第14話
しばらくの間お互い無言のまま、時が流れた。
神崎さんは机の上にある参考書を見て、少々驚いていた。
「勉強、してたんだ」
「……他に趣味みたいなもの、ないから」
他の男子とは違って、俺には趣味はないからぼーっとするかさっきのように勉強してるかの二つしかない。
何かあった方が良いんだろうけど、個人的にやりたいものがない。
「ねえしょうくん、勉強教えて欲しいな」
「別に良いけど……」
すると鞄の中から参考書やノート、筆記用具を取り出していた。俺は机の上にある参考書を持って先程座ってた場所に再び座り直す。
「そういや普段眼鏡してるのに今はかけないんだね?」
「え?あ、あぁ……遠いものが見えないだけだから家では良いかなって、掛けた方がいい?」
正直殆ど見えていない、辛うじて対面にいる神崎さんの顔が見えるぐらいで、壁に掛けてある時計は目を凝らさないと全く見えない。
「こっちもこっちで好きかな……なんて」
神崎さんの言っている意味がよく分からなかった。
☆
今私は静かにノートにペンを走らせながら、ちらりとしょうくんの顔を見る。
眼鏡がないからか、少し幼く見えて可愛い。視線に気付かれ少し睨まれた。
「ごめんね、ぼーっとしちゃって」
私は慌てて視線を手元に戻し、再びペンを走らせる。
でも、やっぱり気になって見てしまう。
「……分からないとこでもあった?」
「えっ?」
「あー、ここは――」
解説してくれてるけど、正直に言って頭に何も入ってこない。だって目の前にしょうくんの顔があるから。
幼く見えたその顔は、近くで見ると意外と整っていて私の胸がざわついた。
ダメ……我慢、我慢しなきゃ!まだ駄目、なのに……顔が熱くなってきた。
「――なんだけど、って聞いてる?」
「あ、ぁぅ……」
ドクン、ドクンと胸を響かせて落ち着かせてくれず、妙に熱っぽい。頭の中ではダメだと思いつつも口が開いた。
「……好き」
「えっ……」
「鷹崎君の事が好き、なの……」
もう後戻りは出来ない、遂に言ってしまった。
自分でも何で今言ってしまうのか、分かってなくて寂しいからなのか、他の二人に負けたくなくて出た焦りなのか、どこか遠いとこにいってしまいそうな恐怖心からなのかは分からないけど……。
ただ一つ言えることは、彼の事が好きということだけ。
「え、っと……神崎、さん」
名前を発せられて、また顔に熱が帯びる。
いきなりだからやっぱりフラれちゃうのかな……なんか嫌だなこんな形でフラれちゃうの。
「……俺、ずっと考えちゃうんだ。神崎さんのこと」
「鷹崎、君?」
「自分でもよく分かんないぐらい神崎さんと一緒に居るのが楽しいと思えて、仲の良い友達ってこんな感じなんだなって思った……でもなんでかそれじゃ嫌な自分が居て、いろんな事を教えてくれる神崎さんの傍に居たいって思うようになった」
もしかして真冬さん、最初から……?
しょうくんが真冬さんではなく、私の事ばかり考えてたことを……。
「だからなのかな……俺、石川先輩にフラれちゃった」
知ってる、今日聞いてきたから……。
「……知ってるよ」
「そっか……俺って、幸せになっちゃいけないのかな」
その言葉を聞いて、胸が痛んだ。そんなこと無いと言おうとした。でも言えなかった。
しょうくんの目から涙が流れてたから。
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