第11話:好きな人
「自己紹介も終わったし次は何する?」
「鬼ごっこ!」
すると、
鬼ごっこ、たしかに公園で遊ぶと言ったら少し小学生がするイメージがあるかもしれないが、そうゆうものが思いつくだろう。
他にも、かくれんぼなど色々と公園でできる遊びはある。
「確かに、小学生に戻った気分で鬼ごっことかやると案外楽しいかもな」
俺は陽乃の意見に賛成した。
しかし、ここで思いもよらない反対が入る。
「いやいや!俺ら中学生だろ!なら黙って王様ゲームだろ!」
天が空を指さしながら胸を張って意見を放ったのだ。
いや、そこ胸張るとこじゃねえだろ······。
「王様ゲームってあの1番と2番がハグーとかしちゃうやつ!?」
「そうだよ優芽。どうせ天が王様ゲームやりたいの下心からでしょー?」
にやり、と笑いながら陽乃は天に言葉をぶつける。
「んなもんねえよ!」
「嘘つけえ!」
笑いながら陽乃が天をつつく。
なんかすげえ仲良さそうな雰囲気だな......。
「私は王様ゲーム賛成!」
ここで、
俺はなぜだかわからないが、花音の意見に賛成したい気持ちになった。
「んじゃあ俺も!」
そして、気づいたら自分も賛成!と周りに意見を言っていた。
まあもしかしたら俺も天と同じで下心があるのかもしれないが······。
「んじゃあもう王様ゲームでいっか」
「じゃあこれくじ引いてって」
咲良がそう言い、スマホを天に向ける。
どうやら今の時代スマホで王様ゲームが可能らしい。
咲良のスマホを1人1人手に取って、くじを引いていく。
「やった!俺が王様だ!」
どうやら
はてどんな命令が来るのか......。
「1番と3番がハグ!」
早速結構デカい命令が来たな······。
って1番と3番!?3番俺じゃねえか!
まさかの早速番号が当たってしまった。
「俺3番」
正直にそう告げる。
別に1番がこの中の女子ってことに期待していなくもない。
「私1番」
そこで名乗りをあげたのは俺の期待してた通り女子だった。
しかも、
「んじゃあ陸人と花音ハグな!」
その相手は花音だったのだ。
お互いに顔を赤くして照れる。そして、徐々に俺らは距離を詰めていく。
これまじで恥ずかしいだろ。みんなの前でハグでしかも俺顔真っ赤だぞ。公開処刑ならぬ公開ハグだなこれ。
俺と花音の足は思うように動かないらしく、なかなか俺らの距離は詰まらない。
「恥ずかしがんないではよハグしろよー!王様の命令だぞ!」
王様になって調子に乗っている雅人が偉そうに言う。······この野郎······。
俺と花音の背中は同時に押される。
そしてハグできるほどの距離まで近づいた。
「ごめんね」
俺は念のため謝った。王様ゲームとはいえ、こんな今日話したばっかの男とハグなんて花音は嫌だろう。だから謝るべきだと判断したのだ。
そして、謝るとすぐに俺は花音の体を優しく包んだ。
俺が腕を後ろに回すと、花音も腕を後ろに回す。
花音の腕が俺の背中に当たっているということを知った時はもう赤くなりすぎて、どうにかなるかと思った。
「ありがとうごさいます。先輩っ」
花音は俺の耳元で小さく呟いた。小さく、しかし俺の耳元に確かにそれは入ってきた。
その声はとても優しくて、可愛くて、だけど俺はその言葉の意味が理解出来なかった。
「――っ!」
花音の体は柔らかくて、温かかった。
俺が花音に落ちるにはこれらは十分すぎた。
もっと強く花音のことを抱きしめたい。恋人として、こんな王様ゲームという形ではなく、自然とハグしたい。
そう思ってしまっても仕方ないのだ。
「ひゅーひゅー!いいね!」「きゃー!結構強くハグするねー!」
騒ぎ立てる周りの男女達。
だが、そんな騒いだ声はあまり届かなかった。
この目の前の森上花音という人物に落とされたから。
約何年ぶりだろうか、こんなに胸の鼓動が早まったのは。
この胸の鼓動は俺にとって好きな人が出来ましたよ、というサインであった。
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