第124話 インテリ系でした

けど、この流れは正直ありがたい。

 幸いなことに、誰もリュウがこのタワマンを生やしたなんて考えておらず、リュウ自身も「これは自分が建てた」という主張もアキヒサ以外にしていない。

 なのでこのまま「山神様のお恵み」ということにしておいても、問題は発生しないだろう。


 ――リュウさんも別に村人に感謝してほしいということではなくて、純粋に憐れんだだけみたいだし。


 なんというか、リュウにとっての人間とは、アキヒサにとってのシロみたいというか、小動物系ペット的立ち位置なのかもしれない。

 観察していると謎で面白くて、攻撃されてもくすぐったい程度。

 どちらかというと、保護するべき存在というのがピッタリなのだろう。

 このタワマンも、リュウ的には「ペットにちょっといい家を用意した」くらいの認識なのかもしれない。

 リュウの性格が比較的穏やからしいということもあるが、そう言えばレイ相手にも態度は怒っているらしかったけれど、やり返すなどの乱暴な真似はしなかった。

 アキヒサへのシッポアタックは、うっかりヒット的要素が強かったというとこで。

 圧倒的力の差があるから、人間なんて対等になり得ないということなのだろう。


 ――これが性格が悪いというか、攻撃的だと、人間が害虫認定になるのかも……。


 例えば、ヤンチャでヒャッハーしていた時代のレイとか。

 どれだけやらかしたら初期化されるんだろうか?

  パソコンでも初期化は最後の手段だというのに。

 そのレイはというと、お目付け役として役目を全うしたご褒美のおやつタイムで、タワマンを見上げながらシロと試食のふりかけおにぎりを食べている。

 一方でリュウはというと、生やしたタワマンのことはもう忘れて、井戸を見て「なんと原始的な」と感心していた。

 どうやら井戸を使っているのが珍しいらしい。


「うん? ってことはこのタワマンの水回りとか、どうなっているんですか?」


そうなのだ、井戸水を汲んでタワマンの上層階に持っていくなど、とんだ苦行というものだ。


「そんなことを心配するのか?」


このアキヒサの疑問に、不思議そうな顔をしたリュウが答えたところによると、なんとタワマンには水道設備が完備だそうだ。


 ――え、マジで?


 この世界的に、それはオーバーテクノロジーではないだろうか?

 アキヒサはテント住宅以外で蛇口から水が出るなんて見たことがない。

 どうしてリュウはそんなものを造れるのだろう?


「リュウさんってもしかして、すごくインテリ系生体兵器だったりするのか?」


アキヒサが漏らした台詞に、リュウはこともなげに言う。


「この程度でなにを言うか。

 かつてマスターが構築した都市機能を維持していたのは、我であるぞ」


「そうなの!?」


なんという驚き発言だろうか?

 なにが驚きかというと、そんな生産系な生体兵器の外見を、どうしてドラゴン型という超攻撃型にしてしまったのか? という点である。


 ――生体兵器のマスターって、センスが謎だな……。


 アキヒサが生体兵器について新たな発見をしたのは置いておいて。

 タワマンなんて見たことのないアイカ村の人たちは、当然ながら興味津々で「上ってみよう」ということになり、数人が現在チャレンジ中だ。

 このタワマンは十五階建てのようで、エレベーター的なものはなく、移動は階段だ。

 この世界の高い建物というと、塔みたいなものはある。

 ニケロの街にも見張り台として建っていたが、それとて高くてもせいぜい四階建て程度。

 どうやらそれ以上高く建てる技術がないようだ。

 日本だともっと高い建築物があったものの、それだってエレベーターがなかったら使いにくいものだ。

 リュウの話だと、このタワマンも本来ならば、エレベーターの代わりに『転移陣』なるものがあって、それで各階へと移動するシステムらしい。


「けれど現在はマスターシステムがダウン中で、転移陣を発動するためのエネルギーが使えない」


というのが、リュウの意見だった。

 まあこの世界の人たちは比較的足腰が強いし、上層階に若い人をあてがえばいけなくはない気もする。

 けれど、今タワマン上りをしている人たちは、調子に乗って上がっていると下りるのが辛いだろう。


~~~


連続投稿はひとまずここまで。

続きはしばしお待ちください!

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