第12話

 気付けば眠ってしまっていて、外は明るく小鳥達の囀りが聞こえていた。


「ん……あれ……布団」


 希海さんがかけてくれたのだろうか、俺に布団がかけられていた。すると部屋の外からいい匂いがした。

 というか、冷蔵庫の中には何も入ってなかったような気がする……。


「あ、勝手に台所使っちゃってごめんね?あとお腹空いてない?」


「そういえば朝から何も……」


「簡単なもの作ったからこっちおいで」


 希海さんはリビングに戻っていった。俺は起き上がって、希海さんの後を追った。





 ☆





 久々の希海さんの手料理を戴いた俺、希海さんからこんなことを聞かれた。


「前々から気になってたけど……親御さんは小さい頃に死んじゃったんだよね?」


「はい、今は時折寂しく感じる程度ですけど……」


「強いね翔太君は……私だったら耐えられないな」


「俺はそんな強くないです、気持ちの整理ができないまま施設に入れられ親戚の家をたらい回しされて……気付いたらこうなってただけなんです」


 本当なら悲しくて、寂しくて、苦しいはずなのに何も感じることがなくなったのが怖かった。

 そしてここ数年墓参りにも行ってない、心の何処かで行っちゃいけないと思い込んでいるから。


「私は親が居るからその気持ちは分かってあげられないけど、暖かさなら教えてあげられるよ?」


 流石は希海さん、誰にでも優しいからすぐ勘違いをしてしまいそうになる。まるで姉のような人だ。


「それに、ね……?翔太君の事、大切だと思ってるから」


「想っていただいて、ありがとうございます」


 俺は希海さんに感謝の意を述べると、目を逸らされた。

 なにか変なこと言っちゃったのかな……?


「希海さん……?」


「……へっ?あ、ううん!な、何でもないよ!」


 やっぱり変だ、今までなら微笑み返してくれたのに何故か今回は露骨に視線を逸らされた。

 頬も若干だけど赤いような?


「希海さん熱でもあります?」


「ふぇ?!な、ないよ!?大丈夫だか……ら」


 本当に熱がないのか、確かめる為におでこをくっつける。熱は本当にないんだけど、さっきより顔が赤くなっている。


「熱はないですけど……どうかしました?さっきより顔が」


「本当に何もないから!」


「そう、ですか……あまり無理しないでくださいね?」


 本当にどうしちゃったんだろうか、希海さん。

 机に突っ伏してうーうーと唸ってるけど、近くに居ちゃ駄目なのかな?なんて考えて席を立つと不意に腕を掴まれる。

 それと同時に唇同士が触れ合った。


「……の、ぞみ、さん……?」


 一瞬何が起こったのか分からず、そっと唇に触れる。


「好き……初めて逢った時はそうでもなかったのに色々な面を知っていく内に段々と貴方に惹かれたの」


 俺はそのまま床に倒され、俺の上に乗っかる希海さんは目が蕩けていて、今度は押し付けられる。

 頭がピリピリする……希海さんに全てを支配されて他の事が何も考えられず、次第に俺からも求めてしまう。


「好き、好き好き好き、ねえ翔太……私だけを見て……?」


 もう離さないと言わんばかりに俺に夢中になった希海さんの姿を見て、もう何がなんだか分からなくなっていた。

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