第197話 後片付け
結果として、アキヒサは15匹の蛙を仕留めた。
その仕留めた蛙を、シロがペシペシとして死亡確認をしている。
デカい蛙が15匹も周囲に転がっている様は、なかなかに圧巻というか、なかなかに気味の悪いものである。
あまりずっと見ていたくないものなので、この蛙たちをサッサと鞄に仕舞ってしまう。
「やっぱりすごいな、妖精の鞄」
「一体どうやって手に入れたのかしら、店に売っているわけでもないのに」
ジムとキャシーが、アキヒサの片付けの様子を見ながらヒソヒソしている。
どうやら彼らは妖精の鞄に馴染みがないらしい。
いや、ひょっとしてこの二人の反応の方が普通であり、アキヒサがこれまで出会った妖精の鞄にあまり驚かなかった人たちは、むしろ特殊な例外な可能性もある。
――うん、やっぱり人前で使って見せるのは控えよう。
今更だが、アキヒサは思うのだった。
それはともかくとして。
蛙はどうやらこれで打ち止めらしく、沼は静かなものである。
アキヒサは沼に近付くと、そうっと中を覗き込む。
しかし、泥が溜まってなにも見えなかった。
「こんなに蛙がギュウギュウになっていたら、そりゃあ汚い沼になるよなぁ」
それなりの広さのある沼だが、それでもあんなにデカい蛙が15匹も詰まっていたら、狭かったのではないだろうか?
ジムとキャシーは「汚い沼」と認識していたので、この沼に蛙たちが棲みついたのは、別にリュウの移動の影響というわけではないだろう。
なにかの拍子にここに棲みついた蛙が、数を増やしていって今になったのかもしれない。
「ちょっとはマシになるかな、『クリーン』」
アキヒサはひっそりと沼の水を洗浄する。
すると微かにだが、沼の臭いが和らいだ気がする。
効果があるのがわかったところで、それから数回『クリーン』をかけると、水の透明度が復活して、「ちょっと濁った水」程度になった。
――このくらいなら、まあいいかな。
アキヒサは沼の水を掬って確かめる。
泥水ではないので、中に入って薬草採取もできるだろう。
というか、ひょっとして元はかなり綺麗な泉だったのではないだろうか?
「泥水だったのに」
「なんで急に臭くなくなったの?」
沼の変わり様に、ジムはポカンとした顔をしていて、キャシーがアキヒサを睨むように見てくる。
「これも秘密技の一つだよ」
アキヒサがニンマリとして教えてやると。
ズズッ、ズズッ!
遠くから重い物を引きずるような音がした。
「「……!」」
アキヒサには慣れた現象だが、悲鳴も出せないで怯えるジムとキャシーは、この短時間では未だ慣れないらしい。
果たして現れたのは、大きな鹿っぽい魔物に埋もれたレイであった。
そのレイを鹿の下からなんとか救出しようと、ダンが鹿の頭を懸命に持ち上げようとしている。
しかしそのせいで、鹿の頭が妙にリアルに動いていて、まるでまだ生きているように見えて余計に怖いというのは、言わない方がいいだろうか?
「お帰りレイ、思ったよりも大きかったな」
「ん!」
アキヒサが声をかけると、レイがムンと胸を張った。
「ダンくんもご苦労様。
重かっただろう?」
アキヒサがこちらも労わると、ダンはふるふると首を横に降ってくる。
「レイくん、力持ちだね」
そしてそんなことを言ってきたダンが妙にキラキラとした目をしている。
――「自分もこうなりたい!」とか思われても困るけど、まあ憧れる分にはいいかな。
レイの怪力はスキルの影響なのだから、真似できるものではない。
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