第2話 上が馬鹿だと、どうしようもない気がする
「えー、諸君。諸君らが言いたいことは私も理解している。だがその前に、私の自己紹介を済まさせてもらう」
おー、目つきがいかついから、男だと思ってたけど、声質的に女性だったわ。人は見かけによらないなあ。
というかよく見たら、髪の色とかピンク色じゃん。人間なのに髪がピンク色とか初めて見たわ。紛らわしいからヘルメットつけんなよ。つけるならヘルメットもピンク色のやつにしろよ。
はあ。
マイクもピンク色だし、ピンクが好きなのかな?実は魔法使いとのハーフだったりして。
だとしたら、男の軍人からめっちゃ好かれてそう。どうやら戦場には華が必要らしい。
なんて考えてる矢先、とても大きな声が俺の耳に飛び込んできた。
「わたしが、指揮官のウィナ・ロザリアだ。
貴様らにはわからないだろうが、勝ったものが勝者となるこの時代では、負けたものに人権はない。
故にこれから始まる戦いでは、何かしら功績を残した者には褒美をやる。
ナメクジのように腐った性根と根性を持つ貴様らが、どれほど結果を残せるか楽しみだ」
はい、俺が間違ってました。さっきの言葉、訂正させていただきまーす。
この方、バリバリの鬼長官だったわ。さっきの可愛らしい声は、どこへ行ったんだよって並の、野太い声だし。つうかそのセリフ、絶対挨拶じゃねえだろ。これじゃあ、鬼がビブラートで歌っているもんじゃないか。
え、たとえがよく分かんない?うるせー、俺だって分かんねーよ。
*
その後、なんやかんやあって、作戦についての説明が終了した。
色々言いたいことはあるが、一つだけ言わせてくれ。
本気でキレました。
何にキレたって? 全てにだよ!!
まず説明が長い。最初の挨拶も含めると、終わるまで計二時間弱かかっているんだが。
それに肝心な作戦は
初めの「諸君らが言いたいことは私も理解している」って言葉、あれ待ち時間が長い事じゃ無かったの?
だとしたら、あの言葉の諸君らが言いたいことってまじでなんだったんだよ。
二つ目。
あの指揮官、作戦の説明が雑すぎる。
「敵の陣地に入ったら持っている銃で、魔法使いの頭を狙って撃て。弾がなくなったら、一度後ろに下がって弾を補給しろ。以上」
聞いた瞬間、これで終わり?って思ったのは俺だけじゃないはず。だってさあ、敵陣に攻め込む時の並び順も何も決めてないんだよ。
つまり俺、いや俺の学校の連中、計二五六名は、一斉に
それに相手の魔法使いがどんな魔法を使うかわからない以上、下手に撃ったらはね返されそうだし。そもそも、銃の練習とか一切してないから、一発も当たらずに魔法で死ぬ未来しか見えないし。
三つ目。
これ一番重要。
そもそもの話、兵士の人数が違うんだよ。一応、この戦場は敵(魔法使い)の領地だから、当然そこで暮らしてる住民も兵士になる可能性がある。
そうなったら、いくら小さい領地とは言え、相手兵士の数は少なくとも四桁はある。対してこちらは指揮官など、お偉いさんを含めて三〇〇人くらい。必勝法、作戦などはなく、気合と根性だけは溢れているらしい。
こうして、考えると土台から間違ってるよな、この作戦。だから周りが死体だらけになるんだよ。
あー、まじで匍匐しながら後進していくのが、一番安全な気がしてきた。警備の人、気絶させて逃げようかな。
なーんて、考えてたら.....
上空に箒を持った人が飛んでいるんだが。
雪が降り雨が聞こえない 柄山勇 @4736turtle
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。雪が降り雨が聞こえないの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます