第114話 再び育児書
食事が必要ないという話に、アキヒサは驚くものの、同時に不思議にも思う。
「そうなんですか?
でも食事をするように指示があったんですけど……」
アキヒサは久しぶりに、というより異世界生活初日ぶりにあの育児書を出す。
中を見れば、三項目目に「美味しいご飯を食べさせましょう」とちゃんとある。
「……って、あれ?」
アキヒサは首を捻りながら、育児書をよくよく見る。
これには六項目しかなかったように記憶しているが、何故かその続きがあるではないか。
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≪正しい生体兵器の育て方≫
1 一昼夜抱っこし続けると、保護者のエナジーチャージが完了して起動します。(済)
2 起動したら、名前をつけてあげましょう。(済)
3 美味しいご飯を食べさせましょう。(済)
4 適度な運動を促しましょう。(済)
5 夜は添い寝をしてあげましょう。(済)
6 ペットの存在は情操教育に最適です。(済)
7 友だちを作りましょう。(済)
8 友達と遊びましょう。
9 約束をしてみましょう。
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しかも(済)のマークが入っているのは、項目をクリア済だということだろうか?
初めて見た七項目にまで、済マークが入っている。
レイはいつのまにか友達を作ったことになっていたようだ。
――レイの友だちっていうと、ベルちゃんとか、大人だけどブリュネさんとかかな?
それにしても、育児書の項目が増えたということは、レイの成長具合に応じて内容が増えていくのかもしれない。
一方で、ドラゴンまでも育児書に大きな鼻先を突っ込んでまじまじと見ていた。
「育児書とは、また奇妙なものが作られたものだ。
なるほど、まるっきり人の子の生活をさせたいのか」
ドラゴンがフンフンと頷くものの、その鼻息でアキヒサはいちいち飛ばされそうになる。
なにはともあれ、レイに食事をとらせることについて疑問を晴らしたところで、食事の準備だ。
アキヒサは湖から離れたところで竈を組み、その様子をドラゴンが興味深そうに眺めている。
どうやら人間の食事に興味が出たらしい。
「あの、あなたもよければ一緒に……」
アキヒサはせっかくだからドラゴンを食事に誘おうとして、ふと気付く。
先程も思ったが、ドラゴンを満足させる食事量ってどれだけなのか?
人間サイズの食事なんて、爪の先にも足りないだろう。
この途中で止まってしまったアキヒサの誘いに、しかしドラゴンがノッてきた。
「ふむ、人間の食事か。よかろう食べてやろうではないか」
ドラゴンはそう告げると。
ピカァッ!
湖の中で眩い光を放った。
「うわっ、まぶしっ!」
「キュウ!」
アキヒサのお腹にくっついてドラゴンに背を向けていたレイはともかく、アキヒサと、アキヒサの服の襟元から顔だけ出していたシロは、光ったドラゴンをまともに見てしまった。
――うぅ、すごく目が痛い!
アキヒサが目を抑えて悶えていると。
「これでよかろう」
そんなドラゴンの声が聞こえた。
アキヒサが目の痛さが和らいできてからそろそろと目を開けると、目の前にというか、洞窟内にあの茶色い巨体がどこにもない。
代わりにいたのは、茶色い髪の青年だった。
マッチョ体型で背が高くて、そこそこイケメンなのだが、ただし真っ裸である。
――え、このマッパのイケメン誰?
アキヒサは呆気にとられた。
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