第7話
空き教室に入った俺達は、適当な場所に座って神崎さんお手製の弁当を広げた。
「バイトの時もそうだけど、凄い美味しそうだね」
「そ、そう……?えへへ、なんか嬉しい、はいこれ」
「ありがと、じゃあいただきます」
俺は神崎さんから手渡された箸で、唐揚げを頬張る。
外はカリカリで美味しいけど、中は少しだけ固かった。でもこれはこれで好きだ。
「うん、美味しい」
「本当?!良かったぁ~……あ、私も食べるね」
俺達はバイトや授業のことを話し合いながら、弁当を食べ終え神崎さんは片付けをしていた。
俺はお昼を食べた影響か少し眠たくなってきた。
「あれ、鷹崎君眠いの?」
「うん……食べた後いつも眠たくてさ、ふああ」
俺は睡魔に勝てず、そのまま夢の中へと旅立った。
☆
私は片付けが終わった後、気付けば鷹崎君がそのまま眠っていて、その姿をぼーっと見ていた。
普段は暗い顔をしてる鷹崎君だったけど、最近は私の前でもよく笑ってくれるようになった。
「ふふっ……可愛い寝顔」
私は吸い込まれるように無意識で唇に視線を向けて、顔が熱く胸が高鳴った。キス、したい……。
そんな思考が突然現れて何を考えてるんだと心の中で叫びながら、私は頭を横にぶんぶんと振った。
でも一度考えてしまった私の思考は簡単には許してくれなかった。
「……いやダメダメ!そもそも私達付き合ってないし!でも……うぅ~……」
どうすれば良いのか分からなくなり、悶える私。恋の成就は相当先になりそう。
告白なんて自分から出来そうにない……だったら、振り向いて貰うしかないのかな?
でもどうしたら良いのか分からない、初めての恋だから誰にも相談なんてしたことないし……。
「希海さんに相談するしかないのかな……やっぱ」
今日学校終わったら相談しよう、それで駄目なら自力で何とかするしかない。
鷹崎君と付き合えるように私なりに頑張ろう。
☆
寝落ちした俺は目を覚ますと、隣ですぅすぅと可愛らしい吐息が聞こえてきた。
神崎さんが俺に凭れながら、眠っていた。
ふと時間が気になり時計を見ると、もうすぐ昼休みが終わる頃だった。
「神崎さん起きて、昼休み終わっちゃうよ」
「んんぅ……はれ、たかしゃきくんだー……」
寝惚けているのか俺に抱き着く神崎さん、俺の知り合いの女性は抱き癖でもあるのかな……。
でも神崎さんは眠ったままで、安心したような顔で抱き着いているけど凄い柔らかい感触が伝わってくる。
「起きて、遅刻しちゃうよ」
「んーっ……!」
突然暴れだして俺達はそのまま床に倒れ込み、唇に柔らかい感触が伝わってきた。
俺は驚きのあまり身体が動かなかった。
「ん……あれ、なんで床に……って鷹崎君?!大丈夫!?顔赤いよ!」
ドキッ――。俺は咄嗟に目を逸らし、唇に触れ教室を後にした。
「なんなんだこの感覚……胸が苦しい」
まだドキドキしていて、顔が非常に熱い。
今まで感じたことがない感覚で、身体ふわふわしてて何も考えられない。
「鷹崎君……?」
「ッ!ご、ごめんっ……!」
俺は逃げるように教室に戻り、机の上に伏せた。
希海さんや石川先輩の時とは違い、明らかに俺がおかしい。一体どうしてしまったんだろう?
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