第2話
海底帝国、第1892法廷。
海底の法を守る裁判所。
そこにはさまざまな人魚たちがいた。
裁判を傍聴する民衆。
裁判官、裁判長。
弁護士。
検察官。
そこには、人魚たちが営む社会があった。
ただ、普通の法廷と違ったのは被告人が人魚の帝国の姫であり。
その姫が死刑になるかもしれない。
そこが他の裁判とは大きく違う所だった。
【裁判長】
「被告人、エリザベータ・アネーリオ姫に判決を言い渡す、同族殺しと、異族への恋愛感情を抱いた罪により死刑と同時に帝国の追放を言い渡します」
裁判長が判決文を読み上げる。
人魚の姫は表情一つ変えずに
【エリザベータ】
「謹んでお受けいたします」
そう言葉を発する。
【裁判長】
「姫様……お言葉ですが異族への恋愛感情さえ捨てられれば、数年牢獄に入れば元の生活に戻れます、考え直してはいただけないでしょうか?」
いくら人を裁くにが仕事とはいえ、感情を抑えきれない裁判長。
普通ならこの時点で結審するのだが、今回の場合はそうは行かなかった。
一国の姫が異族である陸の人間に恋をしたとなればそれはただ事では済まされないし、帝国の士気にもかかわる問題。
何とか思い直してはもらえないか、その一心で説得を続ける裁判長。
【エリザベータ】
「私はどちらの罪も受け入れます、私の気持ちに変わりません、あの方と結ばれぬのなら私は死刑になって死のうが変わりません、他の誰かの妻として生きる、そんなの生きている理由も無い」
その説得には耳を貸さず、その説得を突っぱねる人魚の姫エリザベータ。
その目はまっすぐとしていて、自分がやったことでは罪ではない。
正当な恋愛だといわんばかりに堂々としたまなざし。
【裁判長】
「ですが……姫様もご承知の通り、異族との恋愛はご法度、追放は免れない大罪にございます」
裁判長はその希薄に押されながらも何とか説得を続ける。
しばらく姫は沈黙した後で、反論した。
【エリザベータ】
「誰かを想う気持ちが罪でしょうか?」
そう言い放ったとき、裁判所の中が静まり返る。
誰もが言葉を失い、誰もがそれが正論であることを悟った。
【裁判長】
「…………」
みなが沈黙した。
これは法律だ、その理由だけで姫の恋を邪魔しているということも分かっていた。
でもそれは、法を守るものとしては曲げることもできず。
この姫を法に従い、この帝国から追放するしかない。
そんな空気が法廷内に流れていた。
【エリザベッタ】
「それが罪だというのなら、私は罪を受け入れます、受け入れて、海の藻屑となりましょう」
低く、覚悟に溢れた声が法廷に響き渡る。
この意思を誰もとめることはできない。
そんな空気が流れていた。
【裁判長】
「姫様の意見とあらば、私もそれを止める権利はございません、それではこの第1892法廷はこれにて閉廷、以下の結果を確定とし、刑の執行は一週間以内とする」
死刑の後に追放。
そんな尾も判決が言い渡された中。
エリザベータは表情を変えることなく一礼する。
そして、法廷は速やかに終了したかに見えた。
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