第151話 やらかして世界崩壊

 そんな代物を造ってしまったならば、そうなるのはある意味必然だと思うのは、アキヒサだけだろうか?

 「完全なる存在」とやらを目指し、思った通りの成果にはっちゃけたマスターとやらが、「お前は神だ!」とか本人に言っちゃっていたら、「そうか、私は神様だ!」となるだろう。

 「鬼神」と名付けたレイがヤンチャだった事といい、マスターさんとやらはそのあたりの育て方がダメダメっぽい気がする。

 マスターは造るのは優秀でも、育てる能力がなかったのではないだろうか?

 それはともかくとして。

 こんなNo.1のことを、マスターもさすがに許せなかったようで、No.1を不良品として廃棄しようとした。

 がしかし、相手は「完全なる存在」の「神」である。

 そう簡単に廃棄されてはくれなない。

 「神」を名乗って当時の世界を支配し始めていたNo.1は、世界に生きる人間などの生き物を動員して、マスターに抵抗したという。


「結果を言うと、No.1の廃棄は上手くいったものの、世界が滅んだな。

 次に造られた我に下された使命は、世界の再建だった」


「……なるほど?」


世界が滅んだことがモノローグでサクッと語られたが、かなりの大事である。

 そして生体兵器の二人目が生産系で作られたのは、必要に迫られてのことだったらしい。

 No.1の素材はリサイクルされたものの、また同じ失敗を繰り返さないようにという反省から、素材とスキルは細かく分けて、それぞれ別々に生体兵器を造ったのだそうだ。


「中でも、我が一番ぞんざいに造られたな。

 なにしろNo.1の縮小版をそのまま使われたのだから」


「……ってことは、No.1がリュウさんみたいなドラゴン型だったのか?

 あ、だから鱗か!」


アマンザが持っていたペンダントの素材の由来に思い至り、アキヒサは納得する。


「No.1の素材が大き過ぎたのと、討伐の最終局面が大混乱だったのとで、本当に素材の全てを回収できたか不明であった。

 ゆえにそうしたNo.1素材の回収のために、鬼神が作られたというわけだ」


リュウの説明に、アキヒサは納得である。

 世界を滅ぼしてしまうレベルの相手に立ち向かうには、あの身体能力もオーバースペックというわけではないかもしれない。

 ただ繰り返すが、マスターが育て方を間違えてしまっただけで。


「そんな物騒なもの、ないといいんだけど」


アキヒサが思わずそう不安を漏らすと、リュウが「そうだな」と同意してきた。


「あの鍵程度ならばいいが、ここにもっと大きな『神』の欠片があるのだとしたら、下手をうてば大陸まるごと吹き飛ぶぞ」


そして恐ろしい仮定をしてくるが、怖いので脅さないでほしい。

 いや、本人には脅す意味合いなどなく、純粋に真実を述べているだけなのだろうが。


 ドガァン!


 そして、そんな話をしているBGMとして、レイがガーディアンを倒す音が響いてくる。

 アキヒサはどれだけのガーディアンを回収したか、もう途中で数えるのを止めてしまった。


 ――こういう警備ロボット的なのって、要所を守るものなんじゃないのか?


 なのにさっきから歩くと遭遇するのが、繁華街裏手おネズミのようだ。


「なあ、ガーディアンが多くないか?」


このアキヒサの指摘に、リュウが眉をひそめる。


「確かに増えすぎだな。

 長く放置されたせいで、管理システムが暴走しているのかもしれん」


リュウもこのガーディアンの多さは想定外だったらしく、そう推測する。

 よくよく考えると、このガーディアンがウジャウジャしている場所を、あの金ピカが利用しているかもしれないわけで。


「金ピカたちがここを根城にしているとしたら、ガーディアンをどうやっているんだ?

 普通の人がコレに襲われたら、ひとたまりもないと思うんだけど」


アキヒサの素朴な疑問に、リュウが「ふむ」と考える。


「もしかすると、管理キーを手に入れているのかもしれんな。

 管理キーを持つ者であれば、こいつらは襲わない」


「ふぅん、なるほど」


そんな風に、リュウとアレコレと意見を出しあっていると。


「ヒャン!」


アキヒサの上着の襟から顔を出しているシロが、変な風に鳴いたと思ったら、レイが道の先でアキヒサに「こっちに来い」と言いたげに手を振っている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る