第2話  上が馬鹿だと、どうしようもない気がする

 「えー、諸君。諸君らが言いたいことは私も理解している。だがその前に、私の自己紹介を済まさせてもらう」


 おー、目つきがいかついから、男だと思ってたけど、声質的に女性だったわ。人は見かけによらないなあ。

 というかよく見たら、髪の色とかピンク色じゃん。人間なのに髪がピンク色とか初めて見たわ。紛らわしいからヘルメットつけんなよ。つけるならヘルメットもピンク色のやつにしろよ。


はあ。

 マイクもピンク色だし、ピンクが好きなのかな?実は魔法使いとのハーフだったりして。

 だとしたら、男の軍人からめっちゃ好かれてそう。どうやら戦場には華が必要らしい。


 なんて考えてる矢先、とても大きな声が俺の耳に飛び込んできた。


 「わたしが、指揮官のウィナ・ロザリアだ。

 貴様らにはわからないだろうが、勝ったものが勝者となるこの時代では、負けたものに人権はない。

 故にこれから始まる戦いでは、何かしら功績を残した者には褒美をやる。

 ナメクジのように腐った性根と根性を持つ貴様らが、どれほど結果を残せるか楽しみだ」


 はい、俺が間違ってました。さっきの言葉、訂正させていただきまーす。

 

 この方、バリバリの鬼長官だったわ。さっきの可愛らしい声は、どこへ行ったんだよって並の、野太い声だし。つうかそのセリフ、絶対挨拶じゃねえだろ。これじゃあ、鬼がビブラートで歌っているもんじゃないか。

 

 え、たとえがよく分かんない?うるせー、俺だって分かんねーよ。



 その後、なんやかんやあって、作戦についての説明が終了した。

 色々言いたいことはあるが、一つだけ言わせてくれ。


 本気でキレました。


 何にキレたって? 全てにだよ!!


まず説明が長い。最初の挨拶も含めると、終わるまで計二時間弱かかっているんだが。

それに肝心な作戦は十分じゅっぷんほどで終わり、気合や根性論、待ち時間がほとんど。

初めの「諸君らが言いたいことは私も理解している」って言葉、あれ待ち時間が長い事じゃ無かったの?


だとしたら、あの言葉の諸君らが言いたいことってまじでなんだったんだよ。


 二つ目。

 あの指揮官、作戦の説明が雑すぎる。

 

 「敵の陣地に入ったら持っている銃で、魔法使いの頭を狙って撃て。弾がなくなったら、一度後ろに下がって弾を補給しろ。以上」


 聞いた瞬間、これで終わり?って思ったのは俺だけじゃないはず。だってさあ、敵陣に攻め込む時の並び順も何も決めてないんだよ。

つまり俺、いや俺の学校の連中、計二五六名は、一斉にとつって行くことになる。もはや作戦じゃないよな、これ。


 それに相手の魔法使いがどんな魔法を使うかわからない以上、下手に撃ったらはね返されそうだし。そもそも、銃の練習とか一切してないから、一発も当たらずに魔法で死ぬ未来しか見えないし。


 三つ目。

これ一番重要。


 そもそもの話、兵士の人数が違うんだよ。一応、この戦場は敵(魔法使い)の領地だから、当然そこで暮らしてる住民も兵士になる可能性がある。

 そうなったら、いくら小さい領地とは言え、相手兵士の数は少なくとも四桁はある。対してこちらは指揮官など、お偉いさんを含めて三〇〇人くらい。必勝法、作戦などはなく、気合と根性だけは溢れているらしい。


 こうして、考えると土台から間違ってるよな、この作戦。だから周りが死体だらけになるんだよ。

 あー、まじで匍匐しながら後進していくのが、一番安全な気がしてきた。警備の人、気絶させて逃げようかな。










なーんて、考えてたら.....



























上空に箒を持った人が飛んでいるんだが。

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雪が降り雨が聞こえない 柄山勇 @4736turtle

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