第18話
しょうくんの御両親が、今この場で無くなったと聞かされた私は何も言えず、あの有名な事故の被害者で遺族だったなんてこれっぽっちも考えたことがなかった。
だけど小学生の頃のあの病み具合を思うと、合点がいく。
「……辛くないの?」
「そりゃ辛いよ、でも後悔したって何も始まらないから」
「強いね……鷹崎君は」
「強くなんか、ない」
しょうくんの顔は影が出来て、私は俯くしかなかった。
私に出来る事って何か無いかなと思って、色々と思考を巡らすけれどもなにもしてこなかった私の頭じゃ具体的なことが思い付かない。
こんなので彼の支えになれる訳ないのに……。
「……ねえ、神崎さん」
「なに、かな?」
「今度の休みの日にさ、どっか遊びに行かない?」
☆
「……ただいま」
「おかえり、ってどうしたの?顔赤いけど」
「ッ!な、なんでも……ないっ!」
私は自分の部屋に逃げるとそのままベッドに飛び込む。
しょうくんから遊びに行かないかと誘われて、無意識にうんと答えてしまって変に意識してしまった。
「~~~~~~ッ!これってで、デート……だよね?!」
嬉しすぎて悶えていると私の部屋のドアが開いた。
「お姉、うるさい」
「ご、ごめん……」
妹の穂香は鬱陶しそうな口調で私にうるさいと訴えてきた。
歳は六つ程離れていて、小学四年生のどこにでもいるごく普通な女の子だけど、凄く大人しく人見知りが激しい。
「お姉どうしたの?顔赤いよ?風邪でも引いた?」
「う、ううん!引いてないよ?ほ、ほら元気一杯!」
家族にはこんな感じの本来の性格が出来るけど、他の人の前だとお母さんか私の後ろに隠れちゃうぐらい恥ずかしがり屋で甘えん坊。
凄く可愛い自慢の妹。
「じゃあ、何か良いことでもあった?」
そんなことないとは言えない、雰囲気と今の表情でもうバレてるから。
「えへ、えへへ……うんっ!」
「男?」
ぼふっとなるぐらい顔が更に赤くなり、穂香を睨む。
「そ、そんなんじゃ……ない」
「お姉、その人に会いたい」
「穂香?」
自分から会いたいなんて珍しい、いつもなら寂しそうな顔するのに。
「いずれは私のお兄になる人なんでしょ?」
「なっ……!ほ、穂香ーーーーッ!」
「お姉が怒ったー!えへへー」
私から逃げるように穂香は部屋から出た、絶対お母さんが変なこと吹き込んだでしょ……。
でも穂香の言う通り、付き合えばいずれそういう関係になってもおかしくはない。
「……でも、あんな話聞かされちゃったら」
好きだって、軽々しく聞けないじゃん……。
そして私はスマホを取り出して、シフトの予定日を見る。
「……今度は六月に入ってからか」
今はまだ五月中旬、衣替えが始まって春服から夏服に最近変わり出した程度でまだ春服のままの人は居る。
私はその空いている日にしょうくんとお出掛けとメモして、ご飯を食べにリビングに向かった。
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