第152話 いつの間にか
「どうしたレイ、なにかあったのか!?」
アキヒサは「異常事態か!?」と一瞬身構えるが、こちらを呼んでいるレイには特に慌てるような様子はない。
いや、元々レイは慌てることなど滅多にせず、唯一慌てたと言えば、アキヒサがリュウにドラゴンの身体でうっかり尻尾アタックを食らった時くらいしか記憶にないのだが。
ともあれ、「コイコイ」を続けるレイに、なにか珍しいものでも見つけたのかもしれないと思い、アキヒサはそちらへ小走りに駆け寄る。
「お、広くなったな」
レイがいる場所の先は、小さなホールのようになっていた。
そしてそのホールの真ん中に、一際大きなガーディアンが倒れている。
その大きなガーディアンはこれまでのものと違って、銀色のスラっとしたボディで、いかにも特別感があるものだ。
――なんだか中ボスっぽいな。
そう思ったアキヒサは正しかったようだ。
「これは指令機だな。
これが出てきたということは、このあたりのガーディアンはあらかた片付けたらしい」
リュウがそんなことを言ってきて、レイがいつのまにかボス戦をこなしていたことが発覚した。
「おおきかった」
レイがそのガーディアンを指さして言ってくる。
レイは重いものはどんなものでもどんと来いなのだが、大きくてかさばるものは体格的に持ち運べないのだ。
「そっかぁ、確かに大きいもんな。
レイ、コイツ強かったか?」
アキヒサは指令機を鞄に仕舞いつつ、レイに尋ねてみた。
「……?」
するとレイはなにを問われているのかわからないといった表情である。
レイにとってこの指令機くらいは強い弱いという以前に、単なる障害物でしかなかったのかもしれない。
ボスと下っ端の違いが全くわからないままに撃退された、指令機がなんだか可哀想な気もする。
しかし中ボスというものは、それこそRPGだと中盤くらいに出てくるから、中ボスと呼ばれるのである。
ということは、アキヒサたちはこのダンジョンめいた地下道をかなり進んだということだろうか?
「今、どこらへんだ?」
アキヒサは現在位置を確認しようと、ステータスパネルを出して地図を表示させる。
幸い迷路になっていない一本道なので、地図で道順を確認するまでもなかったため、最初に確認して以来消していたのだ。
ここがリュウの推測する通りに研究所だとしたら、迷路のようにしても自分たちが無駄に迷うだけだろうし、分かりやすい構造になるのは必然だろう。
入口のセキュリティさえ厳重にしてしまえば、外部からの侵入は防げるのだ。
生体兵器たちにさえ気付かれなかったら、入口の安全は保たれるで、これまで施設の存在をリュウが知らなかったくらいだし、かつてはよほど厳重に管理されていたのだろう。
――隠し研究所っていうだけで嫌な予感しかしないんだけど、どうか怪しいモノなんてなにもない、空振りに終わりますように!
アキヒサは悪あがきのようにそう祈りつつ、地図を見る。
「え~っと、こっちから来たから、ココがアマンザさんの教会で、結構進んだなぁ」
ついでに、「探索」スキルも発動させてみる。
最初にこのスキルを使うと敵反応で視界全体がごちゃごちゃしていて眩かったので、速攻で切ったのだが、敵反応も減ってかなり見やすくなっていた。
そうしていると、気になる反応を見つけてしまった。
「地図のこの大きそうな建物が、金ピカかな?
たぶんその下あたりに、真っ赤な反応があるんだけど」
そう、探索スキルが示す中に、いかにも要注意と言わんばかりの印があるのだ。
通常ならばその印の正体も同時に知らせてくれるのに、何故か文字化けしていて読み取れない。
アマンザが言っていた、金ピカにあるという『神が与えし恩恵』とかいう扉があるという、その場所である可能性が高いだろう。
――金ピカ、やっぱり怪しいことをしていたんだな!
アキヒサは「はぁ~」と大きくため息を吐いた。
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