い、今行く!」
俺の傍から離れて逃げるように食卓に向かう神崎さん。
また胸がきゅーっと締め付けられて、神崎さんのことを愛おしく思いもっと一緒に居たいと思うようになった。
「……今回は暖かい、な」
もっといろんな顔が見たい、俺だけに見せて欲しいと思うようになってきた。
でもまだそれを直接言えるだけの自信はなかった。
「鷹崎君!早く早く!」
「うん、今行く」
いつかこの気持ちを直接伝えられたら、いいな。
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