第8話
あの日から一週間近くが経った。そのせいか神崎さんを避けるようになった俺は、バイトのシフトを変えてまで会おうとしなかった。
最初は希海さんは気にしてなかったようだが、神崎さんが打ち明けた事によって、俺は怒られて仲直りするまでバイトに来るなと告げられた。
「と言われてもなぁ……はぁ」
一体どうやって顔を合わせば良いのかが完全に分からなくなっていた。
別に嫌ってるわけでも、喧嘩してるわけでもなく、ただただ一方的に俺が意識しすぎてて落ち着くまで離れようとした結果だった。
さらに追い討ちをかけるように席替えが起こり、俺は窓側の一番後ろ、神崎さんはその対角線の前の方になってしまった。
「どうやって話し掛ければ良いんだろ……」
なんて窓の外を見ながら、独り言をぶつぶつと呟いていた。
☆
滞りなく授業が終わり昼休み、神崎さんと会わなくなった反面石川先輩と会うことが多くなった俺はクラスで浮いた存在になっていた。
俺は何にもないって言ってるのに関わらず、皆は先輩と付き合ってるという話を本気で信じていた。
「あ、鷹崎やっときた」
「すいません、遅れてしまい……」
「良いの、それで神崎さん……だっけ?ちゃんと話せた?」
俺は小さく頷くと大きく溜め息をつかれた。
「……そんなことだろうと思った」
「ごめんなさい……」
「その言葉は神崎さんに伝えなさい……ったく、どうして私なんかが」
先輩は独り言を呟いた後、頬を膨らませながら睨まれて、俺は怯む。
「……私はまだ鷹崎のことが好きだってこと、忘れないでよ?」
返事をしようと思ったら、勢いよく屋上の扉が開けられた。
「か、神崎……さん」
「先輩から居場所教えて貰ったから……なんで私を避けるの?」
避けてないとは言えなかった、結果的に避けてしまっているから。
俺は何も言えずに黙っていると、頬を叩かれた。痛い。
「いつまでそうしてる気なの?なんとか言ってよ」
「……ごめん」
「……本当、その性格だけは変わってないね、しょうくん」
俺は懐かしいあだ名で呼ばれ、神崎さんを見る。
今なんて言った……?
「やっぱ憶えてないよね、ついこの間思い出した私が言うのもなんだけどさ」
そのあだ名呼ぶ人は、どんな辛い記憶の中を探しても一人しか居なかった。
「さーちゃん……?なんでこんなとこに?」
「それは後で話すとして……先輩、彼に抱き着くのを止めてください」
そういえば背中から妙に柔らかい感触が伝わってくると思ったけど、ってなんで睨まれてんだ俺?
「……まだ発展途上だもん」
言ってる意味がよく分からなかった。
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