第140話 リュウのやることはいつも唐突
アキヒサは唐突なリュウの話に、ポカーンとしてしまう。
――え、どこからその話?
確かに失礼ながら、この教会も隣の建物もボロいけれども、それを住んでいる当人に面と向かって言うメンタルが強い。
生体兵器とは、心臓に毛が生えているのだろうか?
というか、リュウは町並みが古いのは気にならないようだが、壊れた建物のことは許せない性格らしい。
これはリュウの生体兵器としての基であると考えられる「地神スキル」がそうさせているのだろうか?
レイが敵を見つけたら攻撃せずにはいられないのと、同じことなのかもしれない。
しかしアマンザはおおらかな気持ちの持ち主のようで、リュウの失礼発言にも怒らずにいてくれた。
「まあ、そうねぇ、愛着のある建物だけれども、もう少し隙間風が和らげばどんなに素敵かしらと思うわねぇ」
「なるほど」
アマンザの答えにリュウは頷くと、壁を撫でる。
――って、あの壁おかしいぞ?
ここでアキヒサは初めてそのことに気付いた。
リュウが撫でているあたりの壁に文様がうっすらと光って見えるのだ。
あんなものがこの建物に入った時にあっただろうか?
それに、アキヒサはあれに似た文様を以前に見た記憶がある。
アイカ村にリュウが生やしたタワマンの転移陣だ。
あれよりも簡素な文様だが、形はすごく似ていた。
アマンザの位置からはリュウの身体が邪魔になって見えないらしく、文様の存在には気付いていないようだ。
まさしく、すごくトラブルの香りがプンプンする。
「リュウさん、それなにかな?」
アキヒサが問うのに、リュウは「何故そんなことを聞くのか?」というような顔をしつつ、それでも答えてくれる。
「これか? 壁に仕込まれてあったものだ。
ちょうどいいから動かすぞ」
「は、え!?」
アキヒサが「ちょうどいいとはどういうことか」とか、「壁に仕込まれていたってなんだ?」とか聞く間も、止める隙もなく、リュウがその文様の真ん中に手を置いた。
その瞬間。
ズゴゴゴッ!
地面から轟音が響いてきたかと思ったら、建物全体が輝き出す。
これに驚いたのか、神像の上でトーテムポールをして遊んでいたレイとシロが落ちるのが見えた。
「なっ、なんですか!?」
突然の怪奇現象に、アマンザは慌てふためく。
「キャー!!」
「うわぁ~ん!」
「なんだなんだ!?」
隣の建物から、子供たちの慌てる声も聞こえてくる。
まさに、阿鼻叫喚である。
「リュウさん、今なにをしたの!?」
「しばし待て、直に終わる」
アキヒサが問い詰めても、リュウは涼しい顔をして立っているばかりだ。
――誰だ、このオトボケ生体兵器を作ったヤツ!
もっと他者への配慮とか、諸々のことも詰め込んでほしかった。
生体兵器の制作者に、アキヒサは内心で盛大に文句を言う。
しかし、リュウの言葉通り、轟音も光るのも唐突に止んだ。
だがアキヒサはホッとする間もなく、異変に気付く。
というか、見逃しようがない。
なにしろ、自分たちがいる教会が新築みたいなピカピカになったのだから。
「これ、もしかしてリュウさんの仕業か?」
恐る恐る小声で問い詰めるアキヒサに、リュウは「違うぞ?」と返す。
「この建物には『修復』の術式が込められていた。
それが燃料切れで動いていなかったようなので、我の力を分けてやって発動させただけだ」
「は……?」
リュウの説明に、アキヒサはあっけにとられる。
つまりこの教会は、リュウが扱うような技術が元々込められていた、ということなのだろうか?
――リュウさんがやっちゃった場合よりも、もっとややこしいことになってないか?
アキヒサが現実逃避をしたくなっていると、隣の建物に続く扉の奥からバタバタと足音がしてきて、バン! と勢いよく扉が開く。
「司祭様! 今光って、奇跡が起こって、ってこっちも!?」
ミリ―といった先程の女の子を先頭にして、子どもたちがなだれ込むように駆けてきた。
どうやらミリーが一番年上のようで、他はみんな幼い子どもたちだ。
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