第17章 作戦会議
警察トップのオーウェンが死んだことは、すぐに全ての軍警察に伝わった。Zたちエンペラーハウス討伐部隊は足止めするしかなくなった。
ドローンジェット機は空中でピタリと静止した。隣の窓からはⅡとⅣのドローンジェット機が同じように止まっている。
「オーウェンが死んだだと? どういうことだ」
「しかも拳銃自殺だそうだ。信じられない」
「まだ解析が済んだわけじゃないだろ。とにかくそこまで全軍警察職員は待機してくれ」
マイクロチップ内でⅡとⅣが軍警察本部とやりとりしている。そこにZは加わった。
「ここで止まっているのは時間の無駄だろ」
「Zよ。オーウェンなしでは最終処罰実行決定権なしで戦うようなものだ。それでは判断の部分で団結できない」
「決定権? その必要はない。俺たちが進むべき一番最適な道は今すぐにでもエンペラーハウスのボスであるテンオウを逮捕することだ」
Zは熱意を込めてそう言った。ほんの一瞬だけマイクロチップの世界が静まりかえる。
「Zの言うとおりだ」
Ⅱのリーダーが賛同を示した。
「……だな。オーウェンは俺たちが立ち往生することを望んでいないはず。いや、きっとそうだ」
Ⅳのリーダーもそう言って理解を示した。
「では決まりだ。おい軍警察本部。今の話聞いてただろ。俺たち軍警察特殊部隊は止まらない。エンペラーハウスを倒しにいく」
「仕方がないな…。分かった。君たち特殊部隊だけそれを許そう」
軍警察本部の男はそう言って一方的に通信を切った。Zもそれを確認して、すぐに別の通信に移った。
「おい、出発だ」
ドローンジェット機は再び動き出した。
テンオウは考えていた。自分の頭に入ったデスエクスの力は本物だ。外は赤い雨が降り始めている。すでに山に生えている木は見渡す限り酸の力で枯れ果てている。その内この本拠地の天井や壁が解けるほどの強い酸が降り注ぐかもしれない。その前に全てを片付ける。
「まさか本当にデスエクスで、直接手を下すことなく人を殺せるとはな」
「なんだ今まで信用してなかったのかよ。次はだれを殺したい?」
スズラカミは急かすように言った。
「次は政治家だ。ワシのことを嫌う政治家は皆殺しだ」
「デスエクスには過去の記録だけでなく脳の本来の記憶も書き換える力がある。もうだれもあんたを止められないだろうな」
スズラカミはどこか楽しそうな様子だった。
「そうだスズラカミ。ワシが夢見ていた強い日本を作るにはデスエクスで腐った政治家でありながら権力を持ったあいつら…ワシが操るしかない」
テンオウは有頂天にたった気分になった。そこに部下の一人がやってきた。
「テンオウ様。つい先ほどオーウェンが死んだことが全国ニュースになりました」
「そうか……クックック…だっはっはっはっはっ。素晴らしい。さぁ恐怖しろ。デスエクスの力の前に屈指るがいい。おい、このモニターにそのニュースを流せ」
テンオウは部下に命令した。
すぐにモニターが切り替わり、ニュースキャスターが真っ直ぐこちらを向いている。
「軍警察トップのオーウェンの死亡が確認されたということですが、一体何が原因だったのでしょうか?」
「ですからoは秘密裏にとある政治家から賄賂を受け取っており、オーウェンの脳内からはその政治家に対する告発動画が残っていました。今回はそのトラブルに巻き込まれた模様です」
「なんと……それは由々しき事態ですね。日本の治安を守る軍警察トップと政治家がそのような行いをしていたというのは、日本全体で考えるなければならないでしょう」
ニュースキャスターは深刻な顔をしてそう言った。
「そして今入ってきたニュースです。オーウェンと関わりがあった政治家の家に今、ニュースリポーターの澤内さんがいるとのことです。早速現場と繋いでみましょう。現場の澤内さん?」
「はい、こちら澤内です。ニュースをご覧の皆さん。なんとその政治家はまもなくここに来るとのことです。あ、あの車から降りてきたのがそうですね。果たして圧力をかけていのは本当なのでしょか? 早速詳しく聞いていきたいと思います」
テンオウは満足そうにモニターを眺めた。
「次はこいつだ。ここから一気に日本中をパニックに陥れる」
テンオウは有頂天になっている。
スズラカミはそんなテンオウをバレないように睨みつけた。
その後、部下とスズラカミに部屋を出ていくように言った。それはテンオウが一人で思考を整理するためでもあった。
赤い雨が地面遠打つ音に意識を向ける。デスエクスを見せれば、過去の記録だけでなく、記憶さえも書き替えてしまう。もはや現実と仮想空間の区別はつかなくなり、誰もが疑心暗鬼に陥るだろう。
テンオウはデスエクスを再び起動した。政治家の名前を書き込む。すぐに脳の中に侵入し、瞬く間に脳のマイクロチップの主導権を自身のものにした。偽の記録を流し、やってほしい行動のコードを送り込む。これで準備完了だ。
「検索ルートはこれか……、おい聞こえるか」
別部屋に移動した部下話しかけた。
「はい」
「次の対処をロックした。この政治家に対する全ての情報をそちらに送る。お前らも別部屋からニュースで見ておけ。これから起こるカオスを」
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