第8話:放課後の出来事

「なあ美歩みあ雅人まさとと別れた本当の理由はなんだ?」


 北校舎4階の視聴覚室に美歩を呼び出し俺は訊いていた。

 雅人と別れた理由を確実に知りたいからだ。

 美歩はため息を1つ吐く。


「あんた、そのことでこんな遠い視聴覚室に呼び出したの。もう足ぱんぱんなんだけど!」


「こんなんでぱんぱんになってたらお前の運動不足が悪いだろ······」


 まあ美歩のことだから家でゴロゴロとスマホを触っている生活ばかり続けているのだろう。そりゃ、運動不足になっても仕方がない。まあ俺も最近スマホばっかだから運動不足になりそうなんだけど······。

 おっと、話題が少し逸れてしまった。

 話題を戻そう。


「んで、なんで雅人と別れた?本当に好きじゃなくなったからか?」


 真剣な表情をし、この質問からは逃げられないと言わんばかりに美歩に訊く。


「まあそれもある。私自身が雅人とは友達がいいって思ったから」


「それも?」


「うん。だって雅人が気持ち悪いことするから女子から色々と言われるし、雅人とは友達がいいって思って好きじゃなくなったからもう別れるべきだなって思って」


 やはり俺の予想はおおよそ的中していた。

 美歩は雅人の気持ち悪い行動自体が嫌なのではなく、その行動によって自分の評価も下がることを恐れたのだ。

 だが、それ以前にもう美歩が雅人を恋愛的に見ることがあまり出来なくなったという事実は初耳だ。

 仮に、雅人がそらたちと絡んで気持ち悪いことをしていなくても別れを告げられるのは時間の問題であっただろう。


「じゃあ復縁とかはする気ないのか?」


「ないない!」


 俺が気になっていることを訊くと、美歩は即答した。


「もう恋愛的には見れないだろうし、カレカノって関係より友達っていう関係の方が落ち着くからさ!」


「······そうか」


 もしかしたら、と一縷の可能性にかけて美歩に訊いてみたが······まあそりゃそうだよな。

 別れたということは当然、相手の負の面を知ったということだ。

 復縁というものはそんな易々とするものではない。

 故に、美歩が復縁したい、と言う可能性はほぼ0に等しいのだ。


「話ってそれだけ?もうそろ帰ってい?」


 だるそうに指で髪を巻く仕草をする美歩。

 これ以上美歩に話すことはなかった。別れた理由、復縁の可能性、両方とも訊いたが、結果は良いものではなかった。

 だから美歩とこの件について話すことはない。

 美歩をこれ以上引き止める必要も理由も無い。


「いいぜ。んじゃあ今日は一緒に帰るか?」


「しゃーなし!」


 そして、俺らは誰もいない視聴覚室を後にする。

 俺の心にはやるせない感情が渦を巻いていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る