あおいと俺

時雨朝

第1話

どこまでも、どこまでも広がる青い空。

そして鼻をくすぐる潮風。

今が夏だと言うことを教えてくれる。

予定もなく、宿題も昨日がんばったから今日はない。

そんな夏休みのある日。

俺はぼんやりと、部屋から見える海を眺めていた。


不意に目に入る学生証。

俺が満面の笑みで写ってる写真とともに「渡辺 恵」(わたなべ さとし)そう書かれている。

何でこんなところに落ちているのか、一瞬首をかしげた。


でも、その疑問はすぐに晴れた。


昨日、読書感想文を書くために図書館に持って行ったんだった。


昨日借りた来た本はもう読んだ。

でも、感想文を書くのは難しそうだった。


だって、小難しい哲学書だったし。


意味も分からないのに、ここが深い。


とか書こうものなら、解釈が間違っていたときに恥ずかしすぎる。


だから今日も別のを借りてこなければ、感想文が書けない。


重くけだるい感覚を引きずりながら、市営図書館へと真夏の太陽が照りつける中歩いていく。

感想文をきっちり書いて、夏休みの宿題を終わらせるために。


約1時間後。

俺は本を借りた。

小さなときにも読んだことのある人魚姫のお話。

原作者はアンデルセン。


なんだか救われない話。


人魚は泡になってしまう。


それでも、その泡になるまでの話が好きだったりする。


人魚姫の王子様が好きだと言うまっすぐな気持ちや、王子の鈍感さ加減。

すべての条件がそろってこの悲しい結末になるのだとこの歳になると思う。


読んだはなしを借りておいて、苦労なく感想文を書こう。


そんなせこいことを考えつつ、家路を急いだ。


家に帰る直前。

海が見たくなって少し寄り道する。


家の前にある混雑しているビーチではなくて、そこから少し離れた小さな砂浜。


目の前には『遊泳禁止』の看板。


目の前には誰もいない海と、耳に聞こえてくる波の音。

ぼんやりと眺めながら、夏の暑さと、静寂を感じている。


しばらくボーっと眺めていてとあることに気がつく。


あの砂浜の端っこのほうにあるのは何だろう?

恐る恐るちかづいて確認する。


丸みを帯びた形。

手足と足のように見えるもの。


一歩一歩近づきながら、それが人間であることに気がつく。


気がつけば駆け足で近づいていた。


そしてその人に触れられる位置まで近づいたとき。


一つの可能性が頭をよぎる。


もしかしたら、死体かもしれない。


一瞬、背筋が凍りつく。

その場から逃げようかとも考える。


でも、もしまだ生きてる人だったら、このまま放っておいたほうがかなり危険だ。


【恵】

「すみません、大丈夫ですか?」


声が聞こえるくらいの距離に近づいて声をかけてみる。


反応はない。


想像が現実になったらどうしようとドキドキしながらその倒れている人に近づく。


近づいてみて、分かったことがある。


倒れているのは女性。

長い黒髪で、体は大きくない。

一般的な女性より少し小さいくらいだと思う。


呼びかけに対しても反応のない女性。


ますます怖くなって肩をつかんで揺さぶってみる。


何回か揺さぶった時点で、女性の手がピクリと動く。


生きている。


そう感じて、ようやく心の中に安心感が溢れてくる。


落ち着いてもう一度その女性を眺める。


反応はないものの、息はしていた。

呼吸に合わせてお腹が膨れたり、しぼんだりしている。


安心して、その場を去ろうとしたときに、もう一つの心配が出てくる。


このまま放置したら、この女性は脱水症状とか、熱射病になってしまうのではないか?


このままではいけない。

そう思った。


俺は何とかこの女性が安全に過ごせるところを考えた。


このまま警察に通報しても解決しないと考える。


何故か?


それは、この女性が水着とか衣服をつけていないからだ。


全裸でもない。


でも、見たこともない黒い布を巻いている。


その布は少し湿っていて。

女性にぴったりと張り付いている。


どう見ても、普通の人じゃない。

もしかして密入国?

はたまた何かの事件の現場を自分は見ているのではないか?


そんな心配ばかりが自分の中を駆け巡っていく。


そんな心配押しながら女性を見ていると、女性の意気が徐々に上がっているのに気がつく。


もしかして熱射病になりかけているのかもしれない。


どちらにせよ、このままだったらこの女性にとって良くないのは明らか。


だとすれば自分にできることはただ一つだけ。


この女性を一時自分の連れて帰って、寝かせることだけ。


覚悟を決めて女性を抱きかかえる。


思ったよりよりも軽く、手に感じる細くてやわらかい感触。

男として、どことなく色っぽさを感じてしまう。


でも今はそんなことを言っている暇もない。


抱きかかえて、ただひたすら自宅を目指して歩く。


歩くこと10分。

ようやく自宅にたどりついた俺は鍵を開け。


女性を抱えたまま家の中に。


布団を出したりしている暇もないので自分の部屋のベッドに女性を寝かせると、タオルケットをかけ。

エアコンのスイッチを入れる。


やわらかい布団に横になって少し安心したのか、すやすやと寝息を立て始める。


少し安心した。


もし密入国者とかだったらおきてから何語を話すかは分からない。

でも、それでも良いかなと思える。


どこの国の人だろうと、あのまま見殺しにはできなかったし、これでよかったと自分のやったことは良かったことだと思った。


夏の日差しを浴びて少し熱くほてっていた女性のおでこに濡れタオルを置いて。


仕上げもばっちり。


これであとは落ち着いたら、警察に行ってもらうなりしてもらえば良いだろう。


でもなんだか、安心したようにスヤスヤ眠っている女性を見ていると自分も眠くなってくる。


寝ちゃいかん。

寝ちゃいかん。


もし、急にこの女性の容態が悪くなったらどうするんだよ俺。


そんな風に起きていようとすれば起きていようとするほど。

眠気が襲ってくる。


寝ないように。

寝ないように。


女性を見つめれば見つめるほど。

意識がまどろんで、眠りに入って行った。


………………


…………


……


【???】

「さ、さ、さ、ささっ、恵……なにやって!!?」


誰かの焦った声。

高くて、引きつった声。


多分お姉ちゃん。


渡辺みやの声だと思う。


【みや】

「ふ、ふ、ふ、ふふっ、不潔だよ!!最低!!」


悲鳴に近い声。

みやは何をそんなに騒いでいるのか?


別に俺は何もしていない。

眠っているときくらい、そっとしておいて欲しい。


眠い目をこすりながら、みやを確認する。


【恵】

「姉ちゃんどうしたの?」


【みや】

「どうしたのじゃないわよ、あんた学生なのにこんなことして……いやそういう問題じゃなくて、彼女がいるんだったらちゃんと私にも紹介しなさい……じゃなくて……この状況の説明をしてちょうだい」


【恵】

「状況?俺は今、目が覚めた、それだけだとおもうけど」


【みや】

「そうじゃなくて、後ろの……彼女……さん?」


家の姉は本当にボケてしまったのだろうか?

俺に彼女がいないのは知っているはずなのに、わけが分からない。


言われるがまま、後ろを振り向く。


そして、すべてを思い出す。


【恵】

「いえ、あの、これには深い事情がございまして、お姉さま、それは誤解というものでして」


【みや】

「誤解も何も……この状況をどうやって誤解できるのよ?」


たぶん確実に姉は勘違いをしている。

俺はこの女性と関係を持っていると思いこん絵いるに違いない。


女性も女性で寝ていると気に色々動いたのだろう。

タオルケットがちょうど胸から太ももの間にしかかかっていない。


しかも、もとから身に着けていた黒い布はタオルケットの下にかくれている。

見方によっては俺のとなりに、全裸の女性が寝ているように見える。


そしてみやは俺とこの女性がそういうことをしたのではないかと勘違いしているのではないかと受け取ることができる。


【恵】

「いいか、姉ちゃん、この人は拾ってきたんだ」


【みや】

「ま、ま、ま、ままっ、まさか拉致してきたとか?」


【恵】

「いや、まて、意地持でも犯罪にしようとしてないか?」


【みや】

「今だったらまだ自首すればまだ罪が軽くなる……ごめんね……お姉ちゃんは恵にそんな性癖があるなんてちっとも……」


【恵】

「おーい、ちょっと?」


【みや】

「いい恵、絶対にこの娘殺しちゃだめよ?大丈夫お姉ちゃんが一緒に警察に」


【恵】

「だからちげーって」


【みや】

「何があっても、恵はあたしの弟だからね、お姉ちゃん、見捨てたりしないから……」


【恵】

「い い か ら 正 気 に な れ !」


パニックになってオロオロしているみやの肩をつかんで揺さぶる。


【みや】

「ひいぃっ!!わたしまで消されるっ!!」


【恵】

「いや、やらないから」


【みや】

「見てないっ!!お姉ちゃん何も見てないから!!」


どうせすれば良いのか、頭をかかえる。

どうやればさっきの状況を説明できるのか。


一人で錯乱して慌てているので、しばらく放っておくことにする。


【みや】

「でも、遺族に賠償請求とかされたら経済的に……」


とか


【みや】

「いっそ死んでいるんだからこのまま埋めちゃえば……」


てな感じで勝手にこの目の前の女性を勝手に殺している。

とりあえずはちゃんと話が聞けるようになるまで、放置を試みる。


ぼんやりとみやを眺めていると、トントン、トントン。

と、肩をたたかれる感覚。


何事かと思って後ろを振り返ると後ろには今日拾ってきた女性が目を覚ましている。


【恵】

「おはよう、大丈夫?砂浜に倒れてたけど、痛いところとかない?」


【女性】

「…………(パクパク)」


何かを言おうと口を開く女性。

でも、その声は欠かすかにしか聞こえない。

正確には何も聞こえない。


【女性】

「…………」


女性は困ったような顔をして黙り込んでしまう。


【恵】

「もしかしてのどが渇いてるのかな?麦茶もって来るね」


俺はそういいながら台所に向かう。


姉の目に起きた女性は入っていなくて。

自分が部屋を出て行くときもブツブツ何かをつぶやいていた。


飲み物を持って帰ると。

妙に静かになっていた。


黙って女性とみやが見詰め合っている。


おそらく、今までかけて、この女性が生きていいると認識したんだろう。


持ってきた麦茶を注いで女性に差し出す。

女性は何も言わずごくごくと麦茶を飲み干して、トレイの上にグラスを返すと。


布団の枕元においてあるメモ帳を指差している。


もしかしてこれが欲しいのかなとさとり。

メモ帳とその近くにあったペンを女性に渡す。


さらさらと日本語を書いていく女性。


そして一文書き終わったところで、俺とみやに見えるようにそのメモ帳を見せた。


【女性】

『いたいところは無い、海辺からたすけてきてくれたんだね、ありがとう』


【恵】

「どういたしまして、それなら良かった」


【女性】

『わたしは、あおい、わたらい あおい』


【恵】

「そっか、あおいちゃんって言うんだね、いきなりこんなところに連れてこられてびっくりしたと思うけど、あのままだと熱射病になると思ってさ、少し強引で申し訳ないけど、うちまで運んだよ」


【あおい】

『ありがとう、それで、わたしのことなんだけど、少し話してもいい?』


【恵】

「うん」


【あおい】

『ここよりもずっとずっと遠いところに住んでたの、そして今から帰るのはとっても難しそうなの』


【恵】

「うん」


【あおい】

『それにわたしは話せない、声が出ない、だからこうやって何かに書いて話すしかない』


【恵】

「うん」


【あおい】

『家に帰る方法が見つかるまでここでめんどうを見てもらいたいんだけど、できるかな?』


俺は迷わずうなずく。

みやの意思を確認するたにみやの方を見る。


【みや】

「それなら、問題ないんじゃないの?父さんも母さんも再来月にならないと帰ってこないし、それにあおいちゃんは帰り方も分からないところに住んでるんでしょう?だったら余計に見捨てたりなんかできないし」


これで意見はまとまる。


こういう時は両親がどっちも都会に出稼ぎに出ているのが有利だなと思った。


【恵】

「じゃ、姉ちゃんもいいみたいだし、しばらくうちにいてもいいよ」


【あおい】

「………(ニッコリ)」


ここにいれる事で、落ち着いたのか、安堵の表情をみせるあおいちゃん。


【あおい】

『よかった、ありがとう』


【恵】

「ところで、あおいちゃんはやっぱり着替えとかは持ってないよね?」


ニッコリ笑うあおいちゃんに対して今思っている疑問をそのままぶつけてみる。


【あおい】

『きがえ?』


聞きなれない単語なのか、あおいちゃんは首をかしげている。


【みや】

「あたしのでよかたら着てみる?その布一枚だけだったらさすがに寒いでしょ?」


【あおい】

『きる?』


【みや】

「よし、わかった、あおいちゃん、お姉ちゃんとちょっと部屋に行こう」


【あおい】

「…………(コクコク)」


みやがあおいの手を引いて俺の部屋から出て行く。


少し寂しい気もしたけど、さすがにこの場であおいを着替えさせるのもおかしな話だ。

こういうときだけはなんだか男子に生まれて損をした気分になる。


それでも、着替えたあとのあおいが新鮮に見えるのは男子の特権。


そんな良く分からない楽しみを持ちながら、あおいがからにしたグラスを片付けに台所へと戻っていく。


台所でグラスを洗い、濡れた布にかけたタオルケットと、あおいが寝ていた布団がが湿っていることに気がついた。


時間はまだ午後3時。

布団は今から干せばそれなりになるだろうし、タオルケットは洗濯機に入れれば何とかなる。


そんなことを考えながらテキパキあおいが濡らしたあとをを片付ける。


すべての作業を終えて、茶の間に戻ってくると、そこには出かける前の二人がいた。


【みや】

「それじゃあ恵、あおいちゃんとちょっと洋服買いにむらしままで行ってくるから」


【恵】

「うん、気をつけてね、あと気がついたんだけど、何か書くものと、スケッチブックでも買ってくればいいんじゃない?あおいちゃんが話しやすいように」


【みや】

「そうね、近くの雑貨店に行ったときにでも考えるわ」


【恵】

「それじゃあいってらっしゃい」


二人を見送る。


みやとあおいちゃんはおそろいの制服を着て出かけていく。


なにやら色々話しているのをみながら。

できるだけ話は聞くまいと思っていたけれど、不意に出かける間際の


【みや】

「ちょっとブラがきついかもしれないけど、新しいのを買うまでガマンしてね」


【あおい】

「…………(コクコク)」


その会話だけ耳に入ってしまった。


想像しちゃいけない、そんな変態なこと考えちゃいけない。

そう自生すれば使用とするほど、どんどん度絵くらい大きいんだろうとか真剣に考えている自分がいた。


いかんいかん。

今日であったばかりの女の子に俺は何欲情してんだ。


とか自分で自分を説教しつつも、ナイスバディーなあおいちゃんを想像しては、一人で悶々とするしかできなかった。



みやとあおいちゃんが買い物に出て約2時間。

少し湿り気を帯びていた布団は完全に乾いていたし。


洗濯機で選択したタオルケットは夏の日差しに照らされて、もう少しで乾きそうなくらいまで乾いていた。


何とか頭の中の助平な心も排除され、いつもの夏休みの平穏さを取り戻していた。


ぼんやりと夕方のニュースを眺めながら、二人の帰りを待っている。


ガラガラと音を立てて打ちの玄関が開く。

それと同時に二人の声が聞こえる。


どうやら帰ってきたようだった。


みやは買ってきた衣類を自分の部屋においてくるようにあおいちゃんに指示を出す。


みやはというと、6冊のスケッチブックとマジックペン6本を持って茶の間に来た。


俺を見るなりニヤニヤしながら


【みや】

「喜べ愚弟よ、あおいちゃんは大きかったよ」


いきなりそんなことを言ってくる。


【恵】

「そんなこと聞いてないだろ?一体何の話だよ?」


【みや】

「またまた~そんなこと言って本当は気になってるんでしょう?」


なんだか図星をつかれているようで悔しかったので知らないフリをしてみる。


【恵】

「べ、別にそんなんじゃ」


【みや】

「あの可愛いあおい嬢のカップ数だぞ?聴きたいとはおもぬのか?」


なぜ侍的口調?とか思ったが、あえて突っ込みはしない、悔しいけれど、反応せずにはいられなかった。


【恵】

「そ、それは……」


【みや】

「やっぱりきになるんでしょ~、すけべぇ~」


【恵】

「べ、別にそんなんじゃないんだからねっ!!」


精一杯否定してみる。

でも、それは強がりというもので、みやには一瞬で見破られていた。


【みや】

「もぉしかたないなぁ、数字だけ教えてあげよう……えっとねぇ、アンダーとトップの差が19.5cmだった」


【恵】

「そんなの言われたって知らねぇよ、何カップって言われないと……」


【みや】

「ググれ」


【恵】

「姉上、そんなごむたいな」


【みや】

「そうすれば、わかるよ?」


【恵】

「検索窓に『ブラジャー カップ』と入力しろというのか」


【みや】

「うん☆」


【恵】

「鬼姉め」


それだけ言って、あおいちゃんの様子を見に行くみや。


鬼め。


携帯電話で検索窓を開きつつ。

その単語を入力しようと試みるが、やはりできない。


数十分悶絶しながら、携帯電話の画面を見つめる。


結局諦めてテレビの電源を入れる。


ぼんやりとお笑い番組を眺める。


それで忘れようとしても、心のどこかで気になっているあおいちゃんのカップ数。


まったく、俺は本当に変態だなと自分で自分を罵倒しつつ。


邪念を払おうとしようとしていたとき。


あおいちゃんが着替えて茶の間には入ってきた。


淡い水色のワンピースを着て、テレビの前に座る。


【あおい】

『箱の中で人がしゃべってるけど、あれは何?』


さっそく、買ってきたばっかりのスケッチブックを使って俺に質問してくる。


【恵】

「これわね、テレビって言っていろんなものが見れる機械なんだ、あおいが住んでたところにはなかったの?」


【あおい】

『見ててもいいの?』


【恵】

「いいよ、好きなの見ればいい、このリモコンって言うのの数字を押すと色々番組が変わるよ」


俺はそういいながらボタンを押して変えてみせる。


その中で一局だけ動物の特集している局がある。


【あおい】

『あ、いまの、かわいいの』


どうやらあおいは猫が気に入ったらしい。


俺はテレビを珍しがるあおいちゃんを見ながら不思議な感覚を覚えていた。


【みや】

「恵ーお皿とか出すのてつだってぇ」


台所からみやの声。

俺は夕飯のしたくを手伝うことにする。


今晩はみやの得意料理。

親子丼みたいだ。


ダシの煮えるいいにおいをかぎながら。


盛り付け、配膳を手伝った。


テレビに夢中になっているあおいちゃんを見ながら夕飯を済ませる。


もちろん、箸は使えそうにもないから、あおいちゃんだけスプーンになった。


夕飯の食べ終わっても、ずっと熱心にテレビを見ているあおいちゃん。


その熱心な横顔を見ながら、この娘がいつか家にちゃんと帰れればいいな。


そう静かに願ったのだった。

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