第4話:居残り
「起立!気をつけ!さようなら!」
室長が学校の終了を知らせる。
俺らは中学三年生。もう部活は引退しているのだ。まあ、とは言っても俺は今から美術の居残りに行かなければならない。
俺は教室を出る。するとすぐ
「よう!」
「おう!」
「おう!」
俺の言葉に2人の返事。
俺は雅人の隣に視線を遣る。
「俺も美術の居残りだ」
そう言ったのは
天は雅人と同じ2組の男子。可愛い系の男子で容姿だけ見れば女子からの人気は結構高いと思う。容姿だけを見ればだが······。
天はいわゆる変態であるのだ。
この前聞いた話なんかでは美歩の制服のスカートを捲っていたとかなんとか。
まあ俺はそうゆうの好きだから別に全然いいんだけどね。雅人がそうゆう人が大丈夫かっていうのが問題なんだけど。
「行こうぜ」
俺が一言そう言うと、天と雅人もついてくる。
そしてしばらく移動する。
階段を降りて、北校舎に移動し、また階段を昇って、そして少し歩いて俺らは美術室へと移動した。
「先生今回も居残りよろしくです!」
俺は先生に元気よく挨拶する。
「陸人君毎回居残りだよね」
先生はやれやれといった感じで俺らを迎える。
美術の居残りは俺ら3人くらいだと思っていた。
だが、違っていた。
そこには同級生だけでなく、下級生もいた。
どうやら、全体的な居残りだそうだ。
俺らは後ろの席の方に腰を下ろす。
「なあなあ雅人と陸人あの子見てみろよ」
天がいやらしい顔をしながらも前の方を指さす。
「
あー、その噂なら俺も聞いたことがある。
俺らが中学1年の時、後輩から超可愛い転校生が来たとかなんとか聞いていたのだ。
たしかに可愛い。
身長は150センチくらいで低く、ぱっちりとした瞳。亜麻色で短い髪の毛がその小さな頭を包んでおり、丸く幼い顔立ちをしている。こんな可愛い後輩がいたらいいなあと自然と自分のテンションは上がっていた。
「まあだけど、その容姿の分男絡みが多くて、狙った男は逃がさない
いいなあと思っていたが、天から急にそんなことを言われ少し落ち込む俺。
まあそりゃあんな可愛かったらモテるだろうなあ。男の1人や2人容易く手に入れられるだろう。
それに比べて俺は······。
これ以上考えると傷つくので俺は考えるのをやめる。
「もうお前ら可愛い子ばっか見てないでちゃんと居残りして早く帰るぞ!」
俺がそう言うと、2人は笑い出す。
「「お前だってしっかりと見てるじゃん」」
頬が赤くなるのを感じる。正直かなり恥ずかしい······。まあ男なんて誰しも可愛い子を前にしたら自然と視線をその子に移す。そんなの当然だ!当然のはずだ!
俺は自分にそう言い聞かせながらも、絵を描き始める。
だが、俺はどうもその子の笑顔、その子の真剣に絵を描く表情、友達と話しているときの楽しそうな顔を見て、まったく集中できなかった。
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