第10話:自己紹介
「よし、準備おっけーと」
学校から帰り、俺は外出の準備を終え、家を出ようとしていた。
どうやら彼女たちが所属しているテニス部は顧問の用事で1、2ヶ月ほどの長い休みになるそうだ。
俺たちは受験生で部活がないから勉強しなくちゃいけないが、まあ、受験生だからって遊ばず勉強している人は正直あまりいない。だから自分も遊ぶ。一応狙っている高校は偏差値70の超進学校だが、まあどうにかなるだろう!
「んじゃあ行ってきまーす」
母親に「勉強は大丈夫なの?」と心配されたが、「大丈夫!」と、笑顔で返した。
「にしても、普通に楽しみだな」
つい、早めに家も出てしまった。
俺の家から待ち合わせの
結構どうでも良い話だが、実を言うと、俺は年下好きである。先輩!って後輩から上目遣いで言われるのが夢であるのだ。まあそれを周りに言うと大体キモがられるんだが。
だけど、
やっぱり持つべきは共感してくれる友達だよな!
うんうん、と心の中で頷きながらも5分ほど俺は歩く。
「着いたけど、まだ誰もいねーな」
まあそりゃそうだ。俺もいつもだったら約束時間に着くように努力して、その結果約束の時間の10分後とかに着いて遅い!って友達に怒られていたからな。
約束の10分前に着く人なんてそんなにいない。
まあスマホ見て、時間でも潰しておくか。
そう思い、スマホを取り出す。そして画面に目を移そうとすると、
「あれ、
急に誰かに呼ばれ、声のした方向を見る。
そこにはダボッとしたブラウンのスウェットに、ジーパンを履いている彼女の姿があった。
一瞬で頬が赤くなるのを感じる。
「酒井先輩?」
一方的に頬を赤らめている俺を不審に思ったのか、もう1度、花音が疑問符を浮かべる。
「ああ、来るの早いんだね」
「楽しみでついー」
にへら、と笑みを浮かべる。
その笑顔のインパクトは壮絶であった。
「酒井先輩も楽しみだったんですか?」
「楽しみだったよ!」
「んじゃあ私と同じですねー」
「そうだね!」
あはは、とお互いに笑い合う。
可愛いし、めちゃくちゃ話しやすい雰囲気がある。
現に、俺も今落ちそうになってるしな······。
「先輩って趣味とかありますか?」
「趣味かー。アニメを見ることとかかなー」
「おー!私もアニメ大好きなんですよ!」
「まじで!?」
意外と趣味が合うことにお互い気付く。
そして、俺らはアニメの話をし、それが弾み、盛り上がった。
笑い合って、楽しくて、可愛くて、まさに俺が理想としている後輩が今俺の目の前にいる。
こんな時間が長く続けばいいのに······と思ってしまっても仕方ないだろう。
俺と花音がしばらく話していると、集合時間になり、みんな集まってくる。
雅人は10分程の遅刻をしているから後でお仕置が必要だな。
にしても、驚くことにみんな可愛い。
零菜はボーイッシュ女子って感じで髪は短め、キリッとした瞳に明るい雰囲気を醸し出している。
咲良は大人っぽい顔立ちをしているが、身長は低く、ギャップがとても良い。
陽乃はThe可愛い系女子って感じで、丸顔にぱっちり二重。そして、八重歯があるのが特徴的である。
優芽は雰囲気からしてとても優しい感じが伝わってきて、笑顔が誰よりも可愛い。
この今の場面こそが俺の望んでいる場面なのかもしれない。
「みんな相変わらず可愛いな!」
そんな可愛い後輩達に囲まれながら、天は本音を表に出した。
まあ本当に可愛いけど、それを表に出せるって天やっぱすげえな......。
「天も相変わらずだね」と、みんなが笑う。
その空気に乗って俺も笑う。
「そいえば、まだみんなあんま話したことないよね?」
「ああ、そうだな」
俺がそう言うと、天が「じゃあ」と前置きする。
「まず自己紹介からしようぜ」
「それいいね」
たしかに、俺なんて彼女達の名前だけ聞いたことあるくらいで今日初めて話したくらいだ。遊ぶにしてもまだお互いのことを知らなさすぎる。故に、自己紹介という選択は正しいだろう。
「じゃあジャン負けから時計回りで自己紹介してこーぜ!」
そして、皆円になり、一斉にじゃんけんする。
「じゃんけん!ぽん!」
異口同音にそう言い、皆がグーチョキパーを出す。
「あー零菜がトップバッターかー......」
残念がりながら頭を抑える零菜。
そして、自己紹介を始める。
「田中零菜!中学2年生!入ってる部活はテニス部だけど、サッカーが1番好きなスポーツ!よくみんなからうるさいって言われます!こんな私だけどよろしく!」
すげえ元気だな......。危うく鼓膜までも破れるかと思ったぜ。
そして、まだ自己紹介は続く。
「私は加藤陽乃!きゃぴきゃぴの中学2年生!モノマネとかするの好き!だけど勉強はキラーイ!みんなよろしくね!」
溢れ出る陽キャ感。
この子の彼氏になれたらその彼氏は幸せものだろうなあ。
「私は安藤咲良!好きなタイプはイケメン高身長の最強男子!だけど、私コミュ障だからコミュ力高くてリードできる人も好き!よろしく!」
どこがコミュ障なんだよ······。
咲良の周りには明らかに明るい雰囲気が醸し出されている。
「私は岡部優芽!優しい人がタイプです!よくみんなから笑い方変とか言われます。そんな私だけどよろしくお願いします!」
優芽は礼儀正しい感じだ。
友達の相談は親身に聞いてくれそうな、優しい雰囲気が醸し出されている。
「森上花音!2次元の男子大好きー!よくみんなから変態って言われちゃう!誰が変態やねんって文句言いたくなるよね!よろしくね!」
笑顔を浮かべる花音。
みんな可愛いが、やはり俺が1番タイプなのは花音だ。なので、その笑顔がぐさり、と俺の心臓に刺さる。まるで、恋のキューピットが俺の心臓を射ち抜いたかのように。
「んじゃあ次は男子の出番だな!宮下天!中学3年生!サッカーが大好き!あと女の子も大好き!よろ!」
天はこう見えても元サッカー部である。それもあってかこんな性格だけど、意外と女子からの人気は高かったりするのだ。
「俺は松下雅人!中学3年生!隣の三重から引っ越してきた!天と同じでサッカー大好き!だけど最近彼女に振られました!よろしく!」
どさくさに紛れてこいつすげえこと言ったな······。雅人が美歩に振られてまだ少ししか経っていない。なのに、こんな元気でいられるだなんて、雅人ってめちゃくちゃポジティブなんだな。
そして、俺の番が回ってくる。
「俺が最後か。俺は酒井陸人!恋愛経験は元カノが1人いたくらい!だけど今となってはそれは黒歴史!よろしく!」
俺も雅人に対抗するように恋愛事情を自己紹介に取り入れた。
すると、予想通り、笑いが起こった。
あの時は苦しかったが、もう今となってはかなり昔のこと。だから俺は黒歴史をこんなに明るく話せる。
その時の彼女らの笑顔が黒歴史とは対照的に眩しかった。
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