第161話 負けん気強め

「レイ、こっちにおいで!」


アキヒサが慌てて呼ぶと、レイは大人しくトテトテと駆けてきた。

 まぶしかったようで目をぎゅっと閉じているが、見ていなくてもアキヒサの方へ歩いてきたのはさすがである。


「目、痛いか?」


「ちかってして、ぎゅってなった」


アキヒサが問うのに、レイがそう答える。

 やはりあの光がまぶしすぎたようだ。


 ――まったくもう、先にちゃんと言ってくれよ!


 アキヒサはそう思うものの、リュウは自分がわかっていることは他人もわかっていると考えている節がある。

 そのあたりの認識のズレを矯正しなければならないのだろう。

 それは後でやることとして、アキヒサはとりあえずレイの目に『治癒』をかけつつ、状況を探る。

 No.1からも光が発せられており、両者の光が戦っていることでの、あの雷現象のようだ。

 どうやらリュウの干渉にNo.1が反抗しているらしい。

 しかも、次第にリュウの機械の方が押し負けそうになっているではないか。

 この状況に、リュウが珍しく舌打ちをした。


「もしや、アクセスポイントの出力を使っているな?

 そうであれば早く決めねばこちらが不利」


リュウが懸念する通り、こちらはリュウの自力、あちらは外付け動力があるのであれば、我慢大会が続くと先に息切れをするのはこちらだろう。


「鬼神よ、出来ぬか」


目が治ったレイに、リュウが冷たく問う。


「……できるもん」


これにレイがムッとした顔で言い返してリュウを睨む。

 レイはどうやら「なんだ、出来ないのか?」みたいに言われたと感じたようで、反発心がムクムクと沸いたようだ。

 レイが嫌いなリュウに見下げるようなことを言われて、カチンと来るのも無理はない。

 あの言い方はレイにやる気を再び出させるためのわざとなのか、そうではないのか。


 ――いや、リュウさんのことだから、普通に言ってそう。


 アキヒサがそんな結論に至ったところで、レイはまぶしいので目をぎゅっとしたまま、No.1へと突進する。

 これは気配察知の達人であるレイだからできる芸当だろう。

 No.1はリュウの機械への対処で精一杯のようで、レイへの光線攻撃は来ない。


 ガァン!


 初めてNo.1へ攻撃が当たり、No.1の身体が吹き飛び、リュウが造った白い壁に激突した。


「よし! いいぞレイ!」


アキヒサも思わず拳を握って応援すると、レイはさらに追撃する。


 ガギィン!


 レイの攻撃がNo.1の胴体部分になっている内臓のようなものを吹き飛ばして風穴を開けた。

 いや、おそらくはNo.1が完全体であったならば、レイとてあのように簡単には破壊できなかったのだろう。

 なにしろ以前には、No.1の身体をそのまま流用されたというリュウの鱗一枚を割るにも、レイはかなり苦労をしていたのだ。

 というか、内臓などの脆い部分を使っていたから、あの頑丈な容器に入れていたのかもしれない。

 ともあれ、壊すのは案外早くできそうだと、アキヒサが楽観視していると。


 ボコボコボコ……


 なんと、レイが開けた穴が、徐々に塞がっているではないか。


「再生するのか!?」


アキヒサが驚く目の前では、レイもこの様子を薄目で見て戸惑うように首を傾げている。

 これまでこんな風になる敵なんていなかったので、「なんで?」となるのも無理はない。


「ふむ、再生速度が遅くはあるが、鬼神の今のナリではやはり足りぬか」


これを見て、リュウが口惜しそうに唇をかむ。

 リュウの今の発言だと、本来のレイならばNo.1は再生が完全に止まるのかもしれない。

 そしてリュウが本来の姿で踏みつぶしてもダメだという意味が、これでわかった。

 どんなに小さな欠片にわけても、再生されればいずれ元に戻ってしまうだろう。

 それで言うと、レイは力が足りないにしても再生が遅いのは確かなのだ。


「レイ、まずは小さく分けてから、元に戻らないように全部ボコボコにしちゃえ!」


「ん!」


アキヒサが助言すると、レイは再び攻撃を繰り出す。


 ガガガガァン!


 レイが繰り出した連打で、胴体のようになっていた部分がまとめて吹き飛ぶ。

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