第15章 破封 2
互いの弱点は分かっていた。それが、逆に苦戦を敷いている原因でもあった。スズラカミとジョウトは既に20分以上は戦っている。その間に他の軍警察とエンペラーハウスも混ざり合い、混沌として来た。
弾丸や刃物の擦り傷が増えていく。お互いに大きな隙を作らない。だが、スズラカミには何故か自信があった。
戦いというのは最後は知っている方が勝つ。それは戦闘の強さだけじゃない。例えばデスエクスについでだ。ダークエクスを使い、軍警察の内側に入らないと手に入らない情報。それらをマイクロチップという機械ではなく、自分の意思で思考する。それが正しい人としての生き方だ。
スズラカミは決意した。元ゲーム仲間といえども、自分の目的からを塞ぐ者には容赦しない。
マイクロチップハックとジャミングを同時に起動した。それからのスズラカミは相手に一切の余裕を与えなかった。脳に幻覚を流し、マイクロチップとの繋がりを妨害する。
ジョウトも当然、反撃しようと試みた。しかし、マイクロチップそのものをショートさせられる。
「ああ……俺の…マイクロチップが……」
コンピュータから得られる情報が断絶されたジョウトの頭脳は使い物にならなくなっていた。足の動かし方。手の動かし方。それすら思い通りに動かない。
脳から筋肉に送られる電子信号自体を機械によって補っていた結果、長年慣れた物を外す事で上手く機能しなくなる。
「どうだ、マイクロチップが使えない気分は。誰もが政府のマイクロチップに依存しすぎた」
スズラカミはそう言って銃口をジョウトに向けた。
「自分の脳の使い方を忘れた哀れな人間に死を」
何の感情もなく引き金を引いた。ジョウトが倒れる様をゆっくりと記憶した。これが俺の戦い方だ。そう何度も心の中で呟いた。
ジョウトが死んだことで一気に戦況は軍警察側に傾いた。エンペラーハウスのメンバーたちは次々とその場で殺されていく。
「よくやったぞスズラカミ。ジョウトを倒すとは大したものだ」
Zのあらい息遣いが聞こえてくる。
「そっちはどうだZ?」
スズラカミは聞き返した。
「ああ、敵は逃走中だ。だが、悪を逃すわけには行かない。俺たちはエンペラーハウスを追う所だ」
「そうか……なら俺が代わりにデスエクスの情報を集めてやる。幸いエンペラーハウスが残した試作品の電気羊がある。これを使えば情報は抜き取れる筈だ」
「なら、頼んだ。俺は殺処分を優先する」
そう言ってZからの連絡は切れた。
スズラカミは背負っていた鞄を下ろした。エンペラーハウスの試作品の中身を理解するのは一瞬だった。ほとんど同じ機能だったし、自分が元マイクロチップメンテナンス屋だったからだ。
ジョウトの頭の中からマイクロチップを抉って取り出した。そこに電気羊を当てがう。
ジョウトが生きて行く中で得た全ての情報が、スクリーンに映し出される。その中で直近の不二僧院での戦闘を見た。書いているパスワードの文字列を記録する。
まだ最後まで終わっていない。スズラカミは残りの
自分は戦闘に慣れすぎたのだとふと気づいた。人を殺してもそれは己の目的の為だと信じ込んでいる。側から見たらただの犯罪者だろう。
だが、この国の人々をマイクロチップから目覚めさる為にはもうその方法しかない。スズラカミは
中には誰も居なかった。まるで別世界。あまりにも違いすぎる。違和感。スズラカミは何かに気がついた。
突然、通ってきた門が閉まった。意識的にスズラカミはその方向を向いた。だが、それが仇となった。背後から自動歩行信号技術を使って近づいて来た男に対応できなかったからだ。
全身が痺れる。首元にスタンガンを当てられた。スズラカミには背後にいる男が誰だか何となく分かっている。スズラカミは冷や汗をかいた。
「ワシの計画を邪魔していたのはお前だな。やっと見つけた」
その言葉と共に空が光った。何もない青い背景から何かが浮き出て来る。
「こいつはエンペラーハウスで開発したステルスドローンだ。お前にはこれに乗ってもらうぞ」
ステルスドローンからロープ一本降りて来る。男はそのロープに捕まった。
「俺をどこに連れて行く気だ。エンペラーハウスのボス」
「ボスなら行くところは一つだろ。ワシのアジトだ」
スズラカミとエンペラーハウスのボスであるテンオウを乗せたロープは固定された状態となった。そのままステルスドローンまで上昇して行く。下には沢山の死体と破壊された僧院の残骸が見える。
ステルスドローンの存在に気づいた軍警察の一部が地上から発泡する。だが、すぐに空と一体化した為、狙いを定められなかった。
スズラカミはテンオウに連れられて一つの椅子に座らされた。いまだに体が痺れる。歩くのも一苦労だ。
天からヘルメットが降り降りて来た。エクスで見た映画で似たようなシーンがあった事を思い出した。これから始まるのは拷問というやつだろう。
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