第4話


【ロベルト】

「意義あり」


閉廷しようとした時、その声が響く。


その声に驚き、エリザベータが声の主の方を振り返る。


【エリザベータ】

「お父様?」


声の主、帝国の王。


ロベルト・アネーリオに発言権が移されていく


【裁判長】

「ロベルト・アネーリオ陛下」


【ロベルト】

「わしの娘が殺されるのを黙って見ていろというのか?裁判長?」


【裁判長】

「残念ですが、姫様のご意向ですので」


【ロベルト】

「貴様も愚かだな、エリザベータ、何故その男が恋しい?他にもいい男などこの海にたくさんいるではないか?」


【エリザベッタ】

「あの人は、やさしい目をしていました」


【ロベルト】

「エリザベータ、だから貴様は愚かだと言うのだ、人間に何人の人魚が殺されたのか忘れたのか?」


【エリザベッタ】

「……それは……」


下唇をかみながらエリザベータがうつむく。


そしてエリザベータは思い出していた。


かつ人間に恋した人魚が陸に出て行き。


一人を除いてはみんな死んでしまったこと。


人魚が捕らえられて殺されたことや、逆に人魚が人を殺した歴史。


簡単には修復できない溝が人魚と人の間にあるということを。


【ロベルト】

「……特例767条の申請をします」


ロベルトがそう告げた時、法廷内がざわめく。


そして裁判長がゆっくりとロベルトをなだめ始める。


【裁判長】

「お言葉ですが、ロベルト王、あなたは自分が何のを言っているのかお分かりですか?」


そういわれてロベルトは目を伏せながら、悔しそうに


【ロベルト】

「それは当然、娘が海の底に沈められるか、泡となるか、その差しかないことも、よく分かっている」


とぎれとぎれ言葉を続ける。


そう話しながら時折小刻みに肩を震わせている。


【裁判長】

「あの特例はここ数百年、リスクがあるとして禁じられています、それに、執行するには王の承認がなければ……」


まだ説得を続けて話している裁判長をさえぎるようにロベルトは割ってはいる。


【ロベルト】

「現時刻を持って承認する、ワシは、娘がみすみす死ぬのを見ておれんのだ、ワガママだとは分かっている、エリザベータ、お前にはチャンスをやる、これでよかろう」


そういい残すと、ロベルトは退席。


エリザベータの両脇を抱えるように、兵士が囲む。


【裁判長】

「……以上、ロベルト王の承認により、特例767条を執行する、エリザベータ姫は48時間以内にこの国を追放されます、そして、陸上での生活に移行させていただきます」


声を震わせながら、裁判長が判決文を読み上げる。


【エリザベッタ】

「あたしは一体どうなって?、裁判長?何のことか私には分かりません」


何が起こるのかわからず、戸惑っているエリザベータ。


しかし、この内容は王族と司法機関の人間しか知りえない内容。


その守秘性を守るために


【裁判長】

「以上をもって閉廷とする」


裁判長はすぐにこの法廷を閉廷させる。


エリザベータは手錠をかけられ、法廷からとある所に連れて行かれる。

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