第12話:連絡先
「じゃあね!」
確かに、暗くなってきてるし、こんな可愛い子達が暗い所にいたら危険だろう。
「ばいばい!」
俺らもみんなに手を振る。すると、みんなは笑いながら楽しそうにその場を去っていった。
「にしても今日楽しかったな!」
「そうだな!
そう言いながら笑い出す
そりゃ不可抗力だろ······。
「だけど雅人だって零菜とめちゃくちゃハグしてたじゃんか!それで照れてたくせにー」
「んなこと言ったら天だって優芽とハグしてた時真っ赤だったし!」
「はあ!?お前ら陽乃とか咲良とかとハグしてた時も顔真っ赤だったじゃねえか!?」
そんなしょうもないことで言い争っている俺たち。
まあ、みんな照れていた。そりゃそうだ。あんな可愛い子達と王様ゲームという形だが、ハグしたり手繋いだり、そんなことをして照れない男子がいないだろうか。いないわけがない!
こうゆうので盛り上がれるのも今のうちかもしれないから、今のうちに楽しんでおこう。
「あのさ、2人に相談がある」
俺は言い争いをしている中、2人にそう告げる。
もう落とされるなんて軽い男だな、と思われてしまうかもしれない。賛成されないかもしれない。色々と不安があったが、勇気を出して相談してみることにした。
「俺花音のこと好きになっちまった」
そう、その相談内容というのは、俺の恋愛事情。
森上花音のことが好きになってしまった、ということだ。
「は!まじで!?やっぱ今回遊んで大正解だったな!」
「まじでそれな!詳しく聞かせろよ!?」
2人ともその話題にめちゃくちゃ食らいついてくる。
やはり人って恋バナとなると自然と盛り上がるものなんだな。
俺は2人に詳しくこの恋について話し始める。
「花音とハグした時だけ胸の鼓動が違った。陽乃とか咲良とかとハグした時もドキドキだったけど、花音とハグした時だけどうも胸の高鳴りが違ったんだ。こんな時間ずっと続いたらいいなあって不意に思っちまって。お前らが来る前も花音と2人で話しててめちゃくちゃ面白くていい子だなって思ったし、見た目俺のどストライクだし、こんな子が彼女だったらどんだけ幸せか、って自然に思っちまったんだよ。んで、気づいたんだ。これって恋だなって」
今日話したばかりの子を好きになった。俺のこの好きという感情はどちらかというと一目惚れの方に近いのかもしれない。
こんだけで落ちるなんて軽い男、とか思われてしまうかもしれない。だけど俺は花音のことが好きなんだ。もうそれを自覚してしまったのだから後戻りは出来ない。
「おめでとう!」
「応援してる!頑張れ!」
軽い、やめた方がいい、もっと慎重になれ、こんな言葉が俺を攻めてくる可能性も俺は考えていた。
だが、そんなこと考えていた俺はよっぽど浅はかだったようだ。
友達は友達の恋を応援してくれる。
そういう肯定があって、友達は友達という存在を自己の中で確立し、友達と認める。
やはり友達という存在は偉大だ。
「おう!ありがとよ!」
2人に笑顔を向けた。
この恋を、可能性があるかないかもわからない恋を応援してくれる2人に俺は感謝した。
「花音のロイン追加したか?」
「いや、まだだな」
「んじゃあ今すぐ追加しちゃえ!」
天が俺からスマホを取り上げる。
そして、なにやらいじり始める。
「おい!勝手にやめろよー!」
天から携帯を取り戻そうとするが、時すでに遅し。
「ほい。追加しといた」
携帯を渡された時にはもう既に友達リストに森上花音という名前があった。
「せっかく追加したんだし、ロイン送ったら?」
雅人がそう提案した。
確かに、今日遊んだこととか話題は沢山出てくる。
メッセージするなら今が1番のチャンスかもしれない。
俺は勇気を出して、メッセージを送ることを決意した。
「なんて送るのが最適だと思う?」
「やっぱり今日遊んだんだし、そのことだろ」
まあだろうな。
俺は言われた通り、今日遊んだことを記す。
スマホをかたかたと入力する音が俺らの空間に静かに響いた。
丁寧に誤字、脱字がないかを確認しながら打っていく。
いつもはめちゃくちゃ気軽に文字なんて打てるのに、好きな人に送るとなると、重みが違ってくる。現に俺はそれを実感している。
「ふう。こんなもんでどうだ?」
「どれどれ!」
俺のスマホを次は雅人が取り上げる。「おい!」と、抵抗するが俺の抵抗は虚しく、入力中の画面を雅人に読み上げられる。
「『今日遊んだ酒井陸人だよ!急にロイン追加しちゃってごめん!今日めちゃ楽しかった!ありがとね!また遊ぼ!』」
俺は顔が赤くなる。
勝手に読みやがって······恥ずかしいだろうが。
雅人からスマホを取り上げる。そして、軽く雅人を睨みつけてやった。
「まあだけど、この文面で俺は普通にいいと思うぞ」
「ちょっと面白いけど、俺もありだと思う」
ぷぷぷ、と笑いながら肯定を示す天。
······なんか腹立つな。
まあだけど、この2人もこの文章でいいと言っているので俺は送信ボタンを押す。
そして、メッセージがトークルームに放たれる。
「花音って既読つけるスピード人によって変わるから最初のこのロインの既読スピード結構大事だぞ」
俺は天からそう言われ、今か今かと花音からの返信を待っていた。
そして、5分後。
ぴこん、俺のスマホが音を立てた。
スマホの画面に目を遣る。メッセージが1件来ているようだ。
そして、送ってきた相手は······
「よっしゃ5分で返事来たぞ!」
望み通り花音からの返事だったのだ。
たかがロインの返事で······と思うかもしれないが、さっき天の言ったことからして俺という存在を花音の中でそこそこ優先度が高い男として認識しているのだろう。だからロインの返事が早かったのだ。
「おー!」「いいねいいね!」盛り上がる2人。頬を紅潮させる俺。
こうゆうのはある意味青春の1つなのかもしれない。
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