第5話:帰り道

 美術の居残りが終わり、ようやく帰れる。

 俺らは美術の先生に「さようなら」と言ってから美術室を出る。

 居残りをしていた中でどうやら俺らが終わるのが1番遅かったらしく、俺らは美術の先生にため息をつかれた。

 申し訳ない······。

 美術の先生への申し訳なさを残して俺らは学校を後にする。


「今日の居残り楽しかったな!」


「それな!」


 俺らは学校を後にしそんな他愛のない会話を始める。

 実際、美術の先生は優しいので、俺らが雑談をしていても特に何も言わない。だから恋バナだとか色んな話をしていたわけだが。


「なあ、陸人りくとの恋バナほんとにないのか?」


 雅人まさとが痛いところをついてくる。

 ねえよ······。実際あったら学校生活を退屈に思ってねえよ······。

 俺はため息をつく。それを2人は察する。


「んじゃあ今度あの子と遊ぼうぜ」


「あの子?」


「美術の居残りにいた森上もりがみ花音かのん!」


 急にほぼ実現不可能な提案をする雅人。

 こいつは一体何を言っているのだ······。

 大体、俺はあの子と面識すらない。可愛いということと狩人かりうどって呼ばれていることしか知らないし、あの子の性格なんて実際のところまったく知らない。

 それにどうやって関わればいいんだ?急に話しかけてもビックリされるだけだろうし。


「どうやって遊ぶんだよ」


 俺が2人に訊くと、2人は考える素振りも見せず即答する。


「「あの子の友達も遊びに誘う」」


 まじか······。

 俺は驚く。たしかに、友達も誘って遊べば楽しいだろう。だが、本当にそんな簡単に遊ぶことが出来るのだろうか。

 思わずため息が出る。


「んじゃあ俺、零菜れいなに頼んでみるわ」


 そらは自慢げな顔をしている。

 たしかに天は1つ下の学年、いやひかりおか中学校や他校でもそこそこ知名度は高い。そんな天が誘えば来る可能性はそこそこ高いだろう。


「んじゃあ俺からも零菜に頼んでみる」


 続いて雅人がそう言った。

 雅人も零菜と関わりがあるのか、と驚くがまあ美歩みあを1週間ほどで落としたんだ。そりゃ絡みがあってもおかしくないか。


「だけど雅人って美歩と付き合っているんだろ?美歩束縛激しそうだけど大丈夫なのか?」


「んーまあ美歩から許可取れなかったら行かないけど、許可取れたら俺も行くわ!」


「曖昧な返事だな······というか天ほんとに遊べるのか?」


「あったりまえだろ!俺に任せとけ!」


 さすが天。可愛い女の子の話になると、もう目の色が変わってしまっている。

 俺はそんな天に呆れながらも結構楽しみにしていた。

 同時に、その女の子の中に俺のメインヒロインはいるのか、とわくわくしていた。

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